パリ・シャトレ座「レ・パラダン 遍歴騎士」:祝祭というよりは「お祭り騒ぎ」?(一応ホメ言葉)
作曲:ジャン・フィリップ・ラモー
演出・振付:ジョゼ・モンタルヴォ、ドミニク・エルヴェ
演奏:ウィリアム・クリスティ&レザール・フロリサン
会場:文化村オーチャードホール
2006年11月4日~8日
オペラ『レ・パラダン』
遂にキタ━━━('∀')━━━!!!!
でも人気のサンドリーヌ・ビオーは
コネ━━━━━━(・A・)━━━━━━ !!!!!
という事で早速、オペラ日本公演では定例の歌手の直前降板があったわけだが、一部には交替はとっくに決まっていて、プロモーターはそれを分かっててチケットを売ったという噂も流れている。これが本当なら別名「詐欺」というヤツだろう。
また座席が多数売れ残りB席¥25000も当日券で入手できたらしいのだが、そこは3階席の一番奥だったらしい。
--とすると、はて?発売当日に完売だったC・D・E席(¥20000~\9000)はどうなったのかなー、と。立ち見席はなかったようだから、屋根裏とか通路の穴から覗くような場所だったんだろうか(^^?)
さて、ラモーはバッハの同世代でルイ15世の宮廷作曲家となった人。『レ・パラダン』はその晩年(1760)の作品で「オペラ・バレ」というジャンルに分類される。
私は初めて聴いたのだが、そもそも歌唱の部分はあまり多くなかった。普通のオペラのアリアみたいに長々と歌手が心情を歌うなんて場面はほとんどない。演奏のパートだけがかなりの割合を占めるのを見ると(聴くと)、元々オペラと言っても歌手が占めるのは一部分だけで、大がかりな舞台装置や舞踏も使ったスペクタクルだったのだろうと想像できる。(それとも、この公演では余計な歌の部分はカットしていたのか?)
ストーリーは極めて他愛のないもので、権力と金と地位に物言わせて醜悪なヒヒオヤヂが若い娘っ子と結婚しようと彼女を幽閉するが、若くてピッカピカの美青年騎士と手に手を取って遁走。激怒するオヤヂを、騎士に恩義がある妖精(性別は女のはずだがテノールが演じる(^^;)がだまくらかして二人の仲を認めさせてメデタシメデタシという話。
この公演では当時の設定を生かしてか?映像とダンスをフルに活用したものになっていた。映像はCGを駆使した大がかりなものだったし、バレエ、コンテンポラリー、ヒップホップ、ストリートダンスなど完全に現代のダンスを様々に駆使していた。
ソロの歌手にはその分身とでもいうべきダンサーが一人ずつ付いていて、心情を代弁するように傍らで踊る。その他にもステージ上には大勢のダンサーや合唱の歌手たちが入り乱れて登場。
さらに背後の上下二段に分かれたスクリーンにはCG映像が投影され、青空やらロココ調庭園やら地下鉄やらが現れたかと思うと色んな人物(中には全裸ダンサーズも)や動物が飛び交い、しかもそのスクリーンの中から本物の人間が飛び出して来て映像と区別が付かなくなる(もっともこの手法自体は昔からあって--えーと宇宙座だっけ?なんかもやってたはず)。
そして最後には一同浮かれ踊る中を本物の全裸のダンサー四人が登場。庭園の彫像のポーズを取ったりして観客の目を奪った。
ソロ歌手も一緒に踊ったり走り回ったりしていたが、中には合唱の人にも関わらずダンスの方もかなり達者に踊っていた人がいたのは驚いた(ツルピカ頭の結構年齢が高い人)。
また途中で人形振り(←ていうのか?専門用語知らず)を5~6人でやって見せる場面があったのだが、その中の黒人の女性ダンサーの動きがもう信じられないほどに人間離れしていて呆気に取られるほどだった。専門家はあそこまで身体の動きをコントロールできるのかと思わず感心。
愛を歌い上げる場面では、男女だけでなく同性のカップルも自然に登場するのはさすがフランスとこれまた感心した。
--と、これだけ盛り沢山に色々と見るものがある上に、さらに私は前から十数番目の列という比較的前の方だったので、視角に入るのがせいぜいステージいっぱいなために字幕を見るには顔をいちいち動かさないとダメなのはキツかった。
というわけで正直なところ
音楽なぞ聴いている余裕はなかった!(木亥火暴)
事前に初日の感想を読んでそういう話は耳にしていたにも関わらず、である。折角のクリスティ&レザール・フロリサンなのにねえ……(T_T)
見る方に懸命で耳の方は完全お留守状態。また舞台上は常に賑やかなので、ソロ歌手が歌い上げる場面で相方のダンサーと二人きりになってしまうと、却って退屈に感じてしまう。歌手の聞かせどころが一番ツマラン状態になってしまうのは困ったもんだ。
私の位置的にはオーケストラピットの中は全く見えず、クリスティの後頭部だけがよ~く見えた。音は全体的にやや引いた感じで、まあオーチャードホールで古楽器がこんなもんなら予想よりマシだと思ったが、休憩時間にピットの中を見たら本数は多くなかったもののマイクが立っていた。恐らく控えめにPAシステムが使われていたのだろう。
全体的な感想を言うと、若々しくて猥雑でエネルギッシュで楽しい舞台だった。三万五千円払ったモトは完全に取れた。退屈だった部分はどこにもない。
