2023年5月19日 (金)

東京・春・音楽祭2023「憧憬の地 ブルターニュ」展記念コンサート2:異郷の音で踊り、指輪に目がくらむ

演奏:大竹奏ほか会場:国立西洋美術館講堂2023年4月14日 フィドルの大沢奏をリーダーとするミュージアム・コンサートである。演奏されたのはブルターニュのダンス音楽や伝統歌だ。器楽のメンバーは他にハーディガーディ&バグパイプ近藤治夫、チェロ高群輝夫である。 最初に展覧会の方の内容や、そもそも「ブルターニュといってもそりゃどこよ 」みたいな人のために、美術館の研究員の人からスライドを使って事前解説があった。 コンサートの方はダンス曲では民...

» 続きを読む

| |

2023年5月13日 (土)

「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」:長いタイトルには巻かれろ

監督:ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート出演:ミシェル・ヨー米国2022年 長い邦題を略して「EEAAO」。「エブエブ」とは絶対に言わんぞ。もっとも、実際見てみるとこの長~いカタカナ題名にするしかないと分かったけどな。 かつて『スター・ウォーズ』えぴ4が日本公開されるまで一年間待たされたことを未だに根に持って恨んでいる  が、さすがにこの情報時代に同じようなことは起こるまいと思っていた。なのに、また公開まで一年待たされる事態  ...

» 続きを読む

| |

2023年5月 6日 (土)

「アメリカン・エピック」:歌えば歴史の音がする

監督:バーナード・マクマーン米国2016~2017年 1920年代後半に米国各地での民衆の音楽の録音が残されていた。それを今たどり直す全4回のドキュメンタリーである。映画館のスケジュールの関係で私は3・4→1・2の順番で分割鑑賞した。さすがに1日に4作まとめて見るのは無理無理 当時の最先端の音楽メディアはラジオ。その流行に対抗してレコード会社は新開発の録音機を運んで米国各地を回り演奏者を発掘し録音したのである。マイク一本のみの一発録りで、そこには多様な...

» 続きを読む

| |

2023年5月 1日 (月)

聴かずに死ねるか! 古楽コンサート2023年5月編

4年ぶりに開催のLFJではありますが、古楽関係が一切入っていないようなので全くの無縁状態。ビール だけ飲みに行く人は相変わらずいそうです。事前に必ず実施を確認してください。ライブ配信は入っていません。 *7日(日)西洋館コンサート12 西洋館で聴くカンタータ(ダブルリーズ):横浜市イギリス館*  〃  ヘンデル 復活(バッハ・コレギウム・ジャパン):東京オペラシティコンサートホール *12日(金)チェンバロと旅するイタリア・バロック150年2 18世紀(平...

» 続きを読む

| |

2023年4月29日 (土)

「ルソン・ド・テネブル第一回演奏会」:雨の総武線無情

会場:すみだトリフォニーホール小ホール2023年4月7日 キリスト教の受難節に伝統的に演奏されたという「ルソン・ド・テネブル」、この時期に実際に聞いてみようという演奏会である。昼の部はイタリアとベルギーからドゥランテとフィオッコという作曲家の作品がだったらしいが、根性がないためパスして夜の部のフランス編だけ聞きに行った。しかし雨は降るし、ただでさえいつも混んでいる総武線はトラブルでしばらく止まっていたらしく、遅れた上に人がギュウ詰めになっている。結局2本見送ってから乗った。...

» 続きを読む

| |

2023年4月23日 (日)

「キングメーカー 大統領を作った男」:光の一寸先は闇

監督:ピョン・ソンヒョン出演:ソル・ギョング、イ・ソンギュン韓国2021年 限りなく実話に近い韓国政治サスペンスである。モデルは後に大統領となった金大中とその選挙参謀、ただ人物の名前などは少し変えてあるそうだ。理想主義の政治家と現実主義者の手法の差と対立みたいなのを想像して行ったら若干違った。むしろ『ユダ&ブラック・メシア』に近い。つまり光の側に立つ人間と常に影である人間の愛憎入り混じった相克である。 主人公は自分を政治家に売り込むが、彼がどんな人間かは冒頭のニワトリの話と、...

» 続きを読む

| |

2023年4月20日 (木)

東京・春・音楽祭2023「福川伸陽(ホルン)&古楽の仲間たち」:紙チケ無敵

演奏:レ・ヴァン・ロマンティーク・トウキョウ会場:東京文化会館小ホール2023年3月24日 今期ハルサイは2公演行った。最初はこちらである。バロック・ホルンの福川伸陽を中心にオーボエ三宮正満、リコーダー太田光子、ヴァイオリン高田あずみ、フォルテピアノ川口成彦などなど総勢11人豪華出演陣のコンサートだった。福川氏によるとバロックホルンのリサイタルは初めてとのことだ。 全員総出演のヘンデル『アルチェステ』(未上演の芝居らしい)の序曲に続き、テレマン、グラウンなどホルンが登場する...

» 続きを読む

| |

2023年4月12日 (水)

「ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地」:衝撃の3分30秒

監督:シャンタル・アケルマン出演:デルフィーヌ・セイリグ ベルギー1975年 1975年作ながら昨年日本公開。10年に一度の「英国映画協会史上最高の映画100選」2022版で突如の第1位選出--。ある意味、超話題作である。ケーブルTVのチャンネルでアケルマン監督特集をやっていたので録画して見た。ちょうどこの時期ヒュートラ渋谷でも特集上映をやっている。 話題の所以の一つは上映時間200分 で、しかもそのほとんどが主婦の平凡な日常を延々と長回し固定カメラで撮っ...

