2020年9月22日 (火)

「囚われた国家」:売国ならぬ売星の輩

監督:ルパート・ワイアット出演:ジョン・グッドマン米国2019年 B級SF設定プラス『影の軍隊』的レジスタンスものという、かなり珍しい取り合わせの映画。といってもかなり地味な作りで、もしコロナウイルスの影響で洋画の新作が入って来なくなったという事態がなければ、大々的な公開はなかったろう類の作品である。 異星人に侵略支配された近未来の地球、侵略者は地下で地球の資源を発掘奪取して自星に送る一方、地上では傀儡政権を操り人々を支配しているのであった。--ってモロにナチス占領下のフラン...

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2020年9月18日 (金)

ナショナル・シアター・ライブ「夏の夜の夢」:ブランコに乗ってさかさまに

作:ウィリアム・シェイクスピア演出:ニコラス・ハイトナー主演:オリヴァー・クリス、グェンドリン・クリスティー上演劇場:ブリッジ・シアター 恐らく『夏の夜の夢』は、シェイクスピア作品の中でこれまで一番見ているものではないかと思う。実演もそうだが、映画化作品や舞台収録を含めるとさらに回数が増える。だから、もうこれ以上見なくてもいいかなと迷っていたのだが、以前に斬新な『ジュリアス・シーザー』をやったN・ハイトナー演出で、使っている劇場も同じということで見に行った。 まさに行って正...

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2020年9月11日 (金)

映画落ち穂拾い 2020年前半その3

「帰ってきたムッソリーニ」監督:ルカ・ミニエーロ出演:マッシモ・ポポリツィオイタリア2018年DVD鑑賞 ご存じ『帰ってきたヒトラー』のイタリア・リメイク版だが、うーん(ーー;)という印象である。ヒトラーの代わりにムッソリーニというアイデアは誰でも思いつきそうなのは、いいとして  ただ、全体に短縮した上に、さらにメタ構造だった終盤の展開を削ってあるのでかなりライトな仕上がりだ。(「右」ではなくて「軽」の方) イタリアは「70年間の間に...

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2020年9月 7日 (月)

「ナイチンゲール」:地と人心の果てで

監督:ジェニファー・ケント出演:アシュリン・フランチオージオーストラリア・カナダ・米国2018年 19世紀イギリスが囚人流刑の地としていたタスマニア。彼らを植民地の労働力として使役するのである。そこに送られたアイルランド女性の悲惨な物語だ。彼女は監獄を出してもらいその地で伴侶を得たが、同時に流刑地を管理している英国軍の将校に「愛人」扱いされている。とあるきっかけで将校たちにレ●プされた上に夫と子どもを殺される--というのが発端。復讐に燃える彼女は先住民の若者をガイドとして雇い...

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2020年9月 5日 (土)

「娘は戦場で生まれた」:想像の埒外

監督:ワアド・アル=カティーブ、エドワード・ワッツイギリス・シリア2019年 2012年から激動するシリアの状況をスマホで撮り続けたドキュメンタリー。アレッポ大学在学中に反政府デモ活動に参加した女性が、空爆が激しくなる中も反体制派の拠点であるアレッポに留まり撮影し、それを発信していく。 その間に、負傷者を治療する救急病院の医師と結婚しマイホームを得て娘も誕生する。そんな日常のホームビデオっぽい映像が全く境がなく、そのまま激しい砲撃が襲う街に繋がっていく。その落差に衝撃を受け...

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2020年8月30日 (日)

METライブビューイング「ヘンデル アグリッピーナ」:母の愛はコワし

演出:デイヴィッド・マクヴィガー指揮:ハリー・ビケット マクヴィガーの演出でヘンデルというと『ジュリオ・チェーザレ』が話題になった。ダニエル・デ・ニースがこれで人気急大上昇した。今回は『アグリッピーナ』を演出、ヘンデル先生イタリア時代の作品である。 タイトルのアグリッピーナはローマ皇帝の后にしてネロならぬネロ-ネの母親。彼女が策謀をめぐらして息子を皇帝の座につけようとする歴史ものだ。 結論から言うと、ヒジョ~に面白かった\(◎o◎)/!大河ドラマ1年分ぐらいが約4時間に凝縮...

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2020年8月24日 (月)

「女帝 小池百合子」

著者:石井妙子文藝春秋2020年 話題の書である。一時は売り切れてしまい書店から姿を消した時期があったほど。都知事再選記念 として、選挙後に買い求めて読んでみましたよ。 出版時から何かと批判の多い本書ではある。しかし面白く読んだ。そもそも私はゴシップ、スキャンダルの類いが三度のメシと同じくらいに好きなのだ。そういうものを下劣と考える人は最初から手に取らない方がいいだろう。 小池氏というと「芦屋のお嬢様」というイメージがあるが、それとは全く異なる実像を幼少...

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2020年8月23日 (日)

「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY」:凶暴なだけじゃダメかしら

監督:キャシー・ヤン出演:マーゴット・ロビー米国2020年 『スーサイド・スクワッド』の後日譚、というかスピンオフ?実は私見ておりません...((((((((( ((;-o-)コソコソそれでも話はよーく分かったので見てない人でも大丈夫。いやもうほんとにバカバカしくてくだらなくてメチャクチャでデタラメな内容。よい子はもちろんよい大人にも見せられねえ~ 泣く子も黙るジョーカーの女として好き勝手していたハーレイ・クイン、突如フラれて追い出される。これまではジ...

