2025年3月19日 (水)

つらい職場特集・スポーツ界編「ボストン1947」

監督:カン・ジェギュ出演:ハ・ジョンウ韓国2023年 1936年のベルリン五輪マラソン競技で不本意ながら日本国籍の「孫基禎」として金メダルを獲得したソン・ギジョン。その時、ユニフォームの日の丸を隠したという理由で引退させられてしまった。しかも記録は「日本代表」のものなのである。戦後、コーチとしてボストンマラソンで若手選手を韓国として優勝させるまでの彼の復活譚をドラマチックに描いている。監督は懐かしや『シュリ』の人だ。 戦前の部分は日本人からすると冷汗をかく場面が出てくるかと...

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2025年3月18日 (火)

「コンセール・スピリチュエル パリに集った名手たち」:名演復活

古楽21世紀シリーズ8演奏:寺神戸亮ほか会場:オペラシティリサイタルホール2025年2月25日 昼の回に行った。18世紀パリで開かれていた人気コンサート・シリーズを再現。今、目の前に(耳の前に?)鮮やかに当時の響きが蘇る という趣向である。取り上げた作曲家はテレマンをはじめルベル、ギユマン、ラモー、ブラヴェという顔ぶれだった。 当時大人気だったテレマンは2曲(アンコールも)演奏。ルベルは寺神戸氏のビブラートのかけ方(?)のせいか妙にひずんで揺らいで聞こえ...

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2025年3月15日 (土)

つらい職場特集・酒場編「ロイヤルホテル」

監督:キティ・グリーン出演:ジュリア・ガーナー オーストラリア2024年 昨今の映画にしては短い91分。しかしその3倍ぐらいに感じた。「まだ、この状況続くの? 耐えられねえ~ 」というぐらい。同じ監督(主演も同じ)の前作『アシスタント』も相当イヤな話だったが、こちらはさらに上回るイヤさである。楽しい女二人の観光旅行のはずが旅費が無くなって、オーストラリアの荒野でパブの住み込みバイト--したらそこは酔っ払い野郎どもの巣窟であった。 セクハラ暴言当たり前、ひ...

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2025年3月 8日 (土)

「1690年代のローマ」:根に持つタイプ

マンネッリ、ミガーリ、コレッリの作品を巡って演奏:アンサンブル・リクレアツィオン・ダルカディア会場:今井館聖書講堂2025年2月22日 4人のうち3人が海外在住のグループゆえ、コンサートは年に一回になってしまうのか。昨年2月に続き、今年もやってきました。夕方の回はやや寂しい客の入りだった。2回公演なので昼間の方に皆行ったのか。それとも神奈川の『オルフェオ』と重なってしまったのが悪かったか。 前回はナポリの作曲家マルキテッリを日本初演し、そして今回はローマへ向かう。1690年代...

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2025年3月 1日 (土)

聴かずに死ねるか! 古楽コンサート2025年3月編

個人の好みで東京周辺開催のものから適当に選んでリストアップしたものです(^^ゞ事前に必ず実施を確認してください。ライブ配信は入っていません。小さな会場は完売の可能性あり。ご注意ください。 *2日(日)バグパイプ三昧 近藤治夫バグパイプ・ソロライブ:音楽茶屋奏(国立)*8日(土)レクチャーコンサート バロック音楽の魅力(太田光子ほか):横浜市鶴見区民文化センターサルビアホール*9日(日)宇治川朝政・芥川直子デュオリサイタル:今井館聖書講堂*12日(水)ベーバー マルコ受難曲 ド...

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「ソウルの春」:勝つのはどちらだ?暁の死闘

監督:キム・ソンス出演:ファン・ジョンミン、チョン・ウソン韓国2023年 昨年12月の韓国大統領により戒厳令が出されるという事態の際に、盛んに引き合いに出されて広く知られるようになった本作。2024年に見た映画の中でも上位に来る面白さである。タイトルから社会派政治劇なのかと思ってたら、ハードな軍事サスペンスだった。史実に基づいているが、登場する軍人・政治家たちの名前は微妙に変えている(が、韓国史を知っている人ならだれでもわかりそう)。見てて「本当にこんなことあったのか[E:...

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2025年2月20日 (木)

「大塚直哉レクチャー・コンサート 鍵盤の上で踊るバッハ!?」:舞曲演奏は体力勝負か

会場:彩の国さいたま芸術劇場2025年2月9日 11回目を迎えるこの企画、今回は「イギリス組曲」を素材にバッハと舞踏の関係に深~く迫る。ゲストは西洋舞踊史・音楽史研究者の森立子。外は寒かったが中はほぼ満員の聴衆の熱気と暖房が効き過ぎて暑いぐらいだった。 イギリス組曲……はて、大昔CDを買ってどこかにあるはずだがどこにあるか分からない。それぐらい聞いてないのである(;^_^A これは私だけでなく、バッハの鍵盤作品では一般的になじみが薄いものとされているそうな。プレリュードとほ...

