2019年9月19日 (木)

「フィンランド・リコーダー四重奏団《ブラヴァーデ》」:笛の嵐到来

会場:武蔵野市民文化会館小ホール2019年9月8日 フィンランドのリコーダー・カルテットが来日。初来日かと思ったら過去にも来ているようである。(NHK-BSで放送されたらしい。これも会場は武蔵野ですよね?)外見はもろに北欧系おねーさま4人組という感じ。主に低音担当のメンバーは産休で、別の若手が急遽入ったとのことだった。 全体に感じたのはリコーダーのアンサンブルだけの演奏で飽きたりしないように、色々と工夫を凝らしているということ。大抵は椅子に座って4人で演奏しているが、曲によ...

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2019年9月17日 (火)

「COLD WAR あの歌、2つの心」:生きて別れし物語

監督:パヴェウ・パヴリコフスキ出演:ヨアンナ・クーリク、トマシュ・コットポーランド・イギリス・フランス2018年 『イーダ』の監督の新作はカンヌで監督賞受賞、オスカーも3部門ノミネートという高評価だった。どうも恋愛映画っぽいということで、二の足を踏んでいたのだが評判が良かったので見ることにした。 戦後数年経ったポーランドから始まる。冒頭農民たちによって歌われる、野卑にして強烈なエネルギーを持つ民族音楽に引きつけられる。場面はそのまま歌手のオーディション場面に繋がり、一人の若...

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2019年9月14日 (土)

「バルバラ・ストロッツィ 生誕400年記念コンサート」:400年目の復権

演奏:ディスコルシ・ムジカーリ会場:豊洲シビックセンターホール2019年9月2日 生誕400年だったとは知らなかったストロッツィ。結成されたばかりのグループによって記念公演が行われた。主催者は佐々木なおみという研究者で、そのため曲間に詳しい解説が入ってレクチャーコンサートと言っていい濃い内容になっていた。コンサート全編ストロッツィというのはさすがに聞いたことがない。しかも日本初演というのが数曲入っている。 以前は、彼女はパッとしないまま認められず忘れられた作曲家という見方を...

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2019年9月11日 (水)

「新聞記者」:ヒューマン・ドキュメント スクープしなけりゃ意味ないよ

監督:藤井道人出演:シム・ウンギョン、松坂桃李日本2019年 過去に度々「日本では社会派映画の伝統は途絶えた!なんてこったい(>O<)」みたいなことを書いてきたので、その手前どんなもんかと見てきましたよ。結論から先に言うと、これって「社会派」なのか?と思わざるを得ない内容であった。 まず、女性記者の設定に驚く。日本人と韓国人のハーフでしかも米国からの帰国子女(母語は英語のようである)、失脚した記者であった父親の復権のためにわざわざ日本で自らも新聞記者となる--っ...

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2019年9月 7日 (土)

「Ut/Faコンサート」:リコーダーが登場する推理小説はあるか?

演奏:宇治川朝政&福間彩会場:近江楽堂2019年8月31日 二人組ユニットのウトファ、今回は「やりたいものをやろう」と選曲していったら、国も時代もバラバラになってしまったという。ただ唯一の共通点はリコーダー である。 18世紀ベルギーのフィオッコという作曲家に始まり、17世紀のファン・エイク(リコーダー独奏)、16世紀はバード(こちらはチェンバロ独奏)。ロンドンのイタリア人バルサンティ、さらにオトテール、テレマンといった次第だ。リコーダー曲というのが共通と...

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2019年9月 3日 (火)

「訣別」上・下巻

著者:マイクル・コナリー講談社文庫2019年 刑事ボッシュ・シリーズの19作目が早くも出た。前作では心ならずも犯罪者の弁護側調査員として働いてしまったボッシュであったが、今は私立探偵の免許を取り直し、さらに近隣の小都市サンフェルナンド市の警察でボランティアとして働く日々である。 警察にボランティア(?_?)と驚くが、財政問題から人員を減らしたことへの対応策だという。完全無休で月2回出勤する代わりにバッジを持てるらしい。多分、実際にこういうボランティア制度が存在するのだろうが...

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2019年8月31日 (土)

聞かずば死ねない!古楽コンサート 9月版

夏が未消化のまま、あっという間に秋に突入でしょうか。 *2日(月)バルバラ・ストロッツィ生誕400年記念コンサート(ディスコルシ・ムジカーリ):豊洲シビックセンターホール*3日(火)丸山韶バロック・ヴァイオリンリサイタル:五反田文化センター*8日(日)フィンランド・リコーダー四重奏団 ブラヴァーデ:武蔵野市民文化会館小ホール*11日(水)品川治夫 古希コンサート:近江楽堂*13日(金)ビーロック・オーケストラ:武蔵野市民文化会館*  〃   魂の響き旋律の鼓動2 十五夜によせ...

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2019年8月30日 (金)

「ホワイト・クロウ 伝説のダンサー」:壁の西側へ跳躍せよ

監督:レイフ・ファインズ出演:オレグ・イヴェンコイギリス・フランス2018年 冷戦時代、ヌレエフ亡命の顛末を描く。単なる「事件」ではなく、貧しい少年時代、バレエ学校、パリ公演の3つの時代を並行しつつ彼の内面に迫っていく構成だ。注意深く見てないと学校時代と公演直前がゴッチャになる可能性がある。 彼の強烈な自負心と背中合わせの劣等感に驚かされる。ただ、実際のヌレエフは憎めない「人たらし」だったようで、そこら辺の描写はあまりない。それと、セクシュアリティの描写は妙に曖昧なのはどう...

