第6回ヘンデル・フェスティヴァル・ジャパン「ヘイマーケットのヘンデル」
演奏:キャノンズ・コンサート室内管弦楽団
会場:浜離宮朝日ホール
2008年12月6日
ヘンデル没後250年を目前に控えて、早くもヘンデル二連チャンとなったこの土・日。その1日目である。
チラシには「開演3時、終演予定7時」なんて書いてある(-o-;) 風邪を引いていた私はこの連チャンに備え、用心のため前日は職場を早退してさっさと寝たのであったよ。
会場に行ってみると、空席がポツポツとある。前々回のHFJオラトリオ公演の時は満員御礼だったのに~。これも不景気の影響か--と焦ったが、どうやらこの日は大きなオペラの公演が複数重なっていたので客が分散してしまったらしい。
今回の公演は演奏会形式で「1724年初演稿ノーカット 本邦初演」とのこと。物語としては以前に見たヴィヴァルディの『バヤゼット』と全く同じである。この題材は人気があって、当時の作曲家によく取り上げられたという。パンフの解説によると、ヘンデルはイタリア・オペラの先行作品を知ったこともあって、上演前に急いで内容を変えたらしい。
チムールの皇帝タメルラーノは捕虜にしたトルコ皇帝のバヤゼットの娘アステリアを一目見てホの字状態となり、他国の王女と結婚が決まってるのに庇護しているギリシアの王子アンドローニコに口添えを頼む。しかし、既にアステリアと王子は相思相愛の仲であった……。
ヴィヴァルディ作の方は男女の四角関係による恋愛模様が中心で、しかもそれぞれの歌手によるアリア合戦の様相を呈していた。で、似たようなものを予想して行ったらかなり違っている。歌われる内容は「復讐」とか「憎しみ」とか「怨念」とかドロドロとして大変に血生ぐさい。しかも、アリアも当然あるが、レチタティーヴォもかなり重用されている。こりゃ、意外だった。
タイトルロールの山下牧子はレチがなんとなく滑らかさに欠けるような気がしたが、トーシロの耳なんでよく分からず(^-^; ただ、第3幕では怒りにブチ切れて歌う、えら~く難しそうな長いアリアがあって(聴いてるだけでも冷汗が出そう)、それを歌い切った時には拍手喝采ブラボーとなった。
陰の真の主役とされるバヤゼットはずっとHFJに関わってきた辻裕久が歌った。とはいえ、第1・2幕は控えめな役回りであまり目立たず、終盤に至ってようやく悲劇の主人公としてドドーンと出てくる印象である。
アステリア役の佐竹由美はリリカルな感じの声質で、今一つ個人的には好みではないんだけど、やはり第3幕まで来ると力強さが出てきた。特に、アンドローニコとの二重唱は、他の曲がみんな殺伐とした内容の中で唯一ロマンチックな愛の歌(と言ってもやはり「死」が出てくるが)で、ウットリ(*^^*)と聞かせてもらった。
波多野睦美はアンドローニコ役。レチの歌い口も滑らかで、第1幕最終のアリアは説得力があった。で、背丈が大柄な所に白いパンツスーツがとってもよくお似合い。颯爽とした男役でしたのよ。
あの、波多野さん……(v_v;)モジモジ
萌 え て エ エ で す か ~ っ O(≧▽≦*)Oキャー!イヤ~ン!!
……ああ、この歳になってこんな顔文字を使ってしまうとは、いと恥ずかし
第三幕の怒濤のような悲劇でグワーッ盛り上がった後に、バヤゼット父娘を除いた四人で歌われる終曲は締めくくりにふさわしく素晴らしかった。もう満足ですっ。
ヘンデルの俗っぽい部分と壮大な作劇がうまく結びつき、いかんなく魅力が発揮された公演だったと言えるだろう。
楽器の方は小編成の弦に木管が絡むという構成で、指揮は渡邊孝がチェンバロを弾きながらやってて、前々回のオラトリオ公演同様見事なものだった。
チェロは留学先から戻ってきた、お久し振りの懸田貴嗣。この通奏低音コンビはずっと出ずっぱり弾きっぱなしで、あたかも講談師が机を叩く扇子の音の如く絶妙のタイミングで歌と絡むのであった。身を乗り出すようにして譜めくりをしていたもう一人のチェロの多井智紀もご苦労さん。
ところで懸田氏、留学前より貫禄が付いてきた……? あ、いや、どうでもいいことですね、ナハハ(^^ゞ
終わった時には7時半近かった。聴いているだけでもさすがに疲れた。しかし、他のブログを読んでいると、途中で抜け出して二股かけて別のオペラへ行った人もいるらしい。スゴイねー。こうなると体力勝負でしょうか(^^?
さて、来年のヘンデル・イヤーの予定が出ていたが、ホグウッド指揮のオラトリオはもちろんだが、一番の注目は「チェスキー・クルムロフ場内劇場」の公演。これだ~っ
演目は名場面集みたいだが、装置・照明・衣装・ジェスチュアなど全て当時のままで演奏とのこと。……ということは、ローソク照明でやるのか? とにかく、チケットは売り出したら即買いに決定。
楽しみ楽しみ(#^.^#)
【関連リンク】
《アリスの音楽館》
極めて詳しい感想です。