« 「ヘンダーソン夫人の贈り物」 :J・デンチのはありません(念為) | トップページ | フランソワ・フェルナンデス&今村泰典チケットをゲッート »

2007年2月 6日 (火)

「それでもボクはやってない」:被告席へ一名様ご案内~

監督:周防正行
出演:加瀬亮
日本2007年

周防正行、なんと11年ぶりの監督作である。
痴漢行為で捕まった男が明らかに冤罪なのにもかかわらず、拘留され起訴され裁判で戦わざるをえなくなる過程が地道に描かれていく。
捕まったことが一度もないんで(;^_^A 実際の所は知らないんだが、監督は数年かけて取材しただけあって、何やら実録風のリアリズムの迫力に満ちている。まるで、映画館の客席がそのまま裁判の被告席になったような気がするのだ。
一方的な取り調べ、留置場の様子、検事-裁判長-弁護士の間だけでグルグル流通していく訳ワカラン裁判用語などなど、見てビックリな場面多数。

中でも驚いたのは無実の立証責任が容疑者側にあるということ。えー、検察側が犯罪を立証しなけりゃいけないんじゃないんですか? どうやら米国の映画やテレビドラマを見過ぎて誤解していたようだ。もっとも、こんなのは適当で、時と場合によっちゃ被害者側に犯罪を立証しろとか言うんだろうねえ。

そんな様相を説明的にならず淡々と見せて、しかもかなり長い上映時間を飽きさせないのは大した手腕だろう。
またあえて劇的な盛り上がりを避けて実録風にするために、登場する人物は個性を強調せず、類型的(典型的?)に設定したようだ。母親はあくまでもそこら辺にいるかーちゃんらしく、友人はいかにも普通の友人ぽいし、駅員さんはよくいる駅員そのままだし--。下手すると没個性になりそうなのを達者な役者たちが極めてうまく演じている。

そういう点では主人公はいかにも無辜で非力な市民という感じでうまく設定してある(ちょっとマゾっ気入ってる?)。これがスポーツ刈りのラグビー部員とか、チャラチャラしたサッカー野郎風だったらここまで共感は得ないだろう。
そんな中で一人冴えなかったキャラクターは女弁護士。なんだか何のためにいるのかよく分からない。取りあえず画面に潤いがないから若いねーちゃんでも入れとくか、ぐらいの意味しか受け取れなかった。
痴漢への反感と怒りを抱いていたのが、そのうちにどう変わって行ったのかよく分からないし、若さゆえの気負いってのがあるんだかないんだか、とにかく全てにおいて中途半端。それが役者のせいなのか脚本のせいなのか、あるいは演出のためなのかは分からないが。

これはあくまで主人公が無実だと設定してある話だが、現実には全くやっているようには見えなくても実は犯罪を犯していたり、どこから見てもアヤシイ奴だが実は何もしてなかったとか、不明確な事例が多いはずだ。そういう時に第三者から見て正しく判断できるだろうか?--などと思ってしまった。
それから自分が同じような目にあったら、すぐにあることないことゲロしちゃって、ついでに友人知人まで密告しまくっちゃうだろう(>O<)ヤダヨー そうなんです、根性無しなんです、私σ(^-^;)

インタビュー読むと監督は「冤罪裁判」の方に重点を置いているようだが、観客には「痴漢冤罪」の方が重視されてるみたい。どーすんのよ。

疑問1-拘置される時って確かパンツまで脱がされて**の中まで調べられるって聞いてたんだけど、そこまでしないのか?
疑問2-ガイジンさんが房内で率先してトイレ掃除したり配膳係をやったりしてたのは何故?
疑問3-終盤に登場する弁護士の室内で、青いミカン箱がやたらと目立っていたのはなんじゃ? てっきり地元の農協の協賛でも受けてるかと思ったが、ラストクレジットをチェックしたが見つからなかった。でも、すごーく目についたのよ。


主観点:7点
客観点:8点(勉強になります)


【関連リンク】
「ハァ~」の感じがよく出ています。
《古今東西座》

【追加リンク】
見事な分析に感心しました。
《Arisanのノート》

関連記事も是非お読み下さい。
「電車で目をそらしただけで、追いかけ回された!」

| |

« 「ヘンダーソン夫人の贈り物」 :J・デンチのはありません(念為) | トップページ | フランソワ・フェルナンデス&今村泰典チケットをゲッート »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「それでもボクはやってない」:被告席へ一名様ご案内~:

» 「それでもボクはやってない」 [古今東西座]
は~~~~~っ。 裁判が進み、冤罪で法廷に立つ主人公が不利な状況になる度に巻き起こる観客のため息が劇場に充満する。観客は映画を観ていると言うよりは、主人公の支援者になって裁判に立ち会っている傍聴人のような気分で椅子に座っている。そして何度も落胆し、思わずため息をつかずにはいられないやるせない気分にさせられてしまう。そのくらいライブ感抜群のよく出来た法廷ドラマになっている。この辺、先日観た『愛の流刑地』と比べて、同じ裁判モノでも監督の力量でこうも違うのかと感心してしまう。あちらは殺人事件でこちらは痴漢... [続きを読む]

受信: 2007年2月 6日 (火) 22時32分

» それでもボクはやってない [Thanksgiving Day]
映画「それでもボクはやってない」を観てきました!! 痴漢冤罪事件を題材にした周防正行監督の映画で、かなり話題になってるし、電車に乗ることも多くずっと気になってたので、観たいと思ってたんですよ。 こんな内容の映画です。 ↓↓↓ 『大事な就職の面接を控えた....... [続きを読む]

受信: 2007年2月 9日 (金) 02時56分

» デパ地下で女性とすれ違い痴漢だと言われた男性実名で告発 [トップニュースダー!!]
恐ろしい時代だ女性とすれ違っただけで痴漢扱いされるとは、しかも警察は女性の主張を優先して最初から疑っている、多くの人が泣き寝入りしているほんとうに恐ろしい。 [続きを読む]

受信: 2007年2月12日 (月) 16時09分

« 「ヘンダーソン夫人の贈り物」 :J・デンチのはありません(念為) | トップページ | フランソワ・フェルナンデス&今村泰典チケットをゲッート »