「合唱ができるまで」:音楽の形成される場に立ち会う
監督:マリー・クロード・トレユ
出演:クレール・マルシャン&パリ13区立モーリス・ラヴェル音楽院合唱団
フランス2004年
ちょうど二年前に同じ映画館で観た(場所は移転しているが)『ベルリン・フィルと子どもたち』を思い出した。しかし、あのドキュメンタリーでは公演に参加する学生たちのインタビューや社会背景の紹介があったが、こちらは何もない。そもそも練習場からカメラが外に出る事すらない。
ただ、アマチュア合唱団の練習風景をひたすら映すだけなのである!
大人組はホントにシロートなおぢさんおばさんの集団。悪いけど、見ていて「これでいいなら私でもできそう」なんて思っちゃうほどなのである。(^O^;
年少組は小学生の集団。先生の話を聞いてる間もよそ見したり身体をもぞもぞ動かしたり。
年長組はハイティーンの若者たち。こちらは基礎はできているようで、楽譜も読めるようだ。
この三つの集団がなんとシャルパンティエとハイドンを合唱するというのである。
えーっ、シャルパンティエ! マジですかってなもん。
二人の女性指導者による三つのグループの練習が延々と続く。ナレーションはなし、説明のテロップもほとんど入らない。あまり上手いとは言えない歌声が続くのを聞いていると、体調の悪い時や睡眠不足の時だったら寝てしまう可能性が大である。
だが仕方がない。地道、単調、忍耐……これこそがまさに「指導」の本質だから。そういう点では音楽関係だけではなく、教育関係者向きかも知れない。
一緒に観た友人の話によると、学校のクラス経営に合唱というのは有効なのだそうである。今の若いモンは仲間との対立を避けるが、合唱みたいなものを全員でやろうとすると対立せざるを得ない。そして、そういう事を経過した後にクラスの結束力が強くなる、というのだ。
なるほど、学校でクラス対抗合唱祭なんてのを開催する所が多いのはそういう訳だったのかと納得。
それにしても子どもや若者のグループに比べて、中年組があまり上達しない様子を見ると、やっぱり何かを習うのは大人になってからじゃ遅いんだのう、と悲観的になってしまうのであった。(+_+)トホホ
とはいえ、ユーモラスな場面も幾つもある。ガチガチに緊張したおばさんとか、楽譜が全く読めてないのを先生に見破られてしまう子どもとか……。
途中でちょん切られたようなラストを不満に思う人も多いようだが、終盤の通し稽古の場面を見ていて、ああ『ベルリン・フィルと子どもたち』と同じにこの作品も本番を見せる気はないんだな、と思った。あくまで合唱が「できるまで」が中心であって、「できてから」の成果がどうこうということがテーマではないのだ。
まさしく「できるまで」を体験する映画なのである。
ついでに、自分では歌ったりしない純粋なバロック音楽鑑賞者としては子音の発音と、身振りを付けること、テキストの内容に非常にこだわっているのが興味深かった。こういう指導法は一般的なんだろうか?
主観点:8点
客観点:6点(睡眠不足な人にはすすめません)
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