「Loretta Lux」(ロレッタ・ラックス)
発行:青幻舎
2005年
どーこの誰かは知らないけれど~、本屋の美術書コーナーをフラフラしていたら、平積みになっていたこの本にキュキュキューッと引き寄せられてしまった。それほどにこの人の作品は異様であると同時に強烈な磁力を持っている。
ロレッタ・ラックス(この本以外では「ルックス」の表記が一般的か?)は1969年東独生まれの女性写真家。今月の「美術手帖」誌の表紙にも使われている。
単色を基調にしたシンプルにして人工的な風景(空とか壁とか原っぱとか)をバックに子どもが佇んでいる。そのほとんどは合成のようだが、着ている服と配色を完全に合わせてある。
子どもはほとんど無表情で、画面全体は恐ろしいまでの静謐さと、夾雑物が何もない清潔さに覆われている。あまりにも人工的なので絵画のようにも見えてしまうし、一方髪の毛や瞳の反射する光はリアルなので写真にも思えるが、ひょっとしたら人形を撮ったようにも感じられる。
子ども自体はカワイイと言い切れない何かビミョーに崩れたところがあって、それが不気味であり他者を拒む生硬さを感じさせている。
「この世のものには思えない」ところは宗教画のように浮き世離れしている。
実際には背景と子どもを合成した写真らしいのだが、同じ写真でも杉本博司の作品は人形が被写体にもかかわらず生身の人間にみえるのに対し、こちらは人間を撮りながらまるで人形めいて見えるという、まるで正反対になっている。不思議である。
杉本博司の「肖像写真」同様、衝撃作であることは間違いない。
今度、国立近代美術館でやる「ドイツ写真の現代」にもこの人の作品入っているのだろうか。ぜひナマ写真みたいぞ。
【関連リンク】
美術手帖2005年11月号
公式サイト
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