「それでもボクはやってない」:被告席へ一名様ご案内~
監督:周防正行
出演:加瀬亮
日本2007年
周防正行、なんと11年ぶりの監督作である。
痴漢行為で捕まった男が明らかに冤罪なのにもかかわらず、拘留され起訴され裁判で戦わざるをえなくなる過程が地道に描かれていく。
捕まったことが一度もないんで(;^_^A 実際の所は知らないんだが、監督は数年かけて取材しただけあって、何やら実録風のリアリズムの迫力に満ちている。まるで、映画館の客席がそのまま裁判の被告席になったような気がするのだ。
一方的な取り調べ、留置場の様子、検事-裁判長-弁護士の間だけでグルグル流通していく訳ワカラン裁判用語などなど、見てビックリな場面多数。
中でも驚いたのは無実の立証責任が容疑者側にあるということ。えー、検察側が犯罪を立証しなけりゃいけないんじゃないんですか? どうやら米国の映画やテレビドラマを見過ぎて誤解していたようだ。もっとも、こんなのは適当で、時と場合によっちゃ被害者側に犯罪を立証しろとか言うんだろうねえ。
そんな様相を説明的にならず淡々と見せて、しかもかなり長い上映時間を飽きさせないのは大した手腕だろう。
またあえて劇的な盛り上がりを避けて実録風にするために、登場する人物は個性を強調せず、類型的(典型的?)に設定したようだ。母親はあくまでもそこら辺にいるかーちゃんらしく、友人はいかにも普通の友人ぽいし、駅員さんはよくいる駅員そのままだし--。下手すると没個性になりそうなのを達者な役者たちが極めてうまく演じている。
そういう点では主人公はいかにも無辜で非力な市民という感じでうまく設定してある(ちょっとマゾっ気入ってる?)。これがスポーツ刈りのラグビー部員とか、チャラチャラしたサッカー野郎風だったらここまで共感は得ないだろう。
そんな中で一人冴えなかったキャラクターは女弁護士。なんだか何のためにいるのかよく分からない。取りあえず画面に潤いがないから若いねーちゃんでも入れとくか、ぐらいの意味しか受け取れなかった。
痴漢への反感と怒りを抱いていたのが、そのうちにどう変わって行ったのかよく分からないし、若さゆえの気負いってのがあるんだかないんだか、とにかく全てにおいて中途半端。それが役者のせいなのか脚本のせいなのか、あるいは演出のためなのかは分からないが。
これはあくまで主人公が無実だと設定してある話だが、現実には全くやっているようには見えなくても実は犯罪を犯していたり、どこから見てもアヤシイ奴だが実は何もしてなかったとか、不明確な事例が多いはずだ。そういう時に第三者から見て正しく判断できるだろうか?--などと思ってしまった。
それから自分が同じような目にあったら、すぐにあることないことゲロしちゃって、ついでに友人知人まで密告しまくっちゃうだろう(>O<)ヤダヨー そうなんです、根性無しなんです、私σ(^-^;)
インタビュー読むと監督は「冤罪裁判」の方に重点を置いているようだが、観客には「痴漢冤罪」の方が重視されてるみたい。どーすんのよ。
疑問1-拘置される時って確かパンツまで脱がされて**の中まで調べられるって聞いてたんだけど、そこまでしないのか?
疑問2-ガイジンさんが房内で率先してトイレ掃除したり配膳係をやったりしてたのは何故?
疑問3-終盤に登場する弁護士の室内で、青いミカン箱がやたらと目立っていたのはなんじゃ? てっきり地元の農協の協賛でも受けてるかと思ったが、ラストクレジットをチェックしたが見つからなかった。でも、すごーく目についたのよ。
主観点:7点
客観点:8点(勉強になります)
【関連リンク】
「ハァ~」の感じがよく出ています。
《古今東西座》
【追加リンク】
見事な分析に感心しました。
《Arisanのノート》
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