2020年2月17日 (月)

「ある女流作家の罪と罰」:嘘つきは作家の始まり

監督:マリエル・ヘラー出演:メリッサ・マッカーシー 米国2018年DVD鑑賞 作家や有名人の書簡を偽造した実在の作家が主人公である。作家の才能は尽き、金も友もなく、アル中っぽい上に性格は悪くて嘘と悪態つきっぱなし、部屋はけた外れに汚い(いわゆる汚部屋。ネコだけはいる)。ネコ以外にプラス要因全くなしという中年女にはとても共感できるものではない。唯一のゲイの友人とは険悪に、にっちもさっちも行かなくなって昔パートナーだった女性にすがろうとするも、厳しく突き放される。 でも金が出来て...

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2020年2月16日 (日)

「死の教室」:冥土からの宿題

監督:アンジェイ・ワイダポーランド1976年 東京都写真美術館のポーランド映画祭で上映。演劇史上有名なタデウシュ・カントルの作品を、ワイダが上演時に映像として記録したものである。カントルの芝居は日本でも過去に上演されたことがあるらしいが、全く見たことがないので、そもそもどんなものなのかと知りたくて行った。 地下蔵みたいな狭苦しい空間に観客が続々と入ってくる。若者が多い。教室を模したステージに木製の机が並び、客は教室の横面から眺めることになる。しかしカメラは舞台の端に据えられ...

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2020年2月14日 (金)

「アイリッシュマン」:別れろ殺せはマフィアの時に言う言葉

監督:マーティン・スコセッシ出演:ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシ米国2019年 昨年の映画で話題性では一、二を争う本作。その理由の一つはスコセッシが盟友の役者三人と共に作ったこと。もう一つはネットフリックス製作で本来なら加入者以外は見られないはずが、映画賞獲得のためか事前に(どころか配信開始後も)映画館で公開したことだ。しかも尺が209分  映画館でイッキ見するにはつらいし、単品TVドラマ1本としても長い。帯に長くてタスキにはもっと長い...

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2020年2月11日 (火)

「大塚直哉レクチャー・コンサート 3 ”平均律wohltemperiert”の謎」:ゴキゲンな鍵盤

オルガンとチェンバロで聴き比べるバッハの"平均律"会場:彩の国さいたま芸術劇場音楽ホール2020年2月2日 このシリーズもいよいよ3回目の最終回である。(1回目・2回目の感想)1回目のときは自由席だったのが客が予想よりも多数来たせいか混乱が起こって、以降は指定席となった。この日もほぼ満員だった。 この日は平均率第1集の第18番からラスト24番まで。やはりチェンバロとポジティフ・オルガンの両方で弾いて聞き比べをやった。 前半は果たして「クラヴィーア」とはどの楽器を指すか?とい...

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2020年2月 9日 (日)

「ダムタイプ|アクション+リフレクション」

会場:東京都現代美術館2019年11月16日~2020年2月16日 パフォーマンス・グループのダムタイプの展覧会である。といっても、パフォーマンス自体をやるわけではないから、どうなっているのかと思ったら、それまでの活動と並行して制作された巨大なインスタレーションが中心だった。 それ以外には過去の記録--長いガラスケースにチラシやパンフなどを時代順に展示したものと、分厚い大きなファイルがあった。後者は着想メモなども入っているらしいが、私が行った時は一人の中年男性が長時間独占し...

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2020年2月 5日 (水)

「永遠の門 ゴッホの見た未来」:額縁映画

監督:ジュリアン・シュナーベル出演:ウィレム・デフォーイギリス・フランス・米国2018年 画家ゴッホが主人公の映画は複数あるらしいけど、やはり一番ポピュラーなのはカーク・ダグラス主演の『炎の人ゴッホ』だろう。といっても、子供の頃TV放映されたのを見ただけでほとんど記憶していないのだった。(監督V・ミネリ、ゴーギャン役のA・クインがアカデミー助演男優賞)で、本作はゴッホ役がウィレム・デフォーだ  ヴェネチア映画祭で男優賞獲得、オスカーにもノミネート。監督は...

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2020年2月 1日 (土)

「朝吹園子 初ソロCD発売記念リサイタル」:日本発世界初

会場:近江楽堂2020年1月5日 先日のリクレアツィオン・ダルカディア公演ではヴィオラを弾いていた朝吹園子、今日はヴァイオリンを携えて登場した。普段はスイスのバーゼルで活動しているとのこと。初期バロック用の弓を使って演奏するはヴィヴィアーニ……初めて聞きました。17世紀後半に活躍したこの作曲家、フィレンツェ生まれだがインスブルックの宮廷にヴァイオリン奏者として仕え、のちに宮廷学長になったという。 この日演奏されたのは、CD発売に先駆けて「教会と室内のためのカプリッチョ・アル...

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「フランチェスコ・ドゥランテ ナポリ、対位法の魔術師」:ナポリ愛が止まらない

演奏:アンサンブル・リクレアツィオン・ダルカディア会場:近江楽堂2020年1月5日 今年の聞き初めはこのコンサートでした~ フランチェスコ・ドゥランテとは聞きなじみのない名前の作曲家であるが、ナポリで生涯を過ごし18世紀前半から中頃に活躍した人物で、音楽院の学長を歴任したという。そのコンチェルト集から7曲が演奏された。 私が以前聞きに行ってた頃は4人だったが、この日はヴィオラで朝吹園子が参加していた。後期バロック成分が純度100な世界を迫力ある演奏で繰り...