» 続きを読む

| |

2023年4月 8日 (土)

「リコーダーによる17、18世紀のイタリア音楽」:雨の上野に力限りの縦笛が響くのだ

演奏:太田光子ほか会場:上野学園1507教室2023年3月18日 上野学園古楽研究室主催のコンサートということで、校舎の15階まで上がって行った。太田光子を初めとするリコーダー3人+ガンバ+チェンバロという組み合わせで、前半ルネサンス期、後半はバロックの作品というプログラムである。 冒頭はフォンターナのソナタで開始。太田氏のソロが冴えまくる。その後はルネサンス当時の誰もが知っている流行り歌を最初に演奏して、続いて別の作曲家が変奏曲にした作品をやるという趣向。これも面白かった。...

» 続きを読む

| |

2023年4月 4日 (火)

「戸谷成雄 彫刻」

会場:埼玉県立近代美術館2023年2月25日~5月14日 文化果つる地埼玉で数少ない文化施設である県立近代美術館。今期の企画展を始まってすぐの時期に行ってきた。これまで全く知らなかった人なのだが、秩父にアトリエがあって主に木を素材にした彫刻家とのことである。 木材をチェンソーで削ったり、作品の一部を燃やしたりした大掛かりな作品群が代表作のようだ。「木彫」というイメージを超えている。1980年代、海岸に角材などでできた造形物を幾つも並べて一斉に火をつけるというパフォーマンスの...

» 続きを読む

| |

2023年4月 1日 (土)

聴かずに死ねるか! 古楽コンサート2023年4月編

事前に必ず実施を確認してください。ライブ配信は入っていません。 *1日(土)Stabat Mater 悲しみの聖母(澤江衣里ほか):日本聖公会志木聖母教会*7日(金)バッハ マタイ受難曲(バッハ・コレギウム・ジャパン):東京オペラシティコンサートホール  8日・9日公演あり*  〃  聖週間に味わう ルソン・ド・テネブル:すみだトリフォニーホール小ホール  昼・夜公演は別プログラム*12日(水)2 本のリコーダーで巡るヨーロッパ諸国漫遊 ル...

» 続きを読む

| |

2023年3月31日 (金)

「ギレルモ・デル・トロのピノッキオ」:木は心

監督:ギレルモ・デル・トロ、マーク・グスタフソン声の出演:ユアン・マクレガー米国・メキシコ・フランス2022年 祝 アカデミー賞長編アニメーション部門獲得。ネトフリ作品ではありますが、配信前に映画館で特別上映をやってくれたので見に行った。ありがたいこってす。 実はディズニーの『ピノキオ』を見てないので影響とか比較はできない。そこら辺は適当な感想である。原作を変えて舞台は第一次大戦後ムッソリーニ政権時代のイタリア。ストップモーション・アニメでミュージカル仕...

» 続きを読む

| |

2023年3月26日 (日)

「タブラトゥーラ 江崎浩司メモリアルコンサート」:涙と共に紙を振りぬ

会場:ハクジュホール2023年1月27日 縦笛演奏家江崎浩司が突然亡くなったというニュースが古楽界隈を震撼させたのは、一昨年の末のことだった。なにせまだ50歳である。最近、ロックのミュージシャンの訃報が相次いでいるがほとんどは70歳代で、しかも「まだ早い」とか言われてるのを考えると、こちらこそ本当に早過ぎだ。 彼が最年少メンバーだったタブラトゥーラ、コロナ禍もあったためか1年を経ての追悼コンサートとなった。会場は満員御礼だったもよう。演奏が始まる前から既につのだたかしの老人...

» 続きを読む

| |

2023年3月21日 (火)

「ミセス・ハリス、パリへ行く」:花もゴミも踏み越えて

監督:アンソニー・ファビアン出演:レスリー・マンヴィルイギリス2022年 日頃ファッションに縁のないわたくしですけど、チラシを飾る平凡そうなオバサマと美しい緑のドレスを見てつい行ってしまいました。それにこのオバ……失礼、女優さんよくよく見たら『カササギ殺人事件』の主役の人じゃないの。おまけに『すべてが変わった日』ではダイアン・レインをいぢめるコワイ悪役もやってたわよね。 ロンドンで働く家政婦が職場でふと目にしたディオールのドレスに憧れて欲しくなり、金をためて遂にパリまで行っ...

» 続きを読む

| |

2023年3月17日 (金)

「織りなす旋律2 ルネサンス対位法の愉しみ」:ディープな下町で古楽その2

演奏:桐畑奈央ほか会場:日暮里サニーホールコンサートサロン2022年12月28日 「2」と書いてあるけど、初めて行きました(^O^)/このアンサンブルはリコーダー桐畑奈央とバロック・ハープ曾根田駿を中心にドゥルツィアン長谷川太郎、リコーダーとフルート中島恵美が参加ということのようである。 ルネサンス期からバロック初めまで、ディミニューションの技法を使った曲を演奏し、さらに懇切丁寧に解説してくれるという内容だった。前半はオケゲム、デ・ローレ、アルカデルトなど、編曲が加えられた...

» 続きを読む

| |

«「ノベンバー」:詩人と死人の魂