「カーズ」(字幕版):最強のクリエイター集団に脱帽平伏
監督:ジョン・ラセター
声の出演:オーウェン・ウィルソン、ポール・ニューマン
米国2006年
自慢じゃないけど、クルマのことは全く分かんない。免許持ってないし。車種とかもよく知らん。事故や犯罪目撃しても「えーと、えーと、黒っぽい色の乗用車でドアが4つあったかな(?_?;」ぐらいしか証言できんぞ。
というわけで、ピクサーの新作の『カーズ』もあんまり期待してなかった。久々に監督として登板のJ・ラセターはカーキチだそうだが、私は上記のようにクルマに興味ないし、おまけに予告がさらに見る意欲を減退させてくれる。
だーって、あなた、自動車に目鼻ですよ! なに、こりゃ~っ(-o-;)てなもん。全然、期待できん。今イチ詰まらなそう。でも、まあ今までピクサーアニメは欠かさず見てきたからなあ……という消極的な理由で観に行った。字幕版を選んだのは、やはりなんと言ってもポール・ニューマンが声をやっているからである。
で、結果は--。
わたくしが悪うございました。m(__)mガバッ
ピクサー&ラセターは神と認定してよしっ。ヽ(^^)/\(^^)、
才能はあるが傲慢で自己チューの若者が、他者との関りの中で自分を見直し考えを改める--という物語は極めて定番な昔からある「感動」ものであり、もはや使い古されきっているとしか言いようがない。(例えばP・ニューマンの『ハスラー』一作目・二作目ともにそういう話)
そんな古臭い物語がどーしてここまで面白いのかっ!そして新鮮なのか?
ひたすら感心するだけだ~。
冒頭の華やかなレース場の場面。本当に全部、観客から始まって何もかもがクルマ尽くしになっていて笑っちゃうが、きらびやかで華々しく興奮が伝わってくる。
一転、主人公がつかまっちゃうド田舎のさびれた町の煤けた建物やサビついたりホコリ被ってるクルマ達の脱力な描写もある意味すごい。
しかし、その周囲の自然の本当に美しいこと。木々や滝の水だけでなく、なんか「空気」の美しさまで描いているのはオドロキ。主人公同様に観る者も感動してしまう。要するに、視覚的に全て説得力がある。これは当然のはずのことだが、なかなかに実現するのは難しいことだ。
徐々に夕闇が迫るハイウェイ、夜の中を疾走する蛍光色の暴走車(?)、畑の中で眠るトラクター牛(爆笑)、その他にも色々印象的な場面がある。
登場人物じゃなかった登場車物のキャラクター設定もツボを心得てるし、定番の物語を退屈させずに見せる脚本もよくできている。主人公が普通の自動車じゃなくてレーシングカーだというのも色々あるんですね。(ライトがないとか、未舗装のボコボコ道を知らないとか)
しかも、「古い」だけじゃない。地方の町の商店街がさびれていくという日米共通の問題(というより、日本が米国の後追いをしているのか)という現在の新しいネタについてもちゃんと訴えているのだ。
そう、それから「勝って何が悪い」とか「儲けるのがどうしていけないんですか」みたいな風潮にも。最後は泣けちゃったよ。
残念なのは、車やレースについての小ネタ大ネタ満載なのが、ほとんど理解できなかったこと。知識のある人は百倍以上楽しめるだろう。IMDBのトリヴィア欄を見るとレースのクラッシュ場面は実際のレースのものを再現してるとか、町のそばの巨大な岩石群が変な形してるなと思ったら、キャデラック・ランチ(スプリングスティーンの歌にもなっている)を模している、なんてあってビックリ。
というわけで、これからはピクサー・アニメがどんなに信じられないようなモノを主人公にしたり題材にしても絶対に観に行く事にしよう。
で、次回は「パリのレストランに住むグルメなネズミ」ですか……?
取りあえずは、吹替え版もそのうち見てみたい。
個人的に嬉しかったのは、音楽にランディ・ニューマンが久々に登板ということ。しかも、途中で聞いた事があるようなヴォーカルの歌が--と思ったら、なんと彼のオリジナル曲をジェイムズ・テイラーが歌っているではにゃあか(!o!)
