「永遠なる薔薇」:枯れゆく花の感触
サブタイトル:石内都の写真と共に
会場:ハウス・オブ・シセイドウ
2005年12月7日-2006年1月29日
以前、石内都の『Mother's』という写真集を見た時に、何やら言葉では言い表せない葛藤のようなモヤモヤしたものを感じた。
それは自分の母親の遺品(口紅や下着)やあるいは皮膚の傷などを接写(距離的にはもちろん気持的にも)したものだった。母というものに対する相反する感情がモワーッと湧き上がってきたのを覚えている。
さて、銀座の資生堂本社のギャラリーで彼女の薔薇の写真を展示しているというので、行ってみた。
資生堂ビル--立派である。ピカピカしている。私のように化粧品に縁のないものはそもそも入りづらい。おまけに警備員も立ってる。不審者と認定されたらどーしようなどと不安に思いつつ、なるべくキョロキョロしないようにして潜入。休日だが人は少ない。
一階には写真のほかにビデオ作品も展示。カラーにモノクロ、大きさも色々。もちろんぜーんぶ薔薇の花を接写したものだ。花は満開のやつからヨレヨレに枯れかけたのまである(ほとんどは盛りを過ぎた時期のもの)。
例えばメープルソープの花の写真だと古典的な造形美が追求されているが、こちらはあくまでも花びらの感触にこだわる感じだ。薄オレンジの枯れた花を接写したものなんか、遠くから見ると人間の皮膚のように見える。少なくともそこに基調としてあるのは、「美」ではないことは確かだ。
二階にも作品があるというので、資料室と一緒になっている展示室へ上がる。こちらは資生堂関係の商品やデザインの歴史の展示もあり、薔薇にちなんだ香水や色などが紹介されている。
香水は実際に匂いをかげるのがミソ……ではあるが、実は人間の鼻はいっぺんに三種類までしか判別できないらしいので、端からかいでみてもムダなのであった。
引出し式の風変わりな展示ケースがあって、そこには母親が昔使っていた香水(Zenというヤツ)があったので懐かしくなって、思わずかいでしまう。母親は資生堂製品のお得意さんだったのだ。
--そうした中で、シワシワしてザラザラして渦巻いている石内都の薔薇は、懐旧と共に過去へと向かいいつまでも古びていくようであった。
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