有元利夫展
会場:小川美術館
2006年2月20日-3月4日
新聞の夕刊の展覧会を紹介するコーナーの小さな記事で初めて知って、あわてて見に行った。
有元利夫は1985年に38歳で亡くなった画家(24日が命日だったとか)。主な作品は油彩だが中世・ルネサンス美術のフレスコ画を模したタッチで描いている。
そのほとんどは男女のどちらともつかぬ長衣をまとった人物がいる、静謐な感じの作品である。
クラシック音楽のファンだと、日本のアリアーレというマイナー・レーベルのCDジャケットに使われているので知っている人もいるだろう。
日曜とはいえ雨の日で、小さい美術館なのに(彌生画廊の運営してるトコらしい)人が結構いて驚いた。やはり根強いファンが多いのか。
回顧展という事で作品はいっぱいあって見応えあり。小さいものだけど木彫もやってたのを知って驚く。遠くから眺めたり近くにくっ付いて見てみたりいろいろやって鑑賞。
画廊の人が他の客に説明しているのを、背後からこっそり接近して耳ダンボで聞いてみると、フレスコ画を模すために一度塗った絵具を削ったり、わざとカンバスをぐじゃぐじゃに丸めてシワをつけたりしたらしい。
そう知って見ると、なるほど確かに絵具がはがれ落ちたような所や全体的にボヤーっとかすれたような絵がある。
私は昔、ジョットとかチマブーエのフレスコの宗教画が嫌いだった。なんか平板な感じがして詰まんなかったのである。しかし中世やルネサンスの音楽を聴くようになってから、逆にその要素が宗教音楽の恍惚感に似ているように思えて好きになった。(人間の好みなぞいい加減という証明)
有元利夫の絵のタイトルは音楽関係のものが多い。「ロンド」とか「カノン」とか--。やはり作者も同じような事を感じていたのかもしれん。(もっとも、美術館ではタイトルを掲示してなくてあとで調べて知ったんだけど)
BGMにずっとサティっぽいピアノ曲(と思ってたらハープらしい)が流れてたのだが、なんと彼の作った曲なのだという。CDも売っていた。
一番気に入った絵は、満月の夜に森の外れで地面に円を描いている人物がいる「一人の夜」というのだった。ルソーの「カーニバルの夜」に夜の森の感じがちょっと似ている。しかし、その夜空の暗い色彩のかすれ具合が何ともいえず絶妙である。
それからタイトルは分からないが、白い長い棒(?)を持った人物を描いた小さめの絵も気に入った。有名な「花降る日」などもじっくり鑑賞できて大満足であった。
【関連リンク】
小川美術館(彌生画廊)
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