2025年2月15日 (土)

「密輸 1970」:勝つのは誰か?五つ巴の死闘

監督:リュ・スンワン出演:キム・ヘス韓国2023年 この映画を紹介するのは難しい。知り合いに「すごく面白い」とすすめようとしたけど「韓国の港で、1970年代の、えーと海女さんがいて--密輸品の--海底で--サメが、えーと-- 」って、説明すればするほど訳が分からなくなってくる。どうしたらいいんじゃい(~O~)後は「とにかく面白い 」と繰り返すしかない。 あえて紹介を試みると、化学物質で汚染された港で漁業が成り立たなくなったため日本から...

» 続きを読む

| |

2025年2月 7日 (金)

美術ドキュメンタリー特集・その2「アンゼルム“傷ついた世界”の芸術家」

監督:ヴィム・ヴェンダース出演:アンゼルム・キーファードイツ2023年 あれは30年前~ (なぜか歌う)今はなきセゾン美術館にて開催されたキーファー展は、作品がデカけりゃ衝撃もデカい。その迫力は夢にまで出てきそうだった。そんな恐ろしさがヴェンダースによりクリアな3D映像でスクリーン上で味わえる……と期待して行った 映画は二つの要素によって構成されている。一つは広大なアトリエでの制作活動の紹介である。広すぎて移動するのに自転車や運搬車で...

» 続きを読む

| |

2025年2月 6日 (木)

美術ドキュメンタリー特集・その1「美と殺戮のすべて」

監督:ローラ・ポイトラス出演:ナン・ゴールディン米国2022年 ナン・ゴールディンは1970~80年代の作品がフェミニズム・アートとしてクローズ・アップされた写真家である。その文脈はあくまで自傷的なまでにさらけ出した「私」の部分にあったと思う。例えば男に殴られて目の周りにアザ作っているセルフ・ポートレートなど強烈な印象を残した。その彼女が鎮痛剤の中毒問題について製薬会社へ抗議を行うという「公」の社会的行動は意外だった。自身も医者に処方されて中毒になってしまったそうな。 この...

» 続きを読む

| |

2025年1月31日 (金)

聴かずに死ねるか! 古楽コンサート2025年2月編

個人の好みで東京周辺開催のものから適当に選んでリストアップしたものです(^^ゞ事前に必ず実施を確認してください。ライブ配信は入っていません。小さな会場は完売の可能性あり。ご注意ください。 1月は遂に一度もコンサートへ行けませんでした。2月は何とか頑張りたいものです。 *2日(日)輝かしい古の響き(アウレア・アンティクア):今井館聖書講堂*9日(日)大塚直哉レクチャー・コンサート11 鍵盤の上で踊るバッハ!?:彩の国さいたま劇場*11日(火)モンテヴェルディ マドリガーレ集第3...

» 続きを読む

| |

2025年1月29日 (水)

「フェラーリ」:車と納骨堂

監督:マイケル・マン出演:アダム・ドライヴァー米国2023年 なぜか巨匠たちに愛される男 アダム・ドライバー。今回の彼が演じるはフェラーリの創始者だっ。いくらなんでも60歳には見えないなどという批判が相次いだが気にしない。どのみち自分が世界の中心の王様だと思っている人物を描いているのだから、年齢など意味はないしイタリアなまりの英語だって構いやしないのだ。 自社の業績よりレース第一   勝利するために全てを優先。レーサーが事故で死んでも...

» 続きを読む

| |

2025年1月20日 (月)

これも見たぞドキュメンタリー編・その3「戦雲(いくさふむ)」

監督:三上智恵 日本2024年 南西諸島で進む軍事化のここ数年を映像で記録した作品である。そして合わせてそこに生きる忘れがたき住民たちの日常も紹介するという内容。埼玉から東中野まで遠征して見に行った。 ゴルフ場の跡地や採石場は要注意である。防衛のためだけのはずがいつの間にか弾薬庫ができ、キャタピラならぬタイヤを付けた戦車や「マルに火」標識の輸送車が一般道路を走る。住民の意見が様々に交錯するがそれに関係なく事態は進む。私は未だ沖縄のことをよく知りませんでしたm(__)mスイマ...

» 続きを読む

| |

2025年1月19日 (日)

これも見たぞドキュメンタリー編・その2「ビヨンド・ユートピア 脱北」

監督:マドレーヌ・ギャヴィン米国2023年 見る前から気が重かったドキュメンタリー映画。北朝鮮からの亡命希望者を手助けする韓国の牧師と、実行する二組の家族に密着する。特に5人家族の方の行程は中国→ベトナム→ラオス→タイ……と東南アジアの密林をぬけていくなど壮絶の一言。船で直に韓国に行くのはダメなのか と思った私は無知であります(*_*; とはいえ全体には淡々とした調子で進み、下手に緊張や感動を盛り上げたりはしない。恐ろしいのは亡命者を見つけたブローカーがお...

» 続きを読む

| |

2025年1月18日 (土)

これも見たぞドキュメンタリー編・その1「燃えあがる女性記者たち」

監督:リントゥ・トーマス、スシュミト・ゴーシュインド2021年 インドで最下層の女性たちが立ちあげた新聞社あり。さらにニュースサイトを作ってネット配信へと踏み出すところから始まる。その中の数人の記者に密着する。若いけど英語のアルファベットも分からずスマホも使えない新人、あるいは結婚してから学校へ通ったという子持ち主任記者など。 マフィアが仕切る採石場、粉塵で真っ白の村、トイレがない住居問題など地域特有の問題かと思ってしまうが、その周辺には事件を放置する警察、貧困差別、誹謗中傷...