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2020年1月31日 (金)

聞かずば死ねない!古楽コンサート 2月版

あっという間に正月も過ぎていきました。 *2日(日)大塚直哉レクチャー・コンサート:彩の国さいたま芸術劇場音楽ホール*10日(月)ディドンの死 艶やかなフランス音楽の世界(野々下由香里ほか):近江楽堂*  〃   バッハ ケーテン候のための葬送音楽(大塚直哉ほか):浜離宮朝日ホール*14日(金)ヴァレンタインの日にヴァレンタインのソナタ(木村睦幸ほか):近江楽堂*16日(日)祈りのモテット(バッハ・コレギウム・ジャパン):東京オペラシティコンサートホール*  〃   アンドレ...

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2020年1月28日 (火)

「鈴木秀美チェロ・ピッコロリサイタル」:旋律弾いてもスゴイんです

会場:近江楽堂2019年12月27日 鈴木秀美が全編チェロ・ピッコロのコンサートをやるというので、こりゃ珍しい 聞きにいかずばなるまいと、暮れも押し迫ったころの近江楽堂に行った。人もまばらなオペラシティだったが(地下の居酒屋だけは忘年会で人がいっぱいだった)、さすがに満員御礼だったようだ。同じ業界の人もかなり来ていたもよう。共演の鍵盤は上尾直毅で、小さな会場にチェンバロに加えフォルテピアノまで並べてあった。 ヒデミ氏のチェロ・ピッコロはビルスマから譲られた...

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2020年1月27日 (月)

没後20周年キュー祭り「キューブリックに愛された男」「キューブリックに魅せられた男」

スタンリー・キューブリックに関するドキュメンタリー二本が公開! まとめてイッキ見した。 「キューブリックに愛された男」監督:アレックス・インファセリ出演:エミリオ・ダレッサンドロイタリア2016年 タクシー運転手をやっていて『時計仕掛けのオレンジ』の小道具(あまり人目にはさらせないあの物体)を運んだことをきっかけに、Q監督の専属運転手を30年間務めることになったイタリア人エミリオ・ダレッサンドロのインタビューを中心に構成。既に回想録を出しているので、内容...

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2020年1月24日 (金)

「オリーブ・コンソート」:巨匠が来りて超絶笛を吹く

会場:東京文化会館2019年12月15日 ケース・ブッケ、W・ファンハウヴェの超ベテラン組と田中せい子&D・ブラジェッティによるリコーダー・カルテットである。「ヘンリー8世の手写本」、フェスタ「ラ・スパーニャによる125のコントラプンティ」、「ロイヤル手写本」という3種のルネサンス曲集からの曲を演奏し、その間にブッケ、ファンハウヴェがそれぞれベリオの「ジェスティ」を独演するという興味深い構成だった。 曲集の方はポリフォニー豊かで巧みなアンサンブルが楽しめた。特にフェスタの1...

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「ニューヨーク・アートシーン」

ロスコ、ウォーホルから草間彌生、バスキアまで会場:埼玉県立近代美術館2019年11月14日~2020年1月19日 埼玉の数少ない文化的施設である県立近代美術館で開催。現代アートの代表的作品が作者ごとに1~3点展示されている。サブタイトルに「滋賀県立近代美術館コレクションを中心に」とあり、日本国内を巡回しているらしい。 ウォーホル、ロスコ、シンディ・シャーマン、バスキア等々。デュシャンの便器もちゃんとあり。現代美術の教科書そのままと言っていいくらいに有名作品が多数展示されてい...

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2020年1月22日 (水)

「ナウシカ考 風の谷の黙示録」

著者:赤坂憲雄岩波書店2019年 マンガ版の『風の谷のナウシカ』を民俗学の立場から俯瞰する解読の書である。論が進むにつれ著者の専門分野を飛び出し、宗教や文学のフィールドも巻き込んで読んでいく。それゆえ、現在マンガ批評の主流である絵柄やコマ割りからの分析はほとんどない。結末に至るまでかなり詳細に紹介してあるので、マンガ読了者のみにオススメする。 アニメしか見ていないという人は多いだろうが、マンガ版は全7巻。連載途中でアニメ化されたために2巻目の途中までの内容しか入っていない。...

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2020年1月13日 (月)

遅まきながら2019年を振り返る

今更ながらではあるが、一応やりました。それにしても最近ますます記事を書くのに時間がかかってしまい(気力の問題)どうしようという感じですね。 【映画】順序はなんとなく。完成度より好みで選んでおります。 *『未来を乗り換えた男』*『あなたはまだ帰ってこない』この二作、それぞれ裏表を成している。こういう構造の映画がつくづく好きなんだなあと自分で再認識した。もし、今年の一作を選ぶとしたら『未来~』だろうけどそういうのに限ってロードショーをスルーしてしまい、DVDで見る羽目に……トホ...

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