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2006年4月25日 (火)

「ヒストリー・オブ・バイオレンス」:まこと、この人は--!

監督:デヴィッド・クローネンバーグ
出演:ヴィゴ・モーテンセン
米国・カナダ2005年

デヴィッド・クローネンバーグと言えば、かつてヘンタイ監督の名を欲しいままにしていた人である。しかし近年はパッとせず、『イグジステンズ』はなんかフツーっぽい作品だったし、前作の『スパイダー』は逆に、レイフ・ファインズ扮する少年時代トラウマを抱えた男が暗い部屋の床をぶつぶつ言いながら這いずり回っているという、退屈の一歩手前なものだった。(もっとも、あまりに異様過ぎて退屈なんで、却って私はその年のベストの中に入れてしまったほどだが)

かつては英国のケン・ラッセルと共に並び称され、「ケンちゃんクロちゃん」とヘンタイ監督の世を謳歌していたというに、いつからこのようにマトモな世の中になってしまったのであろうか。嘆かわしいことじゃのう。(老人の繰り言風)

さて、この新作はどうも変である。何が変と言って、脚本と実際の作品が全く違うイメージになっているのだ。
粗筋だけをたどれば、明らかに現代版西部劇である。
田舎町で食堂をいとなむ男。賢明で美しい妻と子ども二人とともに、幸福な家庭を築いている。(冒頭はわざとらしいほどに幸福な夫婦・家族の姿が描かれる)
しかし、彼の暗い暗い過去を知る男たちが登場して正体を暴こうとする。家族にまで危害が及ぼうとするのを知って、彼は男たちを殺し、さらには決着を付けるために親玉の元に乗り込む……。
ラストはハッピーエンドとなる--はずだったんだけどねえ。

どうもそうは思えない。暴力描写はあくまでも即物的かつグロテスクで、アクション映画のスッキリ感とは無縁だ。
家族は彼に疑念の眼差しを向ける。それは疑いというよりは否定である。
結末はかろうじて幼い娘の行為で救われて、和解を迎えるはずなのだが、イカンともしがたく後味の悪い沈黙が支配している。

何よりも、冒頭で見せられる強盗シーンの血だまりと、彼が家族と自分を救うために行なった終盤の暴力による血だまりが、全く同じように見えるではないか。
脚本の意図に反して(多分)、ここにあるのは暴力の感触だけなのである。

唯一、問題なのはW・ハートのボスがあんな近距離で銃を打ち損なったことだろう。だから出世できないんか?(^O^)

一見、優男風のヴィゴ・モーテンセンはハマリ役と言えるだろう。その他、エド・ハリスやウィリアム・ハート、奥さん役のマリア・ベロなど脇を固める役者たちも申し分なく好演・怪演である。

そして監督のクローネンバーグは……先日の『マタイ受難曲』の中の言葉、ということはつまり聖書の中の言葉なのだが、それにならって「まこと、この人はヘンタイであった!」と言っておきたい。


主観点:8点
客観点:8点

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コメント

クローネンバーグですか! 私大好きです!! 1番「ヴィデオドローム」、2番「裸のランチ」 でも、最近観てません。この映画ヘンそうですね。でも、今Lマガをみてみると……ああ!4月28日まで!!
ちょっとムリそう。二番館にくるのを待つか。 

投稿: しの | 2006年4月26日 (水) 20時35分

しのさん、返事遅れてすいません。
この映画は往年の作品に出てきたようなヘンな「モノ」は出てきませんが、エド・ハリスとウィリアム・ハートは相当にヘンであります。
「家族」とか「夫婦」の話として見ると、相当に痛い感じかも。『スパイダー』もそういう意味ではコワい映画なんで睡眠をたっぷり取った日に見てみてくだせえ。(^-^;

投稿: さわやか革命 | 2006年4月29日 (土) 10時37分

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