「さまよう刃」(東野圭吾)
朝日新聞社2004年
1700円
東野圭吾の小説を読んだのは初めて。
少年犯罪と少年法の矛盾が取り上げられているが、その論議より気になったのは、登場人物が善悪、白黒すっぱり分かれてしまっていることだ。つまり、善人はとことん善人で、悪人はとことん悪い。ここには限りなく白に近い灰色とか、限りなく黒に近い灰色や、白黒モザイク状態になっている人物は出て来ない。こういう人間観を前提にしているのであれば、少年犯罪の問題も決着を付けやすいことだろう。
だが、現実は……。
さらにミステリとしての謎解き部分にとあるキーパーソンが登場して来るが、その正体が明らかになった時、少し腹が立った。「あんた自分でやれば?」「他人に押しつけてんじゃねーの」などとそいつに言いたくなったのである。
この作者の本を読むことは恐らく二度とあるまい。
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