「Aerial」:元祖不思議少女の行く末
Kate Bush
発売:Columbia 2005年
「ロック界随一のお嬢」(笑)「元祖不思議ちゃん」「小悪魔」「天才少女」であるケイト・ブッシュの12年ぶり新作アルバム。かつての彼女ったらそりゃあ、他の追随を許さぬ独自の世界を築いていて、私など思わず敬遠していたほどだ。そんな彼女が出産・育児を経た変化は……確かに昔のトンガった所は微塵もない。特徴あったボーカル・スタイルもかなり違っている。
例えれば、以前はカッコよくてキメキメのデザインを送って来てた友人の年賀状が、親になった途端にいきなり自分の子どもの写真をドーンと使ったものに変わってしまった、という衝撃に似ていると言ったらよいだろうか。
--という風になんとなくモヤモヤしたものを感じていたのだが、「ミュージック・マガジン」誌12月号での小野島大のアルバム評を読んだら、それがキチンと書かれていて納得。
ケイトと同じように出産・子育てを経て復活したパティ・スミスと比較して論じているのだが、パティの時には良い結果の方に転んだのに対し、彼女については凶と出て「パッと耳を引きつけ、酔わせる官能が足りない」「何度聴いても印象に残るメロディやフレーズがない」としている。
さすが評論家、私の感じたことが見事に論理化されて表現されていると感心した。ウムウムと頷いて読んでしまった。
しかし一方、少子化問題が叫ばれる現在、「育児にかまけている間にアーティストとしては詰まんなくなった」というような言説は、ますます少子化に拍車をかけるものとしていかがなものかとも思った。(←これは冗談です)
実のところ、「Aerial」は結構愛聴している。
出産や子育てというビッグ・イベントがなくても中年になればやはり気力体力共に変わってくるし、感性も異なってくるだろう。逆にずっと若い頃と同じ事を続けていれば「いつまで繰り返しやってんだか」と言われたりして、ミュージシャンとしては辛い所である。
昔のような先鋭的な部分はなくなったにしても、その代わりに別の表現が生まれて来たらそれでいいじゃないかと思う。
まあ、これは私が昔のケイト・ブッシュにこだわりがないせいもあるだろう。
で、結論は「お嬢」も年取れば中年女になる……という事を言いたかったのか(^^?)ハテ
いずれにしてもこのCD、繊細極まりないサウンドプロダクションとジャケットのアートワークは見事の一言。これだけなら五つ星だろう。(全体としては四つ星)
ところで「Washing machine」というフレーズを、なぜか「もしもし」と聞き間違えて「ええっ(!o!)こりゃ日本語?!」と驚いた私は逝ってよしですか。
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