2023年3月26日 (日)

「タブラトゥーラ 江崎浩司メモリアルコンサート」:涙と共に紙を振りぬ

会場:ハクジュホール2023年1月27日 縦笛演奏家江崎浩司が突然亡くなったというニュースが古楽界隈を震撼させたのは、一昨年の末のことだった。なにせまだ50歳である。最近、ロックのミュージシャンの訃報が相次いでいるがほとんどは70歳代で、しかも「まだ早い」とか言われてるのを考えると、こちらこそ本当に早過ぎだ。 彼が最年少メンバーだったタブラトゥーラ、コロナ禍もあったためか1年を経ての追悼コンサートとなった。会場は満員御礼だったもよう。演奏が始まる前から既につのだたかしの老人...

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2023年3月21日 (火)

「ミセス・ハリス、パリへ行く」:花もゴミも踏み越えて

監督:アンソニー・ファビアン出演:レスリー・マンヴィルイギリス2022年 日頃ファッションに縁のないわたくしですけど、チラシを飾る平凡そうなオバサマと美しい緑のドレスを見てつい行ってしまいました。それにこのオバ……失礼、女優さんよくよく見たら『カササギ殺人事件』の主役の人じゃないの。おまけに『すべてが変わった日』ではダイアン・レインをいぢめるコワイ悪役もやってたわよね。 ロンドンで働く家政婦が職場でふと目にしたディオールのドレスに憧れて欲しくなり、金をためて遂にパリまで行っ...

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2023年3月17日 (金)

「織りなす旋律2 ルネサンス対位法の愉しみ」:ディープな下町で古楽その2

演奏:桐畑奈央ほか会場:日暮里サニーホールコンサートサロン2022年12月28日 「2」と書いてあるけど、初めて行きました(^O^)/このアンサンブルはリコーダー桐畑奈央とバロック・ハープ曾根田駿を中心にドゥルツィアン長谷川太郎、リコーダーとフルート中島恵美が参加ということのようである。 ルネサンス期からバロック初めまで、ディミニューションの技法を使った曲を演奏し、さらに懇切丁寧に解説してくれるという内容だった。前半はオケゲム、デ・ローレ、アルカデルトなど、編曲が加えられた...

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2023年3月12日 (日)

「ノベンバー」:詩人と死人の魂

監督:ライナル・サルネット出演:レア・レストポーランド・オランダ・エストニア2017年 バルト三国の一つエストニア産映画。事前知識は全くなかったが、予告を見ると暗い!怖い!キモい!の極致(おまけにモノクロだ)だったので見に行ってみた。 時代は19世紀後半くらいか  11月、貧しい村では死者が戻ってくる季節(日本のお盆みたいなものかな)がやってきて……これが実際に死んだ者が森からやってきて、飲み食いしたりサウナに入ったりするんである。貧しさゆえいつもボロボロ...

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2023年3月 5日 (日)

「カリッシミとシャルパンティエ」:ディープな下町で古楽その1

演奏:ラ・ジュメル会場:マリーコンツェルト2022年12月16日 男声3人による宗教曲コンサート。このグループによる演奏会は既に5回目になるらしい。この日はガンバとチェンバロが加わって、伊仏の二人の作曲家を同じ編成による声楽曲で比較しつつ聞くという趣向である。カリッシミは40歳も年上だが、シャルパンティエがローマに留学した時の師匠とのことだ。 交互に二人の作品を歌う形で進行した。フランス語の「語るうた」を追求するというグループだけあって、宗教曲と言えど濃厚すぎる世界が広がっ...

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2023年2月28日 (火)

聴かずに死ねるか! 古楽コンサート2023年3月編

事前に必ず確認してください。ライブ配信は入っていません。 *1日(水)Harps through the Ages(伊藤美恵ほか):上野学園15階1507教室*  〃  オルフェーオの物語(フィリップ・ジャルスキーほか):東京オペラシティコンサートホール*4日(土)おいで 良き日よ 個性あふれる英国リュートソングの世界(小倉麻矢&つのだたかし):東京都民教会*  〃  イタリアン・バロック三昧!(若松夏美ほか):調布市文化会館たづくりくすのきホール*12日(日)井上玲・芥川直...

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2023年2月24日 (金)

「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」(IMAX3D字幕版):兄弟仲よく孝行つくす

監督:ジェームズ・キャメロン出演:サム・ワーシントン米国2022年 長年の疑問あり。一体つまらない映画を最新の素晴らしいテクノロジーによる上映方式で見れば面白くなるだろうか? どんな方式を使おうとそもそも映画自体がつまらなければつまらないし、面白いものは変わらず面白いはずだ。魔法のように変わるはずはないのである。しかし、この『アバター』の十数年ぶりの続編を見たことで、私は間違っていたのを思い知ったのだった。 そもそも『アバター』1作目が3Dブームを巻き起こした時に、私は2D...

