「ジャーヘッド」:今どきの戦争事情
監督:サム・メンデス
出演:ジェイク・ギレンホール
米国2005年
『アメリカン・ビューティー』で話題となったS・メンデス監督の新作は湾岸戦争を扱っている。
主人公は軍人一家に生まれ、海兵隊に入って厳しい訓練に耐えて狙撃兵となり、いつでも出撃オッケー。そして遂に待ちに待った戦争が!
戦争キタ━━━('∀')━━━ッ!!!!
てな調子で喜び勇んで中東の地へ……行ったはいいが、なかなか宣戦布告は行なわれずひたすら砂まみれで待機すること半年なのであった(=_=;)
しかも、基地の中に籠って駐留先の現地人とは一切交流することはない。何のために行ってるんだか分からない。
まあ、こうもやる事がないとマジに「捕虜でもいたらイヂメルぐらいしか楽しみはないわな」とか「基地の外で暴れて発散するしかない」とか納得しちゃうわけですよ。
そういうダルな今どきの「戦争」の一面があます所なく描かれ、何事もない日々への兵士たちの焦燥感をうまく見せている。退屈な時間をモロにそのまま描いたら観客も退屈しちゃうはずだから、これはやはり演出の手腕だろう。
そしてうまく兵士たちの感情に観る側も共感できるようになるのだ。
だから、終盤のクライマックスの主人公たちの、冷静に見れば理不尽な主張に思わず同感してしまい、つい「そうだっ!やらせてやれよー」と思ってしまう。
この場面でのピーター・サースガードはホントに上手い。他にもジェイミー・フォックスとかクリス・クーパーとか出演しているが、群を抜いている。それまでの冷静なイメージの人物像が一変する場面だが全く不自然ではない。早くも再び今年度助演男優賞候補にしちゃうよ。
--と、ここまでほめて来たが、全体を通して見るとやっぱり不満が残る。なんだか全体に煮えきらないのだ。
この映画内で言及されているために、よく引き合いに出される『地獄の黙示録』や『フルメタル・ジャケット』はそれぞれ、前者は感傷的なロマンティシズムの極致、後者は虫メガネでアリを観察する如きの冷静さ、に徹していてその極端さゆえに面白く感じる。
だが、そのどちらでもない『ジャーヘッド』は「だから、どーだってのよ」と言いたくなってしまう。
それに冒頭と最後に入る主人公の独白「平和な暮しをしていても銃の感触は忘れない」(←よく覚えてない)みたいなのは、ストーリーと合わないような気がするんだが?
こんなんじゃオリバー・ストーンみたいな暑苦しいオヤヂから「なーに言ってやがる。そんな事は人殺してから言え~」なんて一蹴されちゃうだろう。
結局、最後に残るのは「戦場に行って可哀想なオレ」という自己憐憫なのであった。
だが、残念ながら戦争とは相手がいてこそ行なわれるものである。そのような自己憐憫を相手側はどのように受け取るだろうか?「そうだ、彼らは可哀想だったんだ」と納得するだろうか。(ま、「相手の事など最初から想定外です」と言われればしょうがないんだけどさ)
下ネタやらお下劣な罵倒が多いのでお上品な方は避けた方がよいかも。さらに○○○の焼却場面は……(>_<) ビデオが出ても絶対に食事中は見ない事をオススメする。
評判になってた、兵士たちが『地獄の黙示録』を観る場面は確かに笑えた。『グレムリン2』でグレムリン達が映画鑑賞する場面を思い出してしまったのは私だけか。
この映画と『スタンドアップ』を観ると、絶対に見習いたくないアメリカの「底国」ぶりが直裁に描かれていてウツになる。そのせいか両作とも客の入りは最悪(\_\;
主観点:7点
客観点:8点
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