ヴィヴァルディ「バヤゼット」:クラシック版「噂の真相」を求む
神奈川県立音楽堂開館50周年記念
演奏:ファビオ・ビオンディ&エウローパ・ガランテ
会場:神奈川県立音楽堂
2006年2月19日
ヴィヴァルディ晩年のオペラを世界初録音したF・ビオンディが同じキャストを伴って来日!ということで話題になったらしく、早々に満員御礼売切れとなった公演である。
もっとも完全なヴィヴァルディの作品というわけではなくて、他人の作品を含む既存のアリアを継ぎはぎして新作にしてしまう「パスティッチョ」というやつらしい。どれが彼の作った曲かはハッキリしていないそうだ。
ストーリーはというと、ダッタンの皇帝がトルコに勝利、その皇帝バヤゼットを捕虜とするが彼の娘をひと目見てホの字に。自分の婚約者を放り出して求愛するが--てな感じで、歴史物の体裁を取っているが要するに男女のごたごたした三角、いや四角関係の話である。
しかし今回の公演ではなぜか演出家とカウンターテナーが降板、代わりにメゾソプラノが入ったためにバヤゼット以外は全て女という布陣になった。まさに濃ゆ~い女声の競演という感じで、客席からはブラボーと拍手が飛び交った。
ただ本来はカウンターテナーだった王子役はなぜか情けない歌(「私は苦しい」とか「もうだめだ」とか「死にそう」とか)が多く、しかも代役のメゾの人は線の細い声質なために若干、拍手が少なめだったのは仕方ないだろう。
一方、演出家の後釜には日本人の名前が入っていたが、ほとんど演出は無きが如し。オリエンタル風の衣装がとても豪華だった事を除けば、舞台装置も簡素だし演奏会形式でも全く構わなかったんじゃないかと思えるほどだ。
もっとも会場のステージは狭くて大がかりな演出なんか、やりたくても出来そうになかったが。
ビオンディはかつては若手イタリア古楽勢の進出の先鋒といった立場の人だったと思うが、この日も熱のこもった、まさに弾き振りというやつで、ヴァイオリンの弓を振り回しながら指揮していた。途中で飛び跳ねたりなんてことも……(^o^;
しかしである、私は二つの理由でどうも今回の舞台にのめり込めないのを感じた。
一つはPAシステムを使っていたのではないかということだ。会場は五十周年記念というだけあって、古くて狭苦しいホールである。収容人員は約1100人だというからオペラシティと大して変わらないようだが、面積で比べると三分の二ぐらいのもんだろう。
その事を差し引いたとしても音が聞こえ過ぎる。拡声装置を使っていたとしか思えない。別に使っていたとしても一向に構わないのだが(北とぴああたりはいつも使用しているはず)、どうも音のバランスが悪く聞こえてとても気になった。
もし装置を使っていないとしたら、この音楽堂は音がやたらに伝わる驚異の構造だとしか言いようがない。
それからもう一つの理由は、バロックの器楽演奏から入って来た私のようなリスナーには、もろに「オペラっ(^◇^)」という印象で濃ゆ過ぎるのであった。周囲の聴衆のほとんどはバロックファンというよりは正統的オペラファンのようで--私の隣の客は「まあ、見たこともない珍しい楽器だわ」(テオルボのことを指していたと思われる)などと言っていた。そういうファンとはやはり嗜好が異なるように思えた。
その証拠に翌日のエウローパ・ガランテ単独の演奏会(非声楽)は客が入ってなかったらしい。この日満員だったのは声楽ファン、オペラファンが集まったせいだろう。
という訳で薄味系バロック愛好者の私は、周囲の熱狂にはノれずに「もうお腹いっぱい」感だけが残ったのであった。
3時に開演して6時40分終了。疲れた……往復にも時間かかったし、寒い日だったし。
演出家とカウンターテナー降板の理由は「極東の島国に来るのが面倒くさかったためだ」と掲示板に書かれていたがそこら辺の真相はどうなんだろう。求むクラシック版「噂の真相」。
あと、昔のホールだから女子トイレが少なくために長~い行列ができていた。中で「和式一つ空きました」などと「交通整理」やってたのにはビックリよ。
【関連リンク】
公式HPより
あらすじが紹介されている。
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