ということは、R・ニューマンがまたアカデミー賞の候補になれば、授賞式で彼のピアノをバックにJ・テイラーが歌うなんて場面もありだっ。 \(^o^)/ よーし、今から録画チェ~ック決定。
ピクサーに全く興味のなかった私が見るようになったのは、ランディ・ニューマンのおかげである。『トイ・ストーリー』が公開されてた時に、たまたまつけていたTVで一部を紹介しているのを見かけた。
それはオモチャのバズが自分が玩具だとは信じず、空を飛べると思ってまさに飛ぼうとする場面である。他のキャラクターと観客はみんな彼が飛べないと分かっている。その心情を代弁するようにR・ニューマンの哀愁に満ちてちょっと残酷な歌声が流れるのだ。また、それが映像にピタリとうまくはまっていた。それで、『トイ・ストーリー』を見てみようという気になったのである。
あのTVをたまたま見なくて、彼の歌声を聴かなかったら、私は今でもピクサー・アニメなどバカにして見ていないだろう。偶然とは不思議なもんである。
主観点:9点
客観点:8点(車に興味のないお子様にはどうかな?)
【関連リンク】
「Feel so war?」より《カーズを観たずら》
うむむ、レースの裏側には色々あるんですねえ……。
「水曜日のシネマ日記」から《子供たちへの配慮が感じられる。『カーズ(日本語吹替版)』》
字幕版と吹替え版の差についての記事。ますます吹替え版が見たくなってきた。でもって、その後また字幕版が見たくなったりして(^=^;
確かに、本当に字幕版の主人公はどーしようもなくイヤな奴なんだよねえ。
「中身のない空っぽのカップ」と「ただの置き物」--むむむ、含蓄あり過ぎです。
【追記】
吹替版の感想こちらに書きました。
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コメント
こんにちは♪
TB、ありがとうございました♪m(_ _)m
こちらのレビューを拝見して、
文中に私のレビューも紹介して頂いている事を知り、
大変、光栄に思っております…(T_T)
映画って、観る人によって、感じ方が違うのは当然の事だと思うのですが、
やはり、自分と同じような感想を持った人のレビューを読むと、
共感出来た事が、とても嬉しく感じますし、
全く違った感想を知ると、新たな発見や、
違った捉え方を教えてもらえる事もあったりします。
私の感想を読んで頂く事によって、
「こんな見方をする人もいるんだなー」くらいにでも感じてもらえたなら、
幸いに思います♪
そうそう。
『カーズ』の日本語吹替版ですが、
主役のマックィーンを担当しているのは、
土田大(つちだひろし)さんという、プロの声優業の方です。
なので、決して、下手だったというわけではないのですが、
出だしの、「僕は速い!」と自分に言い聞かせるシーンからして、
ちょーっと、字幕版のマックィーンとイメージが違ったかなー(^^;
と、私は思いました。
投稿: テクテク | 2006年7月29日 (土) 12時54分
テクテクさん、わざわざお越し頂きありがとうございます。
遂にガマンできず、今日吹替え版を見に行ってしまいました。
細かい感想については新たに記事を立てて書くつもりですが、吹替え版を先に見てたら点数を一点低くつけてただろうなあ、と思いました。
見る上で、テクテクさんの感想が大変参考になりましたですよっ(^-^)/
投稿: さわやか革命 | 2006年7月30日 (日) 22時25分
昨日レディースディなんで、観てきました! 正直『ゲド戦記』より数段おもしろかったです。「なんか子ども向き〜?」と二の足踏んでた私が悪うございました。スジはだいたい想像がつくのに、笑わせて泣かせて、画面も懲りまくり! さすがピクサーです。
しかし! どの映画館でも吹き替え版しかやってないんですよ!! 映画館に行くと「字幕版は終了しました」とテプラが貼ってあるのです。うむむ、そんなに大人を呼び込めなかったのか?
投稿: しの | 2006年8月10日 (木) 02時30分
しのさん、どうもありがとさんです。
こちらのシネコンでも、字幕は最初の一週間ぐらいしかやってませんでした。せめて夕方からは字幕にしてほしー。
新宿まで字幕版を見に行ったらアベックばっかり(^o^;でしたよ。
そもそも他の夏休み映画に比べて宣伝が少なかったように思います。「ゲド」の半分もやってくれれば……(T_T)
投稿: さわやか革命 | 2006年8月11日 (金) 21時08分