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2006年5月14日 (日)

「ホプキンソン・スミス ビウエラ リサイタル」:ダ埼玉の汚名は挽回

会場:松明堂音楽ホール
2006年4月29日

H・スミスは米国出身のリュート・ギター演奏家。これまでヨーロッパを中心にソロやアンサンブルで活躍して来た。

今回はルネサンス期のスペイン及びイタリア音楽をビウエラで演奏するコンサートで来日。
ビウエラというのは当日配られたリーフレットによると「16世紀スペインにおいて、高度に洗練された音楽を演奏するために作られた宮廷風ギター」だそうである。(当時のギターは現在のより小型)

当日登場したH・スミスは、外見は厳格な古典哲学の教師風--但し赤いネクタイを除けば、という印象だ。
演目はルイス・ミラン、アロンソ・ムダーラなどスペイン勢作曲家に加え、同時期イタリアのフランチェスコ・ダ・ミラノも加えて、舞曲など小品が中心である。

元々、彼は奔放な演奏をするというタイプではなく、それぞれの作曲家のスタイルを着実に弾いていくという感じだが、今回のコンサートも同様だった。
ただ、個人的にはこの手のスペインの宮廷音楽って洗練の極み--というか、洗練され過ぎちゃって却って今ひとつ面白さに欠ける所がある。
という訳なんで、アンコールで以前にCDを出しているP・アテニャンの曲をやってくれた時、「あー、やっぱりおフランス物はええのう」なんて思っちゃったのだった。

さて、松明堂は定員百人に満たない極めてこじんまりとしたホールである。数年前の前回の来日ではダウランドを同じ会場で演奏してくれた。
その時は、曲の途中でベリベリとデカい音を立ててバッグのファスナー(?)を開け閉めするオバハン(多分)がいたのもイライラしたが、もっとひどかったのは曲の合間にひどい咳をゴホンゴホンと会場全体に響き渡るようにし始めた男だった。
いくら「出物腫れ物所嫌わず」と言ってもあまりにひどい。スミスは調弦しながら咳が終わるのを待っていたが、あまりにいつまでもゴホゴホしているので、なんとやおら立ち上がって傍らに置いてあった封を開けてないミネラル・ウォーターのボトルを持ってその男の席まで行って差し出したのであった!

なんたる事だろうか、さすが文化果つる地・埼玉は所沢である! この一件の少し後に、大阪にてあの世界的人間国宝にして生ける世界遺産ことグスタフ・レオンハルト翁のコンサート最前列で「オバハンがスマップ着メロ鳴らし事件」というのが勃発し、それの陰に隠れてあまり話題にならなかったが、非文化地帯ダ埼玉の印象を一気に深めたのであった。

しかし、今回は満員御礼の松明堂では何事も起こらず、スムーズにコンサートは進んだ。前回の埼玉の汚名はそそげたのである。 バンザーイ\(^o^)/


ついでに、H・スミスの演奏でおすすめディスクは
Charles Mouton:Pieces de Luth(ASTREE)
1979年録音のものだが、未だに愛聴している。ムートンの曲のディスクは他の演奏家でもあるが、やはり彼のが一番だろう。CDの解説書に別人のように若い写真が!


【関連リンク】
「海の星」より《ホピーとビウェラ》
別のホールでの公演の報告ですが、実際に楽器をやっている方のようなので極めて詳細な内容です。

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