「ラストキング・オブ・スコットランド」:これは再現映像です
監督:ケヴィン・マクドナルド
出演:フォレスト・ウィッテカー、ジェームズ・マカヴォイ
米国・イギリス2006年
ウガンダの「食人大統領」として知られるアミンと、主治医になって間近にいた英国人(厳密にはスコットランド人)の若者の物語。若者は具体的なモデルはいず、当時アミンの周囲にいた白人を数人合わせた人物像らしい。
しかし、これは何を描きたかったのだろうか? 見ていてさっぱり分からなかった。
残酷で冷血な独裁者の肖像なのか。しかし、あまりに若者の方が愚かでしかもそれをベターッ密着して描いているのでそれにイライラしてしまい、正直アミンが何をしてようとあまり気にならなくなってしまうほどだ。
では、これは能天気な若いモンが遊び気分で他国にボランティアに行ってはイカンという教訓なのか? もし何かを受け取るとしたらそれぐらいしかないだろう。
だがその顛末はあまりに残酷である。それに彼がいようといなかろうと、独裁者の所業が変化したわけではあるまい。
この映画でも(『オール・ザ・キングスメン』と同様)どうして主人公が大統領に惹かれたのか明確に描かれていなくて、最後まで判然としなかった。観客としては登場人物の言葉の端くれをあれこれ思い出して適当に推測するしかないだろう。
結局のところ、この映画を見ても少しも幸せな気分にはなれないのは確かだ。逆に社会的な問題に怒りを感じるとか、感情を動かされて泣けた、ということもない。「こんな事実が!」と驚くというわけでもない。ただ、なんともイヤ~な気分になるだけである。
それで、見ていてワイドショーで犯罪ネタによく使われる再現フィルムを思い出した。一体あれとどう違うのか。そういう意味では二人の役者はよく健闘していると言っていいだろう。
あと、やたらザラついた映像なのはなぜ? ドキュメンタリーぽくしたかったのか。
それから、字幕の担当がまたもや「あの人」で「~ので?」節炸裂!マイッタマイッタ。
主観点:5点
客観点:5点
【関連リンク】
どうも判然としない所があると思って、荒木國臣先生のHPを見たらやっぱりありました(3月13日の映画評とこ)。
この映画もおめでたいスコットランド人医師がアドベンチャー気分でウガンダ農村へのボランテイア活動に参加するところから始まる。アミンが次第に凶暴な独裁に変質し、恐怖政治を展開する過程が描かれるが、英国の偽善的な間接支配はほとんど登場しない。(中略)
アフリカの凶暴な独裁を生み出す社会構造に迫るといった期待は裏切られ、白人ヒューマニズムが賛美される。
アミンというのは英国植民地主義政策から生まれた正統的嫡子だったというわけか。そりゃ、そんなこと描けるわけないわな。
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