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2020年8月15日 (土)

「レ・ミゼラブル」「ルーベ、嘆きの光」:生まれは双子、育てば別人

「レ・ミゼラブル」監督:ラジ・リ出演:ダミアン・ボナールフランス2019年 「ルーベ、嘆きの光」(「ダブル・サスペクツ」)監督:アルノー・デプレシャン出演:ロシュディ・ゼムフランス2019年*日本未公開、WOWOWで放映 『レ・ミゼラブル』はサッカー・ワールドカップの応援に沸くパリの街から始まる。熱狂して三色旗を振り回す人々--その中にアフリカ系の少年たちが混じっているが、彼らが無賃乗車して帰っていくのは近郊の犯罪多発地区である。 というドキュメンタリー的な冒頭からつかみは...

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2020年8月 5日 (水)

「ルカ・マレンツィオ 四声のマドリガーレ」:厳戒態勢下での再開

演奏:ラ・フォンテヴェルデ会場:近江楽堂2020年7月28日 本来は4月1日に開催される予定だったが、コロナウイルス感染拡大のためこの日に延期された公演である。元々、昼夜2回公演だったが、会場の定員を減らしたために夕方の回が追加された。私は夜公演のチケットを買ったが、夕方5時の回に移らせてもらった。 会場に入ると客席エリアとステージの部分がちょうど半々ぐらいになっている。椅子は間隔を開けて置かれていて、定員の半分以下ぐらいだろう。4人の楽譜台も間隔(2m以上?)があいている...

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2020年8月 3日 (月)

「萩尾望都と竹宮惠子」

大泉サロンの少女マンガ革命著者:中川右介幻冬舎新書2020年 少年マンガ史における「トキワ荘」に比較されるのが、少女マンガでは「大泉サロン」だ。名前はよく聞き漠然とした知識はあるものの、では実際にどういう人たちが集まってどのぐらいの期間続いたのか、ということはよく知らなかったりする。 実際の期間は2年間(1970~72年)で、しかも肝心の萩尾と竹宮は「サロン」の中心人物ではなかった。集まってくるマンガ家志望者仲間たちと熱く語り合っていたのは増山法恵であったという。増山は元々...

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2020年7月31日 (金)

「ジュディ 虹の彼方に」:スタア再生

監督:ルパート・グールド出演:レネー・ゼルウィガー米国2019年 ジュディ・ガーランド47歳、この世を去る直前に行なったロンドンでのショーを中心に、彼女の境遇と最後の日々を描いている。酷使され悲惨だった子役時代の回想が現在と交互に挿入され、なぜそのような状態になったのかを観客によーく分かるようになっている。 かなり泣かせる内容だ。特に二人組の部屋で歌うところで涙(T^T)子役時代のエピソードはまさに未成年虐待だろう(さらにセクハラ、あるいは性的虐待も仄めかされている)。常に...

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2020年7月29日 (水)

映画落ち穂拾い 2020年前半その2

「アップグレード」監督:リー・ワネル出演:ローガン・マーシャル=グリーン米国2018年 DVD鑑賞。久々に出会った「よくできたB級SF」だった。とある夫婦がある日何者かに突然襲われ妻は死亡、夫は首から下が麻痺してしまう。彼はAIによって体を動かし復讐を始める。元の身体よりも遥かに能力が発揮できるし、情報網にも接続できる。近未来という設定で警察はかなり無能で役に立ってないという前提である。 意表を突く展開に目を離せない。そう来るか(!o!)という感じ。アクシ...

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2020年7月19日 (日)

「ハスラーズ」:女たちの悪だくみ

監督:ローリーン・スカファリア出演:コンスタンス・ウー、ジェニファー・ロペス米国2019年 リーマンショック後の不景気で立ち行かなくなったストリップクラブのダンサーたちが、ウォールストリートで金のありそうな男から金をかすめ取る--という「女たちの悪だくみ」(あるいは復讐)の実話である。 構成はコンスタンス・ウー演じる主人公が2007年からの出来事を2015年に記者に回想して語るというものだ。ストリップクラブというとステージ上で踊るのを見るのかと思ったら、それだけではなく客の男...

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2020年7月17日 (金)

「大塚直哉レクチャー・コンサート 4 バッハの生きた時代と”平均律”」:脳内ブラボーを送る

会場:彩の国さいたま芸術劇場音楽ホール2020年7月5日 なんと4か月ぶりのコンサートである(感動の涙)。しかし、さい芸でも再開初公演(多分)なので感染防止策は厳しかった。マスク着用、検温あり、連絡先提出、チケット半券は自分でもぎる、プログラムは自分で取る、クローク・ビュッフェ・物品販売なし、もちろんブラボー禁止 である。座席は以前に一度発売したものを市松模様に配置しなおして、郵便で連絡したという--ご苦労様です。ただ左右前後に人がいないのはかなりのストレ...

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