2021年6月19日 (土)

「ウェイティング・バーバリアンズ 帝国の黄昏」/「彷徨える河」再見:狂気・逃走・放置

監督:シーロ・ゲーラ出演:マーク・ライランスイタリア・米国2019年DVD鑑賞 原作J・M・クッツェー『夷狄を待ちながら』を作者自らが脚本化。出演がマーク・ライランス、ジョニー・デップ、ロバート・パティンソンという顔ぶれで、監督はシーラ・ゲーロ(『彷徨える河』コロンビア映画初のアカデミー賞外国語映画部門候補になった)、さらに撮影はクリス・メンゲス(『ミッション』『キリング・フィールド』でオスカー獲得)である。これだけ豪華なメンツが揃っていながら、正式ロードショーがなくてビデオ...

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2021年6月 8日 (火)

ヘンデル「セルセ」:酒と泪と王と女

二期会ニューウェーブ・オペラ劇場指揮:鈴木秀美演出:中村蓉会場:めぐろパーシモンホール2021年5月22・23日 昨年は多くのオペラ公演が中止・延期を余儀なくされた。しかし、今年はめでたく無事に上演された二期会のヘンデル。恒例のダブルキャストで私は23日の方に行った。 ペルシャの王様セルセは婚約者がいるのに、弟アルサメーネの恋人にして歌手のロミルダに横恋慕。一方、ロミルダの妹もやはりアルサメーネを虎視眈々と狙っているのであった……という五角関係の話だ。元はと言えばセルセが二...

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2021年6月 3日 (木)

「レベレーション 啓示」/「王妃マルゴ」

「レベレーション 啓示」全6巻著者:山岸凉子小学館(モーニングKC)2015年~2020年 「王妃マルゴ」全8巻著者:萩尾望都集英社2013年~2020年 フランスを舞台にした歴史マンガ二作について、いつか感想を書こうと思いつつここまで、引き延ばしてしまった。なんとか書いてみたい。 まずはジャンヌ・ダルクを主人公にした『レベレーション』である。元々は「神がかった人間はどういうものなのか」を描きたいという動機があったとのことだ。候補は3...

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「古楽系コンサート情報」更新

「古楽系コンサート情報」6月分更新しました。左のサイドバーにリンクあります。ライヴ配信などは入っていません。...

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2021年5月22日 (土)

今ひとたびの「一度きりの大泉の話」

自分の感想を書いてから、他の人の評などを読んで思ったことを追加したい。 私は小学生低学年の頃は少女マンガをよく読んでいたが、その後は縁遠くなってしまった。萩尾望都を初めて読んだのは、高校の同じクラスでマン研に入っている子が「布教用」に持っている『ポー』や『トーマ』を貸してくれた時である。家へ持って帰って読んでいたら、6歳上の兄も一緒になって読んで「すごい!」と興奮して、大学のマン研所属の友人に電話をかけ「遠藤周作とかヘッセみたいなんだ」(←兄が好きな作家)と力説した。もっと...

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2021年5月16日 (日)

「ブラックアンドブルー」/「21ブリッジ」:白黒は決着つかず

「ブラックアンドブルー」監督:デオン・テイラー出演:ナオミ・ハリス米国2019年DVD鑑賞 言うまでもなくブラックは肌の色でありブルーは警官の制服の色を示す。故郷の街の役に立ちたいと戻ってきたアフリカ系新人女性警官は、警察と住人の対立の最前線に立たざるを得ない。そして昔の友人からは敵扱いされるのだった。双方に付くことは不可能、どちらかの立場に取らばならないと忠告されて納得いかずモヤモヤしているうちに、身内の警官の不正と犯罪を目撃してしまう。 --と言うの...

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2021年5月 8日 (土)

「一度きりの大泉の話」

著者:萩尾望都河出書房新社2021年 (以下、全て敬称略)発売前の告知だけで少女マンガ界隈が騒然となった手記である。1970年秋から若い少女マンガ家(とその卵やファン)が集ったいわゆる「大泉サロン」については、半ば「伝説」と化していた。近年、竹宮惠子がその時代を回顧した『少年の名はジルベール』(2016年)が出版された。さらにそれをふまえた上で他の資料・記録を検証し他のマンガの動向も合わせてまとめたのが中川右介『萩尾望都と竹宮惠子』(感想はこちら)である。一方、これまで萩尾...

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2021年5月 2日 (日)

祝!「ランド」手塚治虫文化賞マンガ大賞

なんと山下和美『ランド』(全11巻)が手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞した。(ネタバレなし感想はこちら)候補に入っていたことは知っていたが、人気シリーズが複数候補になっているし、内容が内容だけにまず無理だろうと思っていたのでビックリである。(関連記事)ご本人も「驚いて椅子から転げ落ちそうに」なったと言っているぐらいだ。 第一次の選考結果を見ると最下位の5点である(同点が5作品あるが)。票を入れているのは中条省平一人である。それをどうやって上位の『鬼滅』『ネバーランド』と並べて...

