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2006年10月21日 (土)

「エンドゲーム」:ベケットを見ながら考えた--ことは何もない

作:サミュエル・ベケット
演出:佐藤信
出演:手塚とおる、柄本明
会場:シアタートラム
2006年9月22日-10月1日

新作戯曲紹介『ベケットを見ながら』
舞台:とある劇場
登場人物:観客A、観客B、掃除人

劇場でベケットの芝居「エンドゲーム」が始まる。
A(Bに囁いて)「なあ、今クロヴはなんて言ったんだ?あの喋り方よく聞き取れないよ」
Bは眠りこけていて返事が無い。やがてBが目を覚ます。
B「なあ、ハムって王様なのかなあ。自分でそう言ってたっけ?」
今度はAが寝ている。Aの返事はない。
交互に目を覚まして舞台を眺めては質問するが、その度に相手は眠っている。それを繰り返しているうちに遂に芝居は終わってしまう。

終幕後、客席で感想を述べ合うが、互いに見ている場面が違うので話が通じない。
A「まるで二人の掛け合いがコントみたいだったなあ。でも、ここで笑っていいのかよく分からないのが難だけどさ」
B「核戦争による世界の終末後の茫漠たる寂寥感みたいのがよく表現されてたよ。退廃の極みだねえ」
A「始まっても客電ずっとつけっぱなしで会場がコウコウと明るかったのには驚いたよ」
B「客席が暗過ぎてコックリと舟をこいでた客が大勢いたね」
A「役者の名前は四人あるのに、二人しか出なかったのはなんでだろう」
B「え? ベテラン勢二人はゴミバケツの中から時々顔を出してたじゃないの」
A(焦って)「ゴミバケツの中?」
B「そういや、手塚とおるは明晰な演技でよかったよ。若いのに、老いた主人の役がよく合ってたなあ」
A「柄本明は愚かなんだか頑迷なんだかよく分からない正体不明さを、地だか演技だか区別がつけられない演技で、観客をケムに巻いてたなあ。見たところ、柄本がツッコミで手塚がボケだよね」
B「ええっ、柄本がトチったのを「はい、どうぞ」とフォローしてた手塚の方こそツッコミだろう」
A「むむっ、そんな場面あったっけ? 彼がトチったのは望遠鏡落とした場面だろう」
B「げげっ、そんな場面あったっけ?」
A「お前ちゃんと観てたのか?」
B「お前こそ!」
しばらく言い合いが続く。

A「なあ、おれ達同じ芝居を観てたのかなあ……」
B「さあ、どうかなあ」
A「いつかベケットの芝居をちゃんと観られる日が来るだろうか」
B「来るかなあ」
考え込む二人であったが、劇場係員の掃除のモップに容赦なく追い立てられて退場する。


【関連リンク】
ちゃんとした感想を読みたい人はこちらへ
「散策する見物」

見事「玉砕」した人の感想
「萬風堂夜話」

終演後に行なわれたポストトークの内容の紹介。客が眠ることについての言及あり。
「観劇日和」

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