「善き人のためのソナタ」:久々の正統的社会派
監督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
出演:ウルリッヒ・ミューエ
ドイツ2006年
壁が崩壊する前の東ドイツ。秘密警察による監視や市民による密告が横行する体制の中で、信奉するイデオロギーや信念に忠実過ぎるがゆえに破綻を来した男の物語である。しかしながら、だからこそ彼は「人間」であった--ということでもある。
久し振りにすごーく真っ当な映画を見た!という感じ。奇を衒いもせず、派手な映像もなく、こけおどしもなく淡々と物語が進んで行く。
ただ、看板に偽りありというわけではないが、題名になっている「ソナタ」(や音楽)はそれほど全面に出して使われているのではなかった。(邦題は原題とは全く異なっている)
結局、主人公は女優の事を最初から好きだったんだろうなと思う。そこから全ては始まっているようだ。だから本来関心を持つべきことではない監視相手に感情移入したり、遂には行動で干渉してしまうに至る。
一方、権力の中枢にいる大臣の彼女に対する不正な行為を目撃する事で、体制への忠誠も揺らいでいく。
それにしても、このような恐るべき過去の国家の疵を堂々と映画にできてしまうというのは、なかなかに凄いことだと感心した。
ラストが救われる感じなのもよい。
ただ、あまりにもよく出来た作品というのは隙がなくて、ひねくれ者としては却って評価が低くなってしまう。少しブチ壊れてた方が好き!なのよ。
主観点:7点
客観点:8点
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この映画の雰囲気がよく伝わってくる感想です。
《空模様》
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