「時間の止まった家」(関なおみ)
副書名:「要介護」の現場から
光文社2005年(光文社新書)
¥720
以前からオタク世代が老人になったら、彼らはオタク・コレクションをどうするつもりなのだろうかと疑問に思っていた。本・雑誌どころかフィギュアやらグッズやらいくら買い込んで溜めこんでも、それらを老人ホームに持って行くことはできない。家族がいて保存してくれたり売ってくれるならまだしも、一人暮らしだったら単なるゴミである。ろくに封を開けることなく捨てられる運命であるなら、最初から手に入れない方がマシな気がする。
この本は東京都の某区で「日本ではじめて設置された、福祉現場の係長級医師のポスト」についた著者が実際に見た様々な「家」の事例を紹介している。その中で独居老人が自宅やアパートに「ゴミ」(と他人には見える)に文字通り埋もれて暮らしている姿も幾つか登場する。もっと暮らしやすい住居に「ゴミ」ごと引っ越すのを手伝う話も出て来る。恐ろしい……。これらのエピソードを読んで、もう絶対に物はためるまいと思った。とにかく詰まらん本やCDは読み・聴き終わったらさっさとゴミ箱に突っ込むことを改めて決意。
他にもネコ屋敷の話とか、ここには名前も書きたくない(><)生活害虫だらけの生活とか、恐ろしいけどある種興味深かったり、笑っちゃう所もある。また文章に何気ないユーモアがあって淡々と紹介しているのでそういう印象を受けるようだ。
ハウスキーピングというのはある程度気力と体力が無いと出来ない。体が老化して来たり、ボケて来たりしたらもはや家を維持することはできないだろう。早い話が、トイレが壊れていても直す手筈を行なうことができないのだ。
そして独り暮らしだけでなく家族と共に暮らしていてもやはり同じような状態になっている事例が多数ある。そこでは様々な理由から既に「家族」の形は完全に崩壊している。
そういう点で一番すごかったのは、全員大人であるにも関わらず共依存の幼稚園児状態の家庭だろう。「ここには母性も父性もない。兄弟愛もない。」--誠に索漠の極みである。
さて著者はなぜ公務員生活をやめてしまったのだろうか? そこの部分の心境もいずれ聞かせて欲しい。
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