» 続きを読む

| |

2025年1月12日 (日)

今さらながら2024年を振り返る

ますますブログを書く精神的余裕がなくなってきて、映画評に関してはツイッターXには短い感想を書いてから、そのまま放置というパターンが多くなってしまいました。やはり気力と共に脳力も落ちているのでありましょうか。それでもコンサートの感想はなんとか追いついたので、2025年は映画の方も頑張りたいもんです。 【映画】話題作・大作はかなり見てません(堂々と断言)。そのせいか昨年、一昨年同様9作品しか決められず。10作目を決められないので次点を二つ選ぶことに  『デュ...

» 続きを読む

| |

2025年1月 5日 (日)

「エイレングラフ弁護士の事件簿」

著者:ローレンス・ブロック(田村義進 訳)文春文庫2024年 弁護士の看板を掲げながら法廷には立ったことない男……いや正確に言えば、その男が扱うといつも裁判が開かれる前に事件はカタが付き依頼人が無罪放免になってしまうのである。そんな事件が12件、約40年に渡りその「事件簿」に書き足されてきた。 中には自分が犯人なのを認めている者にさえ彼は「あなたは無罪です」と断言し、「無罪にならなかったら依頼料は不要」とさえ告げて、いつの間にか釈放に至ってしまうのだ。摩訶不思議とはこのこと...

» 続きを読む

| |

2025年1月 4日 (土)

「恋する心に安らぎを」:いにしえの心を探るには

演奏:イ・フィラトーリ・ディ・ムジカ会場:今井館聖書講堂2024年12月22日 フルート&リコーダー中島恵美、バロックハープ曽根田駿のコンビに、テオルボ上田朝子がゲスト参加して、オトテールの作・編曲の歌曲を器楽にて演奏するというコンサートだった。ルイ14世~15世のフランス宮廷で人気だった牧歌的な恋愛歌(ブリュネット)が中心となっている。フルート用に編曲した作品とはいえ、原曲の情緒を理解できるようプログラムには歌詞対訳が付いていた。 大きなイベント用とか宗教作品ならば理解もし...

» 続きを読む

| |

2025年1月 2日 (木)

聴かずに死ねるか! 古楽コンサート2025年1月編

個人の好みで東京周辺開催のものから適当に選んでリストアップしたものです(^^ゞ事前に必ず実施を確認してください。ライブ配信は入っていません。小さな会場は完売の可能性あり。ご注意ください。 *5日(日)新音楽の調べ(松本更紗ほか):ロバハウス*8日(水)ヴィオラ・ダ・ガンバデュオコンサート5(森川麻子ほか):日暮里サニーホールコンサートサロン*11日(土)ニコラ・マッティスの源流をたずねて(みのりてんデュオ):今井館聖書講堂*  〃   クヴァンツのフルート奏法を読む 特別記念...

» 続きを読む

| |

2024年12月31日 (火)

まだあるぞ2024年鑑賞作「HOW TO BLOW UP」

監督:ダニエル・ゴールドヘイバー出演:アリエラ・ベアラー米国2022年 見る直前まで存在も知らなかったマイナー作品だけど、なかなかに面白かった。様々な出身、境遇、思想の若者たち8人が石油企業告発のために無血エコテロを仕掛けるために集合する。準備の進行と共に各人の過去が描かれる。なぜ彼らは計画に至ったのか。冒頭ではバカげた計画と思えるが、見ているうちに納得してしまう。社会の現状への怒りが渦巻き合体していく様子は、もはや非暴力の手法は無効だと感じさせる。 一方で爆弾作りの場面で...

» 続きを読む

| |

2024年12月30日 (月)

まだあるぞ2024年鑑賞作「バティモン5 望まれざる者」

監督:ラジ・リ出演:アンタ・ディアウフランス・ベルギー2023年 『レ・ミゼラブル』が話題を呼んだラジ・リ監督の新作。前作は警察対民衆という構図だったが、今回は行政がテーマである。利権にしがらみのないクリーンな人物を市長代理に選んだら、開発のため後先考えない強硬路線を取るという日本でもありそうな話だ。ただそれを支持して拍手する市民は登場しないし、社会体制の矛盾というようなものも描かれない。あくまでも市長と移民出身者たちとの二者対立と軋轢が描かれる。 見終わった直後の感想は「...

» 続きを読む

| |

2024年12月29日 (日)

まだあるぞ2024年鑑賞作「ゴッドランド GODLAND」

監督:フリーヌル・パルマソン出演:エリオット・クロセット・ホーヴデンマーク・アイスランド・フランス・スウェーデン2022年 デンマークの若い牧師が19世紀当時植民地だったアイスランドへの布教を命じられる。島内を進む道は過酷で、さらにガイドの老人とはうまく行かない。過去の紛争の因縁が背景にあるのか。言葉が分かっているらしいにもかかわらず、無視した態度を取る。 植民地の過酷な自然の中での道行きと、住民との軋轢となると「闇の奥」を想起させる。もっともトラブルの種は外部ではなく最初...

» 続きを読む

| |

«「イタリア・バロックを歌う」:萌ゆる二重唱