「犯罪不安社会」
サブタイトル:誰もが「不審者」?
著者:浜井浩一、芹沢一也
光文社新書2006年
昨今叫ばれる社会の「治安悪化」を検証し直す本。
関係する統計を厳密に点検することと、犯罪に関するメディアでの言説の変化をみることで「相互不信社会」の成立経過をたどっている。
ある時期を境に犯罪加害者への過剰なる思い入れ(これはもはやロマンチシズムと言ってもよい)が、バタッと逆方向の被害者への共感へと傾いていく様相には改めて驚く。
また、子どもが犠牲となる犯罪の増加については、小学生の殺害事件が1976年には100人だったのに対し、2005年には27人という事実にビックリ。なんだよ、減ってるんじゃないの。
さらに刑罰については「無期刑でも十五年程度で仮釈放」という言説が全くの誤りだったり……。
色々と目からウロコやらコンタクトレンズがポロポロ落ちる記述が多数だ。
4章目の刑務所の現状に関しては『累犯障害者』(山本譲司)と合わせて読むと、相当にウツになる。
とにかく「犯罪は正しく恐れ、その上で、効果的で副作用の少ない、人々の生活に優しい犯罪対策を考えるべきであろう」というのにナットクである。
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