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2007年2月11日 (日)

「エレクション」 :既に本家を超えた

監督:ジョニー・トー
出演:サイモン・ヤム、レオン・カーフェイ
香港2005年


前作『ブレイキング・ニュース』に感心したんで、同じ監督の新作を見に行く。ただ、前のは犯罪アクション風だったのが、今度はマフィア系らしい。このジャンルはちと苦手なんでやや心配であった。

が、実際に観て……参りました<(_ _)>
前に『あるいは裏切りという名の犬』でフランスをノワール系の本家のように書いたが、はっきり言ってもはや本家を超えた!とタイコ判を押してもいいぐらいだ。

香港の裏社会の巨大組織で、会長が二年に一度の選挙で選ばれるという設定。で、勢いはあるが暴発型のディーと秩序を重視する守旧型のロクが争う事になるが、選挙の結果ロクが選ばれた事にディーの方はプッツンしてしまうのであった。

その後は年配のボス連中や中堅幹部やら手下のチンピラまで様々に思惑や打算が絡み合い、さらにこの混乱に乗じて裏社会をコントロールしようという警察まで加わって、事態は不安定に動いていく。
下っ端が争っている間に上の幹部同士が手を握って、いつの間にか味方になってたり--なんて笑える場面もある。

対照的な二人の男というのは定番パターンだが描き方が鮮やか。特に冷静沈着と見えたロクが終盤に至って本性を現わすところは意表を突く。
誓約、友情、義理、秩序--それらは全てその混乱した暗闇の中へ呑み込まれて行くのだった。

お得意(?)の銃撃戦は一切なく、殺し合いが全て野蛮なる撲殺とか刃物とか痛い系ばっかりなのもすごい。観ててイタタタタタ……(>_<)
特に木箱ゴーロゴロは勘弁してくれえ~(@_@) レンゲも食いたくねえぞ~。

かくも陰惨なる世界を女っ気ほぼゼロ!で描き切った監督の力業に感心の一言であった。ま、女は出なくても各種カッコエエにーちゃん、おやじ、じーさんがいっぱい出てくるんでわたしゃ文句はねえよ(^Q^)デヘデヘデヘ
それから照明の使い方にも感心した。なんか暗くてほとんど役者の表情が見えない場面があるんだよね(まさか映写設備が悪いということではないと思うが)。動きが乏しい場面で、あえてそうしたのはあまりにも大胆である。

それにしても映画館の座席を見渡して笑っちゃったのは、客層が普通の映画と全然違うこと。カップルも何組かはいたが、単独客がやたらと多い。明らかにヤクザ系作品ファンとおぼしき中高年男性と中華系男優のファンらしい女性客が中心であった。

しかし……しかしですよ、同じノワール系で単館ロードショーの『あるいは裏切り~』がかなりの大入りロングランだったのに、この寂しい入りはなに? こちらはあっけなく二週間で陥落状態なのはどういうことよ。
邦題が悪過ぎたのか(何やら別のジャンルの映画を想像)、宣伝がうまくなかったのか--とにかく続編もあるっていうのに、このままでは公開が危ないっ(!o!) なんとかしてくれー。

ということで、続編も見ないと最終判断は下せないのと、ラストの曲の趣味が今イチなんでこの↓点数。


主観点:8点
客観点:8点(ノワール系ファンは必見の大推奨)

【関連リンク】
ボーッと見ていると混乱してしまうほど登場人物が多いので、解説が助かります。
《画面を見るなら脇からに》

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