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2023年2月19日 (日)

「バルトルド・クイケンと仲間たち」:朋あり遠方より来たりて笛を吹く

会場:トッパンホール2022年12月2日 コロナ禍で来る機会がなく、約三年ぶりのトッパンホールである。御年73歳(かな?)のバルトルドの笛を聞こうと会場は自由席ながらほぼ満員だった。というか、クイケンでトッパンホールでなんで自由席なのかっ と少々問い詰めたい気分になる。おかげで開場前から待ちかねた聴衆が二重三重にホールを取り巻き……というのは大袈裟だが、とにかく長蛇の列ができていたのは事実だ。 それほどに熱気たっぷりだったせいかはたまた暖房のききすぎか、会...

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2023年2月13日 (月)

「ダーク・アワーズ」上・下

著者:マイクル・コナリー講談社文庫2022年 M・コナリーはLAを舞台にした警察小説を長年書いてきて、『レイトショー』(2017年)からは新しい主人公を登場させた。そのハリウッド署で深夜シフト勤務するタフな女刑事バラードは、この時は単独出演(?)だった。続く作品の『素晴らしき世界』『鬼火』などで、お馴染みハリー・ボッシュと「共演」となる。内容も章のタイトルに二人の名前がそれぞれ付けられ、交互に視点を変えて同じ事件を追ってストーリーが進んでいく形式を取っている。 しかし今作は...

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2023年2月11日 (土)

リュリ「アルミード」:隙あらばダンス

北とぴあ国際音楽祭2022演出:ロマナ・アニエル指揮:寺神戸亮演奏:レ・ボレアード会場:北とぴあ2022年12月9日・11日 このオペラもコロナ禍で延期→3年目の正直でようやく開催というパターンのものである。2020年11月の代替公演では寺神戸亮のフラバロオペラに対する熱ーい こだわりを感じた。翌年もやはり延期で代替公演となり、もはやメラメラと燃える執念の企画と言ってよいだろう。実現できてメデタイっヽ(^o^)丿 『アルミード』は『アティス』と並んでリュ...

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2023年2月 5日 (日)

「大貫妙子 コンサート2022」

会場:昭和女子大学人見記念講堂2022年12月3日 年に一度の恒例ター坊のライブ行ってきました(^O^)/ギター&ベース×各1、ドラム×2、鍵盤×3という面白い編成のバンドと共に80~90年代の曲を中心に演奏するという内容である。 坂本龍一が編曲担当した曲はライブで再現するのが難しくて、ライブではやって来なかったものがあるとのこと。今回それをシーケンサーを使用して復活させ、さらにバンドの生音を重ねるという趣向だった。まさに坂本龍一にエールを送る特集と言っていいだろう。アコー...

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2023年2月 2日 (木)

「グッド・ナース」:死んだ患者が見たものは……

監督:トビアス・リンホルム出演:ジェシカ・チャステイン、エディ・レッドメイン米国2022年 ネトフリ作品限定公開で鑑賞。米国で実際に起こった、なんと被害者が多過ぎて総数不明 という前代未聞の看護師による殺人事件を映画化したものである(原作はノンフィクション本)。見どころはジェシカ・チャステインとエディ・レッドメインのアカデミー賞主演賞獲得者の共演だろう。 ジェシカ扮する看護師は二人の子どものために熱心に働くシングルマザー。持病があるので常に健康に不安を感じ...

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2023年2月 1日 (水)

聴かずに死ねるか! 古楽コンサート2023年2月編

事前に必ず確認してください。 *2日(木)・4日(土)カヴァッリ ラ・カリスト(アントネッロ):川口総合文化センターリリア音楽ホール*3日(金)J.S.Bachを弾く2 パルティータ全曲(鈴木優人):トッパンホール*5日(日)ヴィヴァルディ室内協奏曲(太田光子ほか):横浜市鶴見区民文化センターサルビアホール*9日(木)ラクリメ、あるいは7つの涙(レ・ヴォワ・ユメーヌほか):浜離宮朝日ホール*16日(木)トン・コープマンのバロック音楽談義:ミューザ川崎シンフォニーホール*17日...

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2023年1月23日 (月)

「レゼポペ来日公演~夜のままで」:楽譜以上

北とぴあ国際音楽祭2022会場:北とぴあさくらホール2022年11月18日 ルイ14世時代の宮廷歌曲の世界、歌うはクレール・ルフィリアートルである。レゼポペは彼女とステファン・フュジェ(チェンバロ)、日本在住のエマニュエル・ジラール(ガンバ)がメンバーとなるグループだ。非常に覚えにくい名称だが(私だけ?)、フランス語で「叙事詩」という意味らしい。 休憩なしで80分の予定とのことだったけど実際は100分ぐらいになった。テーマはルイ14世時代の宮廷歌曲(いわゆるエール・ド・クー...

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2023年1月15日 (日)

「「未熟さ」の系譜 宝塚からジャニーズまで」

著者:周東美材新潮社(新潮選書)2022 意外な視点から見た刺激的な日本近代音楽史である。なぜ日本のポピュラー音楽では「未熟さ」が愛好され支持されるのか。レコード産業の誕生・発達と密接にかかわるこの流れを童謡、宝塚、ナベプロ、ジャニーズ、グループ・サウンズ、スター誕生に始まるオーディション番組……とたどっていく。 その共通点は、第一次大戦後に都市部を中心に形成された近代家族をターゲットにしていること。その茶の間では子どもの存在が大きく「子ども文化」が次々と消費される。そこは...

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