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2006年10月25日 (水)

「安徳天皇漂海記」:奇想天外にして細心なる美

著者:宇月原晴明
中央公論新社2006年

この作者の本は全く読んだことがなかったが、大森望・豊崎由美のメッタ斬りコンビによる「第135回 直木賞レース予想(前編)」を読んだら、紹介されていて面白そうだと思ったのだ(直木賞は結局予想通り取れなかった)。

『平家物語』で涙を誘う安徳天皇の死の驚くべき顛末、さらにそれが源実朝へと繋がり、その暗殺と彼の首の行方の謎を解き明かし、ついでに元寇へと続く。これが第一部で、第二部はクビライ・カーン治世下の元の帝都へと飛び、マルコ・ポーロが登場。黄金の国ジパングの真実の姿を明らかにする。
これが全く齟齬もなく見事に展開していく。まさに力業としかいいようがない。しかも美しく幻想的である。久々にこの手の小説を読んで深い満足を味わえた。

作中では実朝を描いた小林秀雄・太宰治、さらにシブサワの『高丘親王航海記』をも下敷きにして引用している。
だが、私は直接に言及されてはいないがもう一人の作家を思い浮かべた。それはもちろん諸星大二郎に他ならない。

だって、だって、かわいくてコワいあの姿はまさに……あんとくさまぁ~~(>O<) (既に恐怖の叫び)


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