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2005年12月 2日 (金)

「ドイツ写真の現在」:はたして「現実」はカメラの向こうか、こちら側か?

サブタイトル:かわりゆく「現実」と向かいあうために
会場:東京国立近代美術館
2005年10月25日~12月18日

ドイツの「今」の写真家を10組紹介する美術展。そのうち知っているのは、ベッヒャー夫妻とロレッタ・ルックス、ヴォルフガング・ティルマンスぐらいだ。

目を引くのは証券取引所や駅の群衆を巨大な作品で捉えたアンドレアス・グルスキー。空疎であることと雑多な空間のダイナミズムが全く違和感なく同居している。ただ川岸の光景を撮った「ライン川」も素晴らしい。

同じく空疎な風景といえばハンス=クリスティアン・シンクもド迫力。人も車の姿も全くない巨大な橋や道路--まるで古代ローマや中国の遺構のように巨大写真の中に捉えられているが、実際は東西ドイツの統一プロジェクトで作られた新品なのだという。その静謐さはもはや「幽玄」の域に達していて、何やら鬼気迫るものまで感じられる。

今イチだったのは、報道写真の複製などをズラーッと並べたミヒャエル・シュミット。ドイツ現代史を知らないと理解不能のような? 背景を知らずに見ただけで何かを感じさせるような作品でもないしね……。
木や建物の小品を配置したハイディ・シュペッカーは、展示場所と方法が悪かったんじゃないのと疑いたくなるような分からなさであった。

一番、何かを感じたのはトーマス・デマンドだった。実物大の紙の模型で歴史的事件や報道写真の現場を再現して撮影したそうで、一見ただの変哲もない廊下やバスルームである。だがなんだか得体の知れぬ気配が存在する。何かが起ったはずなのだが、もはやそれがなんなのかは分からない--というような。
特に「テラス」という作品は、食事の終わったばかりの皿が並んだ食卓がある無人の部屋(?)を写したに過ぎないのだが、何かちょっといかがわしげな絶妙な照明といい構図といい、コワい怪談話を聞いた後に誰もいない部屋に入った時のような雰囲気がある。思わず何度も眺めてしまった。

同じ券で別の階のアウグスト・ザンダー展も見ることができて、新旧ドイツ写真の世界を堪能。満足できた。

それにしても、よくよく考えるとフツーに素直に「人間」を撮ったものはW・ティルマンスぐらいしかないのはどうしたことだろう? もっとも、彼の写真も人とモノや風景が全く等価に捉えられていて、そこに対象への思い入れの差はないように思える。(例えば、アラーキーとは似て非なる、って感じ)
アウグスト・ザンダーとはその点でまことに好対照である。L・ルックスは同じ「肖像」といっても完全に意味が違うし……。いや、やっぱり同じことか。
キュレイターがわざとこんな選び方をしたのか、それともこれがドイツの写真の現状なのだろうか?

--と首をひねってたが、もしかしてこちらの文章のようなことを感じたのかも知れない。自分でもよう分からんが。


ところで、同じドイツ美術関係ではゲルハルト・リヒター展(「ドイツ写真の現在」のチラシに割引券が付いている)もヒジョ~~~に見に行きたい。とっても見に行きたいのだが、私の家からだと川村記念美術館は片道2時間半以上--下手すれば3時間近くかかってしまう。往復6時間だよ(>_<) あんまりにも遠いんで、途中で見知らぬ異邦の千葉の地でパッタリ倒れたりしてしまったらどーしよう(^o^;
ムムム……そんな辺鄙な所に美術館建てんなーと言いたいぞ。


【関連リンク】
以下で実際に作品がみられる。
東京国立近代美術館
美術館.com特集ページ

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「ドイツ写真の現在― かわりゆく「現実」と向かいあうために」 1989年秋にベルリンの壁が崩壊し東西が再統一されて以来、ドイツは今までにない変革期を迎えた。それまで、行き交うことがなかった西側の民主主義文化と東側の社会主義文化が融合し、全く新しい文化が生まれたのだった。 今回の展覧会は、その新しい「ドイツ」で生まれているドイツの写真を、「現実」にたいしてさまざまなアプローチを試みている十人の作家たちによって紹介するというもの。 実際に観てきた感想としては、まず個性豊かな十人の作家がそれぞれ全く... [続きを読む]

受信: 2005年12月 5日 (月) 23時35分

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