「王女メデイア」(ク・ナウカ)
会場:東京国立博物館本館
2005年7月26日
ク・ナウカの代表作の再演である。元は言うまでもなくギリシア悲劇だが、それを読み替えて舞台を明治期の日本、イアソンを日本の軍人、メデイアを朝鮮半島から故郷を捨てて来た女として描いている。さらに、全体の設定は黒マントの学士様(?)風の男たちの宴会の余興として「メデイア」を演じるという形であり、話者(スピーカー)を男たちが、演者(ムーバー)を女たち(料亭の仲居)がやるのだ。
問題は会場の残響が大き過ぎることだ。博物館の大昔の完全な石造りの部屋はなんと残響4秒もあるということで、教会並みではないか。芝居よりもルネサンス期のミサ曲でもやるのがふさわしい空間である。普通のコンサートホールでも2~3秒で、それでも人間の話し声はエコーがかかり過ぎに聞こえるのに、これでは何を言っているのか分からない。
で、何を言っているのかわからないので、つい無意識にスピーカーの方を注視してしまい、肝心のムーバーの方の動きを見るのが疎かになってしまうのであった。困ったもんである。
同じ演目は過去に蜷川幸雄演出のとロマンチカで見たことがあるが、過激な話なので(何せ男への復讐のためとはいえ、母親が自分の息子を殺してしまう)現代的な規範からは到底納得できるものではない。そこをどう解釈するかで全く違う印象になってしまう。
ここでは、「文明」と「野蛮」、さらには男性原理と女性原理の対立としてとらえているようである。それを「面白い着想である!」(ポンと手を打つ)か「なんだか型にはまっているなあー」と見るかはビミョ~なところである。いや、詰まらなくはなかったんだけどね。
金モール付けた軍服姿のイアソンを女が演じているのを見ると、つい「宝塚みたい」と思ってしまったよ。(^^ゞ
メデイア役の美加理は改めて言うまでもなく美しかった! 最近のCMにならって言えば「美加理、キレエ~」(←あの脱力系のセリフを想起せよ)。
台風で天候が変なせいか、エアコンがよく聞いてなくて後半、体調があまり良くなくてぼーっとしてしまった。
終了後のポストトークは早稲田演劇博物館の館長さんがゲストで、能との関連性などの話が中心であった。
次は新作で『オセロー』をやるそうだが、な、なんと11月なのに野外……。凍死するぞー。
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