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2005年11月21日 (月)

「亀も空を飛ぶ」:できるならほっときたい世界の醜さ

監督:バフマン・ゴバディ
出演:ソラン・エブラヒム
イラン・フランス・イラク2004年

在イランのクルド人監督によるイラクのクルド人の少年たちの物語。クルド人を題材にした映画というと昨年『少女ヘジャル』を観て恥ずかしながら号泣したのであったが、あの映画がトルコでのクルド問題を扱っていたのに対し、こちらは国境を隔ててトルコとは反対側のイラクのクルド人難民キャンプが舞台である。

時期はアメリカ侵攻の直前の2003年、戦争孤児のサテライトは米国かぶれの口八丁手八丁の少年。要領良くて電気工事の知識もあるため近隣の村の大人からは重宝がられ、さらには孤児仲間を統率して地雷を掘り出しては大人に売る(最終的には国連か武器商人の手に渡る)のであった。
さて彼は難民キャンプに新たに来た、幼児を連れた美少女に思わずホの字(*^-^*)ポッ。何かと世話を焼こうとするが、彼女はそっけない。おまけに両腕を失ってはいても喧嘩は強いコワーイ兄が控えているではないか。さて、彼の恋の行方は……。

……という話じゃなーいっ(>O<)
いや、まあそういう話でもあるんだけどね。青少年が異性に(*^-^*)ポッとしてしまうのは万国共通変わりなし。さらにロクな大人が徹底して登場しない(というか、彼らの生活に金の面以外では関与して来ない)のも、チャーリー・ブラウンのピーナッツ・ブックスあたりと共通するものがある。そういう青少年のジタバタがコミカルに描かれてはいる。

子どもたちはみんな素人らしいが達者なもんである。特に小さい子にはビックリ。どうやって演技させたんかと不思議に思うぐらいだ。

しかし一方、その背景の世界の描写は悲惨なものである。腕や脚のない孤児たちは珍しくないし、彼らが地雷を掘り出す場面は思わず冷汗かいて「やめてくれ~」と叫びたくなる。さらにさらにもっと恐ろしい話が明らかに……。
そして、全ては悪い方へと転がっていく。米軍が実際にやって来た時の少年たちの反応はそれまでの予想を裏切って意外なものである。特に主人公のサテライトと泣き虫少年の対照的な態度が皮肉だった。

見終って、最近NHKのBSで放送された子ども労働者の悲惨なドキュメンタリーも思い出したりしてウツになってしまった。さらにドヨーンとした岩波ホールの祟りか、右肩がキシキシと痛んだりしてもう最悪だー。

ということで、主観点を一点マイナスにしたのは、できれば知りたくなかった醜悪な世界の実相を垣間見させられてしまったからである。そして、見なかったふりをしてコソコソ逃げ出したかったのだ。

見たくない、ほっときたい世界の醜さが、美しい映像で幻想的に描かれる。これはまことに困った映画なのである。


主観点:7点
客観点:8点

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