「天使と罪の街」上・下:探偵はやっぱりツライのか
作:マイクル・コナリー
講談社文庫2006年
もう最近は小説はほとんど読んでない。読んでるのはこのマイクル・コナリーとイアン・ランキンぐらい。昔よく読んでたハードボイルド系ミステリーは原作者が終了させたのもあるが、本国で出版されているのに日本で訳されなくなってしまったものも多い。日本ではやはりミステリー・バブル時代は終わってしまったようだのう(T_T)
で、待ちに待ったボッシュ・シリーズの新作デターッ!
刑事を辞めて私立探偵へと転業したボッシュの活躍が前作であった。今度はいきなり「あの人」が死んじゃっててビックリ。その死の謎の解明を依頼される。
最初の数十ページを読み始めて、過去作品のボッシュ物でない『ザ・ポエット』(扶桑社文庫)がかなり絡んでいると分かって、いったんこちらを読むのを止めて『ザ・ポエット』を再読し始めた。出版されてから約十年、覚えているのは「えーとえーと、シリアルキラー物で新聞記者が主人公でFBIが出て来て……それからどうしたかな(?_?)」状態だったからである。
で、再読してみて思ったのは、こりゃ傑作です!ということ。いやー、面白かった。こんなに面白かったとは……忘れてたよ(火暴)
終盤の主人公の行動のイタさも余計に身にしみた(自分が年取ったせいかね)。そのイタイ部分もちゃんと途中で伏線が張ってある。あっという間に読み終わって、ひたすら感心したのであった。
さて、また本作に戻ると『ザ・ポエット』の犯人が復活か?という話になる。物語はFBI側の三人称と、ボッシュ側の一人称(私立探偵としての定番)で交互に語られる。中には数ページごとに双方が入れ替わる場面さえある。もちろんそれは作者が計算してのことだろう。
謎のほとんどが解明された後のクライマックスとなる嵐の描写は見事だ。極めて映像的な描写だが、恐らく映画にしたとしてもこのような迫力あるものにはできないだろう。
そして最後の最後に全てのピースが完全に当てはまる。その結果はやはり苦いものだ。
文章にしろ構成にしろストーリーにしろ、何を取っても文句なしの一作であった。
さて、これで私立探偵遍歴編は終わりという事になるんだろうかね。やはり探偵ものは書きにくかったのだろうか--なんて作者の内部事情が気になる。
あと、作中にイアン・ランキンの名前がちょこっと出てきて、やはりM・コナリーも愛読してるのだろうか、などということもまた気になった。
これから読もうという人は絶対に『ザ・ポエット』を先に読むことをお勧めする。だって犯人が完全にバラされちゃってるからさ。あれほどの傑作を読まずにネタバレじゃあ勿体ない。
折しも、扶桑社文庫では『ザ・ポエット』を増刷したらしく本屋で平積みになっていた。麗しき連係プレーですねえ(感動)。
ただ、タイトルの付け方は扶桑社時代の方が良かったと思う。だーって、あなた『夜より暗き闇』に『暗く聖なる夜』に『天使と罪の街』ですよ。五年経ったらどれがどれやら絶対区別付かなくなってるって。
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