「メルキアデス・デストラーダの3度の埋葬」:期待が大き過ぎるのもいかんね
監督:トミー・リー・ジョーンズ
出演:トミー・リー・ジョーンズ、バリー・ペッパー
米国・フランス2005年
トミー・リー・ジョーンズの初監督作品にして、カンヌで主演男優賞と脚本賞をとった作品--ということで、もう最初っから見に行くぞーと決めて上映開始のはるか前に早々に前売券を買っといた。
が、忙しくてなかなか行けずにとうとう上映最終週に、仕事終わった後に恵比寿まで足を運ぶ羽目に……(x_x)トホホ
さて、それだけ期待大だったわけだが、見た結果はというと……ムムムムム。
男優賞は妥当だと思うけど、脚本の方はどうかなという感じ。脚本家は『アモーレス・ペロス』と同じ人だというのを後から知った。あの映画、私にはどうにもダメだったんだよねえ。
内容は、前半と後半でスッパリ分かれている。
前半はメキシコからの不法入国者メルキアデスが新人の国境警備員のマイクに誤って射殺されてしまう経緯と、カウボーイ仲間のピートがマイクをとっつかまえるまで。
だが、なぜかわざと脚本は複数の立場から時間軸を混乱させて描いている。だからボーッとみているとわけ分からなくなってしまい、「一度目の埋葬」がいつ誰によって行なわれたのかもハッキリしなくなってしまうだろう。
さらに致命的なのは、こういうカッコつけた(と断定してしまおう)構成にしたせいで、ピートとメルキアデスの友情の描写が断片的になってしまい、観客に大した思い入れを与えないこと。ここで、感銘を与えてくれないと後半のピートの行動に説得力がなくなってしまうのだ。
後半に行くと展開は単線的になりメキシコでのピートとマイク(とメルキアデスの死体)のロードムービー風になる。
ここに来るまでも長いが、その後も長い。おまけに暴力や死体のグロい描写が観ていて非常にこたえる。
手錠で引きずり回す、蛇に噛みつかれる、コーヒーをぶっかけられる--同時期にクローネンバーグ、ハネケと「暴力的」な映画を見たけど、実にこの作品が一番生理的に耐えられなかった。もうやめてくれー(ToT)
結末は……前半のメルキアデスという男の人物描写があまり伝わって来なかったので、「はあ、そうだったんですか」という感じで終わってしまった。
ブログや掲示板では感動した!という感想でいっぱいだが、全然感動しなかった私は冷血か、暴力描写でへたばってたか、ひねくれ者のどれかに違いない。
事前の期待が大き過ぎたせいか、全く不満足だった。T・L・ジョーンズの役者ぶりには文句はないけどね。もっとも、最初から「殺気」に欠けてて結末が見えてしまうのは問題か。
監督としては、いい場面(メキシコのうらぶれた酒場とか)がいっぱいあるんだけど……。笑わせたい場面なんだろうけど笑っていいのか分からない、という困った場面が幾つかあった。どっちかはっきりさせてくれい。
このギジェルモ・アリアガという脚本家の作品は今後避けるようにしようっと。
レストランの年増ウェイトレスの人はどこかで見たことがあると思ったら、『ホミサイド』の初代女刑事のケイだったようで。役作りでそうしてるのかも知れないが、だいぶフケましたなー。最近、放映された『CSI』にも母親役で出ていたはず。
大昔流行ったフレディ・フェンダーの曲が出て来て懐かしかったよ。
主観点:5点
客観点:7点
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