やなぎみわ「無垢な老女と無慈悲な少女の信じられない物語」
会場:原美術館
2005年8月13日~11月6日
やなぎみわは「エレベーターガール」のシリーズで一躍注目されたアーティスト。ツルツルピカピカした近未来的イメージの都市の光景の中で制服を着た女たちがしどけないポーズで座っている、というような合成写真のシリーズは強烈な印象を残した。
さて、今回新しい「寓話」シリーズ公開とのことで、久し振りに品川の原美術館に行ってみた。ゆるやかな長い坂道が結構キツくて、「ありゃ、こんなに遠かったっけ?」などと思ってしまったのは歳のせいであろう。
入口を入ると最初の部屋では、大きなテントみたいのがぶら下がっていて、その中に入って映像作品を見るようになっている。これは「砂女」あるいは「テント女」のシリーズで、客はあたかもテント女になったかのようにテントをすっぽり被った状態で外界を覗いている、という映像を見るのだ。
外の廊下にはそのテント女の写真が展示されている。こちらのブログに掲載されているようなやつだ。このテント女もまた強烈なイメージで、安部公房の「箱男」みたいでもあり、またイスラムのブルカのようでもある(手足が出ているから本当は違うが)。
二階には同じシリーズの映像と写真作品がある。「砂女」というビデオでは、少女が昔話風に祖母から砂女と出会いそれを追いかけていく話を聞かされ、その存在の謎が明かされさらに謎が深まるのである。
ここでは「私」こと少女と祖母と砂女が入れ子状態のように入れ替わっていき、スペイン(だっけ?)の荒野の風景とあいまって、引きこまれるものがある。
一階には「寓話」のシリーズの写真作品が展示。おなじみの童話がイヂワルで残酷な悪意に満ちて変換され、それを少女たちが演じている。コワい年老いた魔女なんかも女の子が仮面を被ってやっていて、ここでは少女と老女が等しいものとして提示されているのである。
どのぐらいにイヂワルかというと、シンデレラの足指を姉と継母がペンチかなんかで押し広げようとしたり、白雪姫の林檎を差し出しているのも受け取っているのも両方とも老女といった次第である。イヂワルな話が好きな私はこういうのを見ていると、嬉しくなってニヤニヤ笑いが止まらなくなってしまうのであった。
不思議なのは、老女=少女というのは結構よくあるコンセプトだと思うが、老人ならぬ老男=少年というのはあまり見当たらないように思える事である。老女と少女--女と「老い」の方が親和性があると考えられているのだろうか?
他に、ご無沙汰している間に増えた常設展示作品の「This Water Unfit for Drinking」を見る。元々、私邸だった原美術館の特性を生かした作品。ドアを開けると、水道のパイプやら電線が通ったタイル張りの壊れかけた竪穴に造花が飾られている。廃墟っぽい感じがとてもス・テ・キ(*^-^*)
最後ににアートショップでカタログを……買おうと思ったが、内容に比して値段が高かったので止めて、代わりにテント女のポスターを買った。「ウチに帰ったら壁に飾ろうっと」とスキップして帰ったのであった。
【関連リンク】
やなぎみわ公式サイト
http://www.yanagimiwa.net/
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コメント
はじめまして。TBさせていただきました。
私はポスターとカタログ悩んだ末カタログを買いました。
女と「老い」の親和性はなるほどと思いました。
では失礼しますm(_ _)m
投稿: manimani | 2005年9月30日 (金) 11時34分
コメントとトラバありがとうございます。
後からカタログも買っとけばよかったかなー、と後悔してしまいました。
投稿: さわやか革命 | 2005年10月 1日 (土) 10時33分
トラックバックしていただいて、ありがとうございます。
投稿: ウインバレー | 2005年10月 2日 (日) 13時56分