ヘンデル「ジュリアス・シーザー」:演出に口アングリ
注-グラインドボーン音楽祭のヘンデル『ジュリアス・シーザー』(TV放映タイトル。原題は『ジュリオ・チェーザレ』)の感想はこちらです。
サブタイトル:エジプトのジュリオ・チェーザレ~二期会ニューウェーブオペラ劇場
演奏:二期会&バッハ・コレギウム・ジャパン
会場:北とぴあ
2005年10月15日
二期会とBCJがバロック・オペラをやるのは二回目。前回はモンテヴェルディだったが、今回はヘンデルの『ジュリオ・チェーザレ』……なんだけど、題名と一部の人物の名前が違っているのは何故? 歴史ものなんで史実通りにしたのか?
エジプトではクレオパトラとプトレマイオス(トロメーオ)の姉弟による王位をめぐる争いがあったが、シーザー(チェーザレ)がエジプト上陸すると、すかさずプトレマイオスはポンペイウス将軍の首を献上して、御機嫌伺い。クレオパトラは色仕掛けで攻略しようと策謀するのであった--。
ここにポンペイウスの妻と息子の復讐が絡んでくる。しかも、妻はえらいベッピンさんで会う男会う男みんなハアハア(^Q^;)してしまうという美貌の持ち主の一方、息子はまだ若くて優柔不断という設定。
他にも将軍やら部下やらが入り乱れ、さてどうなるのであろうか--。
というような話を演出は現代のヤクザ、あるいは大恐慌時代のマフィアの抗争に見立てて、衣装や背景のスクリーンの映像もそれ風である。黒服の強面のにーちゃんも多数出て来たりする。将軍の息子はチャラチャラしたヴィジュアル系ミュージシャンみたいだ。
一方、ヘンデルったら当時はカストラートを好んで重用--なので、初演の時は主立った男の役はみなカストラートなのであった。
で、二期会にはカストラートはいない(あたり前じゃ!)、どころかカウンターテナーもいない(詰まんな~い!)ので主要な役はぜーんぶ女、シーザーも悪役のプトレマイオスもメゾソプラノが担当。で、これを見てるとまるで宝塚みたいなのであった。(というか、「なるほど宝塚というのはこんな感じか」なんて納得しちゃったりして)
それだけに特に中心な役の二人のメゾソプラノは大変そう。ソプラノなら難しい曲は見せ場 \(^o^)/という感じなのだが、逆に「難しそうですね、ご苦労さん<(_ _)>」なんて感慨を抱いてしまうのである。
それにしてもヘンデルの作品は長い!長過ぎです。あの名曲『メサイア』でさえ、私なんか「長いな……(\_\;」と思って一度しか公演行ったことないのだが、このオペラも夕方五時開演で終わったのが九時二十分ぐらい(間に二回休憩)。しかも、これで途中はしょってあるという。
まあ、そもそもバロックオペラというのは、近代のオペラよりは歌舞伎の方に近いような娯楽だったのだろうから、仕方ないかも知れんが。
だが、そう思うとよけいに演出はひどい!ひど過ぎ。ネットの感想で演出を誉めているものなど一つもなかったし、会場で偶然会った友人もけなしていた。
戦争をヤクザの抗争風に捉えた解釈はまあよいとしても(その観点からも中途半端だが)、ラスト、シーザーとクレオパトラが結ばれてローマ帝国も栄えてメデタシメデタシの所を、911以後のアメリカ帝国主義の台頭と重ね合わせて皮肉ったメッセージを出しているのは、思わず口アングリである。
あのねー、バロックオペラったら、美男美女が美声を聞かせて、英雄やら悪漢やらお姫様やら神様が入り乱れてくっ付いたり離れたりするのを楽しむもんなの! 今の世界の現実に重ね合わせて風刺したつもり、なんてのは勘違いも甚だしい。
まあ、今時の演出家はそんな話バカらしーと思うかも知れんが、そういうモンなんだからさ。勘弁してよ……(=_=;)
という訳で、演出がなければもうちょっと印象良かったかも知れん、という公演であった。なお、歌手は完全なダブルキャストだったんで二日目がどうだったのかも気になった。BCJの演奏は目立ち過ぎず引っ込み過ぎず、微妙な線を保っていたが、ヘンデルのファンにとっては物足りなく感じたかも知れない。
来年はヴィヴァルディの『バヤゼット』の来日公演!本場モンだ!頑張って見に行くぞー。
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えすどぅあ
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