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2025年2月15日 (土)

「密輸 1970」:勝つのは誰か?五つ巴の死闘

監督:リュ・スンワン出演:キム・ヘス韓国2023年 この映画を紹介するのは難しい。知り合いに「すごく面白い」とすすめようとしたけど「韓国の港で、1970年代の、えーと海女さんがいて--密輸品の--海底で--サメが、えーと-- 」って、説明すればするほど訳が分からなくなってくる。どうしたらいいんじゃい(~O~)後は「とにかく面白い 」と繰り返すしかない。 あえて紹介を試みると、化学物質で汚染された港で漁業が成り立たなくなったため日本から...

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2025年2月 7日 (金)

美術ドキュメンタリー特集・その2「アンゼルム“傷ついた世界”の芸術家」

監督:ヴィム・ヴェンダース出演:アンゼルム・キーファードイツ2023年 あれは30年前~ (なぜか歌う)今はなきセゾン美術館にて開催されたキーファー展は、作品がデカけりゃ衝撃もデカい。その迫力は夢にまで出てきそうだった。そんな恐ろしさがヴェンダースによりクリアな3D映像でスクリーン上で味わえる……と期待して行った 映画は二つの要素によって構成されている。一つは広大なアトリエでの制作活動の紹介である。広すぎて移動するのに自転車や運搬車で...

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2025年2月 6日 (木)

美術ドキュメンタリー特集・その1「美と殺戮のすべて」

監督:ローラ・ポイトラス出演:ナン・ゴールディン米国2022年 ナン・ゴールディンは1970~80年代の作品がフェミニズム・アートとしてクローズ・アップされた写真家である。その文脈はあくまで自傷的なまでにさらけ出した「私」の部分にあったと思う。例えば男に殴られて目の周りにアザ作っているセルフ・ポートレートなど強烈な印象を残した。その彼女が鎮痛剤の中毒問題について製薬会社へ抗議を行うという「公」の社会的行動は意外だった。自身も医者に処方されて中毒になってしまったそうな。 この...

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2025年1月31日 (金)

聴かずに死ねるか! 古楽コンサート2025年2月編

個人の好みで東京周辺開催のものから適当に選んでリストアップしたものです(^^ゞ事前に必ず実施を確認してください。ライブ配信は入っていません。小さな会場は完売の可能性あり。ご注意ください。 1月は遂に一度もコンサートへ行けませんでした。2月は何とか頑張りたいものです。 *2日(日)輝かしい古の響き(アウレア・アンティクア):今井館聖書講堂*9日(日)大塚直哉レクチャー・コンサート11 鍵盤の上で踊るバッハ!?:彩の国さいたま劇場*11日(火)モンテヴェルディ マドリガーレ集第3...

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2025年1月29日 (水)

「フェラーリ」:車と納骨堂

監督:マイケル・マン出演:アダム・ドライヴァー米国2023年 なぜか巨匠たちに愛される男 アダム・ドライバー。今回の彼が演じるはフェラーリの創始者だっ。いくらなんでも60歳には見えないなどという批判が相次いだが気にしない。どのみち自分が世界の中心の王様だと思っている人物を描いているのだから、年齢など意味はないしイタリアなまりの英語だって構いやしないのだ。 自社の業績よりレース第一   勝利するために全てを優先。レーサーが事故で死んでも...

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2025年1月20日 (月)

これも見たぞドキュメンタリー編・その3「戦雲(いくさふむ)」

監督:三上智恵 日本2024年 南西諸島で進む軍事化のここ数年を映像で記録した作品である。そして合わせてそこに生きる忘れがたき住民たちの日常も紹介するという内容。埼玉から東中野まで遠征して見に行った。 ゴルフ場の跡地や採石場は要注意である。防衛のためだけのはずがいつの間にか弾薬庫ができ、キャタピラならぬタイヤを付けた戦車や「マルに火」標識の輸送車が一般道路を走る。住民の意見が様々に交錯するがそれに関係なく事態は進む。私は未だ沖縄のことをよく知りませんでしたm(__)mスイマ...

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2025年1月19日 (日)

これも見たぞドキュメンタリー編・その2「ビヨンド・ユートピア 脱北」

監督:マドレーヌ・ギャヴィン米国2023年 見る前から気が重かったドキュメンタリー映画。北朝鮮からの亡命希望者を手助けする韓国の牧師と、実行する二組の家族に密着する。特に5人家族の方の行程は中国→ベトナム→ラオス→タイ……と東南アジアの密林をぬけていくなど壮絶の一言。船で直に韓国に行くのはダメなのか と思った私は無知であります(*_*; とはいえ全体には淡々とした調子で進み、下手に緊張や感動を盛り上げたりはしない。恐ろしいのは亡命者を見つけたブローカーがお...

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2025年1月18日 (土)

これも見たぞドキュメンタリー編・その1「燃えあがる女性記者たち」

監督:リントゥ・トーマス、スシュミト・ゴーシュインド2021年 インドで最下層の女性たちが立ちあげた新聞社あり。さらにニュースサイトを作ってネット配信へと踏み出すところから始まる。その中の数人の記者に密着する。若いけど英語のアルファベットも分からずスマホも使えない新人、あるいは結婚してから学校へ通ったという子持ち主任記者など。 マフィアが仕切る採石場、粉塵で真っ白の村、トイレがない住居問題など地域特有の問題かと思ってしまうが、その周辺には事件を放置する警察、貧困差別、誹謗中傷...

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