ハネケ祭でワッショイ その2:かくしてパズルは完成した
ミヒャエル・ハネケ映画祭『71フラグメンツ』
監督:ミヒャエル・ハネケ
出演:ガブリエル・コスミン・ウルデス、ルーカス・ミコ
オーストリア1994年
前回の混雑ぶりに驚いたんで、今回は一時間前ぐらいに整理番号を貰いにいく。充分余裕の番号だったんで、ホッとした。
だが、実際に入場してみるとなんと四分の一ぐらいは空席が残っていた。思わず脱力してしまう。どうやら『セブンス・コンチネント』は「破壊」シーンだけが話題になって見にきた人が多かったようだ。なんだよー(~ ^~)
さて、今回の作品も実際の事件を元にしているそうだ。大学生の男が銀行で強盗するわけでもなくただ銃を乱射し、最後に自分を撃って自殺した。(これは映画の冒頭に簡単な説明文が示される)
それから後は様々な人々の日常の描写がバラバラに挿入されていく。現金輸送の警備員、不法入国した少年、銃を盗む男、銀行員の娘を持つ老父、パズルに興じる学生たち、養子を迎えようとする夫婦などなど--さらに不安な国際情勢を告げるテレビのニュースが頻繁に入る(←これは『セブンス~』と同様)。
一人暮らしの老父が娘に電話で愚痴るのは少々聞いててイライラするが、大したことではない。
夫婦が養子に迎えようとする少女はちょっと「大丈夫かいな?」という感じだが、大したことはない。
ストリート・チルドレンのような難民少年の行く末は不安だが、大したこともないだろう。
警備員の中年男は仕事のストレスですり減っているようにも見えるが、きっと大丈夫--だろう。
執拗なまでの日常の描写が積み重ねられ、その軌跡が最後に一点に集中する。誰が死者となり誰が生者となったのか。誰が加害者で誰が被害者なのか? その決定的落差はどこに生じていたのか?
しかし、その悲劇もボスニア情勢と芸能ニュースの狭間で忘れ去られていく運命なのだ。
登場人物が多過ぎるんで、肝心の学生たちを描いた場面では誰が誰やら分からなくなってしまった。(汗)
退屈といえば退屈である(日常描写ばかりだし)。次に誰の場面が出てくるか分からないから、気を引きつけられると言えば言えないこともないだろう。
日常的な物、単純な動作、それらをただ反復して撮り続ける事に監督は執着しているように思える。逆に最も暴力的な場面を直接描写することはないので、そういう意味では肩すかしである。
いずれにしろ真摯で、嫌味あふるる作品には違いない。
ところで、見ている途中にどこからか「サラッサラッ」という変な音が聞こえて来た。なんだと思ったら隣に座った男の時計の秒針の音だった。男が腕を下に置いて見てればいいのだが、手を顎の下で組んで見ていると(頻繁にそうしていた)、ちょうど私の耳を直撃してくるのだった。今どき、あんな大きな音がする腕時計があるんかと驚いてしまうが。
ハネケ作品は劇伴音楽は使わないし、無音の場面も多い。もう段々と気になって気になって集中して見ていられなくなってしまった。片耳塞いでも聞こえてくるし……。ご本人は気にならないのかね?慣れてるから。
うっかりド真ん中の座席に座ってしまったんで、移動も出来ないし、かといって「時計がうるさい」なんて言ったら映画館中に響き渡ってしまうだろう。
マイッタよ(T_T)
皆さん、映画を見る際には腕時計にもご注意下さい。
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