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2021年4月29日 (木)

「イタリア~狂熱のバロック歴遊」:上野の森にナポリ弁が朗々と響くのだ

東京・春・音楽祭2021演奏:西山まりえほか会場:旧東京音楽学校奏楽堂2021年4月17日 昨年は中止の憂き目にあったが、今年はコロナ禍でもなんとか開催となったハルサイ。都知事からは都・県境またいで移動することへの自粛要請出てたけど、聞きに行っちゃいました~(^▽^;) 西山まりえが企画構成、解説、さらにチェンバロとバロック・ハープを演奏--と大活躍のプログラムである。17世紀初頭のイタリアバロックが中心でディンディア、モンテヴェルディ、A・スカルラッティの歌曲と共に同時期...

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2021年4月21日 (水)

セルゲイ・ロズニツァ〈群衆〉ドキュメンタリー3選:行列に並べば福来たる

ロズニツァはベラルーシで生まれモスクワの映画大学で学び、現在ドイツ在住の監督である。過去にドキュメンタリー21作、劇映画4作を発表とのこと。日本で彼の作品(比較的最近のもの3作)が一気に初公開された。 「国葬」オランダ、リトアニア2019年 1953年スターリンが亡くなり、赤の広場で国葬が行われた。死の直後から公式映像が撮影されたのだが、なぜかお蔵入りになっていたらしい。残された大量のフィルム37時間分と国営ラジオ局の放送音声からロズニツァが当時の状況を...

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2021年4月14日 (水)

「ウルフウォーカー」/「ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒」:異種族との接近遭遇

「ウルフウォーカー」(字幕版)監督:トム・ムーア、ロス・スチュワート声の出演:オナー・ニーフシーアイルランド・ルクセンブルク2020年 秀作アニメを生み出すアイルランドのカートゥーン・サルーン長編第4作目である。内容をかなり乱雑にまとめれば、アイルランド版「もののけ姫」といったところか。絵柄が超個性的だ。中世絵画風の立体感なしに描かれる町の遠景や城内。対して森はケルトの渦巻き文様に彩られた生命にあふれている。 舞台は17世紀半ばの英国統治下のアイルランド...

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2021年4月 9日 (金)

「音楽の夜会」:正体不明でも満員御礼

演奏:アンサンブル・クォドリベット会場:近江楽堂2021年3月31日 内容やメンバーについてよく分からないままとりあえず聞きに行ってみた。当日渡されたプログラム見ても詳しいことはほとんど掲載されてない。総勢9人のメンバー名もアルファベットでだけ記されているのみで経歴などもない。わざと最低限のことしか載せなかったとのことである。 テノール兼解説役の話で開始。まずはバッハ作品でチェンバロ、チェロの独奏から始まって段々と人数を増やして器楽アンサンブルへ。そして歌手が加わってヘンデ...

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2021年4月 5日 (月)

「ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった」/「ラスト・ワルツ」再見:共同幻作

「ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった」監督:ダニエル・ロアー出演:ロビー・ロバートソンカナダ・米国2019年 ザ・バンドについては完全に門外漢だけど見に行っちゃいましたよ。ロビー・ロバートソンが過去を振り返るドキュメンタリーである。 自らの生い立ちから始まり、ロニー・ホーキンスのバンドに参加、レヴォン・ヘルムと知り合って独立してバンドを結成し、やがてボブ・ディランのツァーでバックを担当する。御存じの通り、このツァーはどこへ行ってもディランがブーイングでヤ...

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2021年3月28日 (日)

「フランスバロックの粋 美の陰影 2」:終焉の暁

演奏:高橋奈緒、福澤宏、山縣万里会場:近江楽堂2021年3月19日 久し振りのコンサートである。この「粋」シリーズ、第1回目がドイツバロックでこれが3回目らしい。私は初めて見参した。(聴参?) ヴァイオリン+ガンバ+チェンバロという王道の組み合わせで、クープランからラモーへ、後期フランス・バロックの道筋をとたどっていくものだった。フランクールという作曲家になるとバロックからロココ調への変化を感じ取れる。そのヴァイオリン・ソナタにフランス革命前の栄光の残滓を受け取れるのであっ...

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2021年3月26日 (金)

「ストレイ・ドッグ」:怒りをこめてぶち壊せ

監督:カリン・クサマ出演:ニコール・キッドマン米国2018年 ニコール・キッドマンがアル中やさぐれ中年刑事になって薄汚れたLAの街を徘徊する。そのやさぐれ度・ヨレヨレ度が中途半端ではない。「え~~っ あのニコールが。うっそーΣ( ̄□ ̄ll)ガーン」という衝撃が発生するほど、まるで別人だ。 しかし、かといって超人的な活躍をするヒーローというわけではない。ひたすら地べたを這いずり回るように捜し歩く。あまりに強引な無法刑事ぶりにはビックリだ。他者も自分も顧みるこ...

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«「マーティン・エデン」:進むも後悔戻るも絶望