バッハ・コレギウム・ジャパン第70回定期演奏会
内容:ソロ・カンタータ1
会場:東京オペラシティ コンサートホール
2005年9月15日
今回はソロ・カンタータということで、合唱はなし。歌手はキャロリン・サンプソン(ソプラノ)、ロビン・ブレイズ(カウンターテナー)だけである。
一曲め(BWV35)はロビン君登場。舞台上にはなんとオルガン二台にチェンバロ--と鍵盤楽器が勢揃いした珍しい布陣。鍵盤は普段は通奏低音を担当しているのだが、この曲ではもう一台のオルガンが独奏楽器的に活躍するのであった。パンフの解説によると、バッハは教会ではオルガンを弾かずに指揮をしていたが(オルガンの位置からは合唱隊が見えないため)、合唱隊がいないこのような曲では弾き振りをしていた可能性があるという。
というわけで、もう一台のオルガンは指揮者の鈴木雅明が弾いていた。器楽のみのシンフォニアはテンポがいい曲で、バッハも当時こんな風にガシガシ弾きまくっていたのかなあ、などと想像してみるのであった。
ロビン君の歌とそのオルガンがからむ曲では、ウット~リという感じで客席の女性客の視線と耳を一身に集めていたのは間違いない。
二曲め(BWV51)はC・サンプソンがソリスト、さらにトランペットの独奏も入り、かなり華やかな感じである。前回の公演で彼女が歌ったアリアで涙目(;_;)になってしまったことはヒミツである。が、今回もまた!ここだけのナイショの話ではあるが、やはり第三楽章のアリアで泣いてしまったのであーる(T^T)
もう、声といい抑揚といい強弱の付け方(特に最終節の)といい、素晴らしいの一言。これを泣かずしていられようかっつーの!というぐらいだった。感動です……。
と、客席がいよいよ盛り上がったところでキターーーーッ! なんとつい先日発見されたばかりホヤホヤのBWV1127を急きょ本邦初演である。
この曲はバッハには珍しい「有節歌曲」……ってなんだと思って調べたら、どうも旋律が展開しせずサビの部分もない、同じ節回しが延々と続くものらしい。それを間奏を挟んで12回繰り返すのだという。しかも、それらの冒頭の歌詞は当時の雇い主・ワイマール公の座右の銘という毎回同じもので始まるのだ。全部演奏すると50分にもなるそうな。
ほとんど出ずっぱりのソプラノ歌手も大変だが、完全に終始弾き続けるチェロはもっと大変であろう。
さらにこれはワイマール公の誕生日を祝して作られ、歌詞の中に彼の名の文字が折り込まれているという、完全にヨイショのための曲でもある。
--ということで、今回は四つの節だけを演奏するという短縮盤であった。
感想はというと、いや美しい曲なんだけどね……いくらなんでも12回繰り返してたらちと飽きるかな、などと思ってしまった。
この曲はガーディナーが録音してCDが発売になるようだが、BCJも完全録音する予定だという。
後半はペルゴレージの名曲『スターバト・マーテル』を晩年のバッハが編曲したBWV1038。原曲は当時の音楽最先端の地イタリアからの最新流行の形式による曲、それを既に「古臭い」なんて言われちゃってたバッハが編曲したというのは、誰かからの依頼によるものらしいが、そう思って聴いてると、なるほど彼が自分で作曲してたらこうは作るまいというような所が多かった。単なる気のせいかも知れんけど。
いずれにしろ、ピカピカ輝いてる華のあるソリスト二人の歌声は楽しめたのだけは確かである。
なお、コンサートの最中は気付かなかったが、バッハの新曲初演をフジテレビが取材に来ていた。数日後の夜のニュースで放送されたが、ロビーで観客に感想を尋ねていたのはバッサリとカットされていたもよう。
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