「王の男」:自由か不自由か誰が知ろう
監督:イ・ジュンイク
出演:カム・ウソン
韓国2006年
韓国の歴史上最悪の暴君と言われる王と二人の芸人の葛藤を描いた宮廷劇。
一旗揚げようと一座を飛び出した綱渡りのチャンセンと女形のコンギルは、王様をおちょくった笑劇をやったところ大ウケ。ところがやり過ぎて笞打ちの刑に……。
ここまではかなりマッタリしたテンポでギャグの場面が多い。だが、王様に逆に気に入られて宮廷住まいするようになってから段々とシリアスになってくる。
王と忠実な老臣、さらに他の大臣との勢力争いに芸人達の出し物が利用されるのだ。かくして何か演じる度に死人が出るという恐ろしい事態になるのであった、ギャーッ。
チャンセンは身分は低いが性格は豪胆で実は自由人である。逆に王は過去にとらわれ権力のせめぎ合いの中で抑圧されている、という立場が徐々に明らかになってくる。だからと言って両者とも身分の壁から逃れられるわけではない。そして二人の間に挟まれたコンギルは、王様に同情するが兄弟同様のチャンセンとも離れられず、さらに王の愛妾の嫉妬も絡んで破局へと転がっていくのだった。
さて、これの物語は色々な立場から見ることができるだろう。同性愛の絡んだ三角関係と見るか、実在の暴君の裏の姿を描いた歴史劇と見るか、あるいは複数の勢力入り乱れた政争劇とも取れるし、真の自由と抑圧を描いたものとも思える。
私は最後の観点を中心に見たが、いずれにしても歴史の激しいダイナミズムというようなものが感じられた。(韓国映画特有なややベタな所はあるのだが)
あえて、「生まれ変わってもまた芸人になる」という宣言に作り手側の強い自由への希求を感じ取った。
役者は暴君役のチョン・ジニョンが一番目立った。立場は偉いが卑小にしてその軋轢に苦しむ人物像をうまく演じていた。チャンセン役のカム・ウソンも兄貴度高い好演。コンギルのイ・ジュンギは細面の顔といい繊細な手といい、とってもキレイ。95パーセントの女は完全に負けてるだろう。_| ̄|○ ガクッ
綱渡りの場面は二人とも本人がやっていると聞いてビックリだ。
音楽はキレイだが、ちょっとしつこ過ぎな印象もあり。
韓国では超大ヒットだったらしい。件の暴君は半島では信長並みに誰でも知ってる歴史上の人物なのだろうが、日本では全く知られてないのは興行的には大いなるマイナスだったようだ。
最近ではフ女子の街として知られる池袋の映画館で見たのだが、きっとフ女子で満員に違いないと予想して行ったら大外れだった。少ない客の中にフ女子らしき者は全くいず、ほとんどが韓国映画のファンとおぼしき若い女性&オバハンであった。
フ女子がこれに萌えんでどーする(`´メ)ってなもんである。余計なお世話?
それはともかく韓国映画に頻出する(って、たまたま私が観たのに多かっただけか?)兄貴分-弟分の関係というのは伝統的文化的なものなのであろうか。そして、当然韓国にもいると思われるフ女子は、それに勝手な妄想を働かせて萌えたりしないのであろうか?
これは深く探求するに価することであ~る--わけはないか。
主観点:8点
客観点:7点
【関連リンク】
「怒り」と「悲しみ」という点から論じていて、納得させられます。
《詩はどこにあるか》
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