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2007年2月15日 (木)

「愛しきベイルート アラブの歌姫」:そしてコブシが残った

監督:ジャク・ジャンセン
オランダ2003年

ファイルーズはレバノンの国民的歌手。
昔、ワールド・ミュージック隆盛の頃、雑誌で名前をよく見かけていたが実際に歌を耳にする機会はなく、およそ××年後の今になって急に彼女のドキュメンタリー映画を見に行こうという思い立った次第。(ただ今、渋谷のアップリンクでは音楽ドキュメンタリーの映画祭を実施中でその中の一つ。あとはアル・グリーンのを見てみたいかなー)
もっとも当時日本での名前の表記はフェイルーズだったが……(映画の中でもそのように発音されて聞こえるんだけど?)。

実際に見てみると、彼女が何年に生まれてどんな経歴で--というような作品ではなかった。レバノンの人々に、思想心情民族宗教出自を越えていかに愛されているか、というものであった。
様々な人々が思い思いにファイルーズについて語る。多くは悲惨な記憶と共にである。それは長い内戦によって失われた幸福な時代、あるいは故国の有り様そのものが彼女であるかのようにだ。その時彼女は喪失と希望の象徴なのだろう。

で、思ったのはレバノンの歴史について簡単にでも事前学習してくればよかったということ。予備知識皆無でこれを観るのはチト厳しい。
それから、現在の日本には「国民的歌手」なんて皆無だなーということ。誰もが名前を知ってて歌の一節だけでも耳にした事がある、なんて人物は細分化された音楽シーンには存在しない。それは人々の間にもはや共通の記憶や風景というような意味での音楽は存在しないということを意味している。

彼女の歌はバックに流れてるが、その姿は写真でしか紹介されない。映像の記録はないんじゃろか? いくらなんでもそんな事はないだろう、と思ったら最後の最後にライヴ映像が出て来ましたっ。いよっ、大統領!待ってました!! 観客の熱狂ぶりがこれまたスゴイ。

音楽面は、普段アラブ系の音楽を聴いていない人間には、年代が古そうな大仰なオーケストラがついた曲(歌謡調強し)はチトきつい。ジャズっぽい曲が個人的にはよかった。ジャズのこぶしの代わりにアラブ風のこぶしが入るという感じ。

さて、土曜の夜のうるさ~い渋谷の街をデパート寄ったりタワーレコード漁ったりしてフラフラした後、駅へと向かった。
その時、喧騒の中で突然私の耳の奥にファイルーズの声と強烈なこぶしが甦ってきたのであった--。


主観点:7点
客観点:8点

【関連リンク】
公式サイト

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