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2019年8月26日 (月)

「マルリナの明日」:首なき暴走

監督:モーリー・スルヤ出演:マーシャ・ティモシーインドネシア・フランス・マレーシア・タイ2017年 予告を見てなんじゃこれは?と仰天して見に行ってしまった映画である。舞台はインドネシアのとある島。荒野の一軒家で細々暮らす未亡人がいる。これが、この島の風習らしいのだが、なんと亡くなったダンナはミイラになって同じ家の中にいるのであった(~o~)それに目を付けたならず者の一団、乱暴狼藉を働き大事な家畜を奪ってしまう。しかし、彼女はレイプ野郎のボスの首をナタでぶった切って反撃、証拠...

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2019年8月22日 (木)

「ジュリアン・オピー」:電子カラスは液晶のドット抜けをつつくか

会場:東京オペラシティアートギャラリー2019年7月10日~9月23日 単純な色と線の絵で知られるジュリアン・オピー、過去作で一番ポピュラーなのはブラーのCDジャケットだろうか。それを担当した頃はまだ人物の顔にまだちゃんと目鼻があったのだが、最近の作品になるともはや何もない。他には映像インスタレーションで、国立近代美術館のロビーに常設されてるものがある。広重や北斎の風景画をパロディにしたような作品で、じっとしげしげ見るようなものではなく、通りかかるたびに思い出したように眺め...

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2019年8月19日 (月)

「技巧と調和」

17世紀ドイツ・オーストリア珠玉の器楽作品演奏:天野寿彦ほか会場:近江楽堂2019年8月1日 17世紀のドイツ・オーストリアのプログラムというと、バッハやテレマンの先輩音楽家の時代である。結構ありそうで意外と少ない。ローゼンミュラー、シュメルツァー、ラインケンなど渋い名前が並ぶ。さらにはベッカー、フィーアダンクとなると耳にしたこともない。そんな作曲家たちの作品がヴァイオリン天野寿彦&吉田爽子、ガンバ平尾雅子、チェンバロ辛川太一という顔ぶれで演奏された。 中でも印象大だったの...

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2019年8月17日 (土)

「荒野にて」:父一人馬一匹子ひとり

監督:アンドリュー・ヘイ出演:チャーリー・プラマーイギリス2017年 思い出したのはケン・ローチの『ケス』である。あれは孤独な少年とタカの物語だったが、こちらは競走馬と少年の物語。ロードムービーであるところが『ケス』とは違っている。 米国の田舎町、少年は父親と共に引っ越してきたばかりで完全に孤独である。それまではハイスクールに通っていたようなのだが、父親は全く無関心で、そもそも不在が続き生活費すらろくに渡していない。家の中はまだ段ボールが積んであるままだ。 たまたま馬主の男に...

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2019年8月12日 (月)

「フォリア!」:教会揺らぐ

スペイン、ポルトガル15世紀から伝わる情熱と狂喜の音楽演奏:高橋美千子ほか会場:日本福音ルーテル東京教会2019年7月17日 定期的に行われていたソプラノ高橋美千子とガンバ4人の組み合わせによるコンサートである。今回はパーカッションの立岩潤三がゲスト参加して様々な時代と国の「フォリア」や関連曲を演奏、休憩無しでアンコール二曲を入れて90分というものだった。 冒頭、マレのフォリアに基づくヴィオール曲から開始。その後に登場した高橋美千子は真っ赤な口紅に黒髪を振り乱し、赤いドレス...

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2019年8月11日 (日)

「バイス」「記者たち 衝撃と畏怖の真実」:表裏なき戦い

「バイス」監督:アダム・マッケイ出演:クリスチャン・ベール米国2018年 「記者たち 衝撃と畏怖の真実」監督:ロブ・ライナー出演:ウディ・ハレルソン、ジェームズ・マースデン米国2017年 イラク戦争を扱った二作が同時期に日本公開された。内容は一つの事象の表面と裏面を描いている。さて、どちらが表でどちらが裏かというと……。 先に見た方がいいのは『バイス』だろう。ブッシュ政権下で副大統領を務めたチェイニーが主人公である。副大統領というとお飾り的ポジションかと思っていたら、彼につ...

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2019年8月 8日 (木)

「ネット右翼とは何か」

著者:樋口直人ほか青弓社2019年 6人の著者による「ネット右翼」の実像に迫る論集。「ネトウヨ」などというといわゆる「自宅警備員」(私もつい冗談で使ってしまうが)のような二、三十代のニートな若者を思い浮かべてしまう。しかし冒頭、8万人対象の調査によって浮かび上がってきた「ネット右翼」像はそれとは全く異なるものである。ここで衝撃を受けるだろう。正規雇用、経営者・自営業の男性で、年齢は中高年が多い。情報源としてよく利用するメディアはネット・SNSでTVのワイドショーや情報番組さ...

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