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2005年3月 9日 (水)

「チューリップ・タッチ」(アン・ファイン)

評論社2004年
1500円

実に強烈で救いようのない話である。
主人公は、英国のホテルで雇われ支配人をしている両親を持つ小学生の女の子。親の新しい職場に引っ越した時にチューリップという少女に出合う。チューリップはまさに「悪い子」なのだが、主人公はその悪の部分に惹かれて仲良くなる。それは同時にチューリップに支配されるということでもある。

中学で彼女はとある事件を契機にチューリップから距離を置くようになり、「良い子」になる。一方でチューリップは歯止めを失い、周囲の物を壊し自分より弱者をいじめ手がつけられない状態へ転がり落ちて行く。

ここに描かれているのは恐るべき憎悪の連鎖である。肝心なのは周囲の人びとが少なくともチューリップを救おうと努力はしていたことだ。しかし、結局のところ、誰も彼女を救うことは出来なかった。酷い状態にあるのを分かっていながら、である。

その行く末を考えるとぞーっとし、無力感に襲われる。そういう人間像を作者は突きつけているのだ。
彼女の描いた「目」とラストの炎の描写が極めて印象的。

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