だが、私は自問自答してみる……これが本当に私が期待していたものだったろうか、と。正直に言えば、魂を根こそぎ奪うようなマジックや、帰りに東急前の交叉点をスキップして帰りたくなるような「見てヨカッタ」感はそこにはなかった。
○○○ランドや××園に行けばどんな人間でも楽しいだろう。そこには万人を楽しませるような仕掛けがちゃんと存在するからだ。だからと言って、私個人はそれを進んで求めるかというとそういう訳ではない。
こちらの感想にあるように、まさに「退屈はしなかったのですが、感動もあまりありませんでした」という一文がピッタリな心境だ。
全てが盛り沢山で一分の隙もなく埋め尽くされている。あたかも一瞬でも観客を退屈させるのを恐れているようだ。歌手が独唱する傍らでダンサーがその内容を解説するように踊るのは、そのダメ押しか。きっと歌だけではみんな退屈してしまうだろう、歌だけでは万人を動かすそんな説得力はない--とでも考えているように思えた。
また、恐らく劇中最大のハイライトであったとおぼしき、城が一瞬にして宮殿に変わる場面が単に映像が切り替わっただけというのは、いささかガックリした。音楽の付け方をみれば、当時は観衆の度肝を抜くような大きな仕掛けが繰り広げられたのだろうと想像つくだけにである。
なんだか、別にこの演目である必要はなかったんじゃないかって気がするんだよね。他の作曲家の他の作品でもOK、だったみたいな--。
『バヤゼット』に続き、またも絶賛多数の中をケチ付けてしまったわけだが、まあそれだけ「ひねくれ者」の証拠なんである。
次は北とぴあでハイドンの『月の世界』だ~(^o^)/
【関連リンク】
公演途中の時点での感想ブログのリンク集
《SEEDS ON HATENA》「レ・ザール・フロリサンのレ・パラダンのレポをリンクしています」
演出とダンスについて詳細に分析。私にはとてもここまで読み取る能力はありません。
《アリスの音楽館》
絶賛の意見も紹介。
《LINDEN日記》「ラモーは最高のダンスミュージック」
非常にキビシイ批判です。
《パレアナのリトルハピネス》「パリ・シャトレ座の「レ・パラダン」」
オペラファンからの率直な感想
《ふくきち舞台日記》「《レ・パラダン》」
「結局何を観たのかと帰り道々考えてしまった」というのは同感。
《ひだまりのお話》「音話§ラモー『レ・パラダン』シャトレ・プロジェクト」
しかし、他のネット上の意見を読んで一番驚いたのは「音楽で眠くなった。あのオーケストラは延々とバロックを弾き続けて飽きないのか不思議」という意味のことを書いていた人がいたことである。
い、いや、私は聴いてるだけなんだけど全く飽きませんよ(^-^; 演奏してる人たちもきっとそうでしょう。
ミクシィの日記で見かけたんで上記のリンクには入っていないが、あんまりと言えばあんまりな意見ではある。
ま、バロック音楽なんて退屈ってのが一般的な認識ってことですかね。
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コメント
めずらしく普通なトラックバック、ありがとうございます。いえ最近ヘンなのが多いもので…。
私はD席15000円でしたが、3階中央ブロック最後列でした。左右の最後列あたりがE席だったのではないでしょうか。3階の中も、細かくランクわけされてるみたいでしたけど。
双眼鏡を持っていったのですが、舞台全体を見たかったので使いませんでした。舞台が遠かった…。映像なのか生なんだか、みたいな時もあり。ハダカの時だけ双眼鏡を使うのもイヤラシイ感じだし…ってんで、生のハダカも遠くてよく分かりませんでした。なはは。オーチャードは縦長すぎ。
投稿: ふくきち | 2006年11月11日 (土) 23時43分
おお、早速のコメントありがとうございます。
|私はD席15000円でしたが、3階中央ブロック最後列でした
となると、他の情報も突き合わせると3階中央の後ろは一列刻みで値段が違っていたのかも知れませんね。なるほど……。
前の方は人物はクッキリハッキリ見えましたが(汗)、ステージの「面」の部分が全く見えないのでそれも痛し痒しでした。傾斜がかかったあたりが一番相応しい座席だったようですね。
投稿: さわやか革命 | 2006年11月12日 (日) 00時04分
トラックバックありがとうございます。こちらからもトラックバックさせていただきました。
“過激な演出”と呼ばれるものに対する許容度は高いほうだと思っています。今回もまあそんなものだろうと考えて出かけたら、そういう以前の問題だったような気がしました。
本文でも書いたように、もう少し“整理”すれば、とは思いますが、所詮は来日公演として受け入れる立場で、我々の反応が反映されるわけでないのがもどかしいところです。
また読ませていただきます。
投稿: HIDAMARI | 2006年11月12日 (日) 21時50分
> HIDAMARIさん
そうですね、過激さというのが問題ではないと思います。
あまりに色んなものが詰め込まれ過ぎていて、次々と追いかけていくのに精一杯で、気がつくと終わっていて、ふと考えると何を見ていたのかわからなくなってしまうような感じでしょうか。
今後もよろしくお願いします。
投稿: さわやか革命 | 2006年11月14日 (火) 08時15分