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2007年5月20日 (日)

靉光 展&「リアルのためのフィクション」:課題《靉光の三枚の自画像を見て感想を述べよ》

靉光は今年生誕百年だそうである。それを記念しての大々的な回顧展。
やはり前に同じ美術館で見たシュールにして幻想的な「眼のある風景」の印象が強いが、もっと様々なタイプの作品を並行して描いていたのに驚かされた。

若い頃にやっていたロウ画というのは表面の感触が独特で面白い。その後では、動物を描いた大作や、やはり大きめの静物画もあれば、簡潔な印象の肖像もある。とにかく色々色々あり、だ。
墨と鉛筆でスッと描いた花に部分的に着色した「あけび」とか「くちなし」が印象に残った。

また第4章として区分けされた、昭和18~19年の作品群も小品が多いが見応えあり。特に「静物」と題された作品には思わず目を引きつけられた。静物と言っても何が描いてあるのか全く分からない。ただ、赤黒いぼんやりとしたモヤモヤしたものが覆っているだけなのだ。しかし、何やら異様な迫力がある。思わず何度も見てしまった。
ただ、このコーナーはピンポイント照明で個々の作品を照らしているのだが、油絵なんで角度によって光を反射して見えなくなってしまうのにはマイッタ。なんとかしてくれい。

で、最後のスペースには三枚の自画像がドドーンと並べられていた。しかし、私の目はその三枚に行くよりも手前に並べられた観賞用の長いすに座って、一心不乱に何やら描いている五人の中学生に引き寄せられてしまったのであった。(@_@)
恐らく学校の課題なんだろうが、何もそんなわざわざ暗い所で(ここもピンポイント照明なんで周囲は薄暗い)レポート書くこたないだろうと思ってしまった。
で、今どきのチュー坊が靉光を見てどう思ったのか甚だ興味があったが、いきなり「あーら、何書いてるの。見せてチョーダイ」などと厚かましいオバハンに変身も出来ず、じっとガマンしたのである。

三枚の自画像は構図はほとんど同じだが、何かが決定的に違っていて、もしバラバラに見せられたら同じ人物だとは分からないだろう--というぐらい。

いずれにしろ、彼の才能に対し国家は死をもって報いた。これは紛れもない事実である。そしてもはや60年以上経った今では、国立の美術館で回顧展を開くことしかできないのだ。

ところで、M・デュマスの時もいたんだが、一つの作品の前に至近距離でズーッとくっ付いて見ている人がいるのはどーしたもんよ。大作なら横から見たりできるが、たかだか30センチぐらいの小品でそれをやられたら他の人間は見られないじゃない。
自分一人だけが見てるんじゃねえぞー(*`ε´*)ノ☆


小企画展示の「リアルのためのノンフィクション」は、四人の女性が1990年代に製作した現代アート作品を展示している。これは、人によって誰が気に入るか異なるだろう。
ソフィ・カルは昔に森美術館で他の作品を見た記憶があるが、フランス語で書かれたテキストの内容が分からんと理解しにくい。
やなぎみわはおなじみの案内嬢シリーズ。とってもデカい作品なんでもうちょっと離れて見たかった。
塩田千春は泥の入ったバスタブの中で、泥を洗面器でかぶり続けるのを延々と続ける映像作品だ。まるで苦行のようで、極めて自傷的な作品に思えて見続けるのがシンドイ。無料配布の冊子に書いてあるような「大地との直接的な関係を回復しようとする儀式」にはとても見えなかった。

最後は、イケムラレイコの四つの陶作品と大きめの油彩だったが、これが「キモくてイヤ~ン」な感じで実に気に入ったーっ \(^o^)/
なんだか形も定かでない頭部をこねくったような陶作品は、もう見るだに変で不気味で思わずニヤニヤしながら見まくってしまった。
それからボンヤリとぼかしたような画風の「横たわる少女」もやっぱり不気味な感じで、寝てるんだか倒れてるんだか殺されてるんだか分からないのがまた心のツボにグイグイ来るのだ。
こういう作品にめぐり合った時は、もうタイトルも説明もどーでもよくてただただ嬉しくなってしまうのであった。ヤッタネ!


所蔵作品展では現代部門の高松次郎「STORY」が、まるで『シャイニング』の「ジャックは……」のタイプ用紙を見つける場面のようで面白かった。他にも変な作品がいっぱいあって見たかったが、いつも2階まで降りてくると時間切れになってしまう。残念。

版画コーナーは「畦地梅太郎」特集。この人は全然知らなかったが、素朴で簡素な形がカワユイ。特に山男がライチョウを抱いている作品と、その後ライチョウが名残惜しそうに男を見送っている作品には笑ってしまった。ライチョウってそんなに人懐こいんか?

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