「光の魔術師インゴ・マウラー展」:なんびとも光を直視する事はできない
会場:東京オペラシティアートギャラリー
2006年7月8日~9月18日
照明デザイナーの作品展である。照明--ということは、光を放っているんである。つまり、作品をずっと見ていると目がチカチカしてきてしまうってことだ。
しかし、よくよく考えると日常生活で照明器具をしげしげ見るという事はほとんどない。人はそこから発する光の投影の下で暮らしているに過ぎない。
とすれば、このように照明をインスタレーションのように見てしまうのは邪道ではあるまいか?
などと考えてしまったので、照明そのものよりもそこからちょっとずらしたようなインスタレーションの方が面白かった。
白い部屋の中で影が揺れる「スウィンギング・バルブ」や、ホログラムで作られた赤い電球(正面からはハッキリと見えるが、少し斜めに見る位置を移動すると消滅してしまう)とか、鏡の中に何本もロウソクが見える(--ように見えているだけで、本当に存在するのか分からない)「フライ・キャンドル・フライ!」など。
それ以外だと、小さな変な格好をしたスタンド群が楽しかった。思わずピクサーのロゴマークを思い出してしまう。それから赤いリキュールの瓶を何本も使った「カンパリ・ライト」は家に欲しくなってしまった。LEDを使ったテーブルやベンチも素敵。
チラシに使われている羽の生えた電球を使った照明は高い天井に下がっていてよく分からんかった。残念。
見た人が驚いたという「ポルカ・ミゼリア!」は、確かにキレイで迫力あるが「掃除が大変そう」なんて思っちまったよ、トホホ(x_x)
しかし、どの作品よりも驚いたのは、6~7人で見に来ていた大学生らしきグループ(美大生か?)。声をあげてキャアキャア言ってるのはまだしも、作品に直接手で触るは、館内で(作品のまん前で)ケータイで喋るは……。
お前らは、小 学 生 の 遠 足 か !(怒)
監視係のおねーさんが心配して後をついてきたし(作品壊したら大変だー)、警備員のおじさんにも注意されてた。私も作品そっちのけでしばらく彼らを観察してしまった。
これこそゲーム脳とゆとり教育と日教組とジェンダーフリーとユダヤ人の陰謀の弊害である!いったい日本の未来はどうなるのであろうか?--などと、バカな政治家みたいなことを言いたくなってしまったよ( -o-) sigh...
さて、恒例の二階の収蔵作品展は「素材と表現」。これがまた見応えが大ありであった!
清宮質文という人の木版画「月と運河」はすごく小さな作品なんだけど、ひしゃげたようなレモン色の月の下に運河があり、そこに平べったいクジラみたいな変な魚がいて、なんだか寂しいようなちょっとユーモアがあるような独特の雰囲気がいい。
それから池田良二という人も全然知らなかったが、4枚の連作がキーファーみたいな禍々しさと重量感がある作品で(あんなにデカくはないが)これまたよかった。
かと思えば、クロディーヌ・ドレの「無題」は幾つもの薄い紙を丸めた固まりなんだけど、それがまるで剣を振り回して戦っている人々に見えるというもの。とても面白い。入口の部屋の若手の作品も色々バラエティに富んでいた。
これで、充分千円の元が取れました。
ちなみに先ほどの学生グループは、どうも収蔵展の出口から入って入口の方から出るという逆回りをしていたみたいだったんだけど、大丈夫だったんかね?
【関連リンク】
公式HP
*清宮質文関連
大川美術館のHPより下段の三作が彼の作品。こちらも雰囲気がたまりません。
《清宮質文・初めてのコレクション》
読んでちょっと泣けました。(v_v)
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