「近江楽堂のチェンバロ[大塚直哉]クラヴィーアの旅5」:「美」にして「快」の極致
会場:東京オペラシティ近江楽堂
2007年7月12日
毎年行われている鍵盤楽器の演奏会シリーズ。今年は近江楽堂に新しく17世紀初期のフランス様式のチェンバロが入ったことから、フランソワ・クープラン全曲コンサートを取り上げたのだという。
この様式のチェンバロは珍しいそうな。そして、F・クープランだけの演奏会も珍しいとのこと。その理由の一つは似たように聞こえる曲が多いから(^^;--という大塚氏自身の説明があった。
とはいえ小さく残響豊かなこの会場で、ひとたびチェンバロが演奏され始めるともう、その音にひたすら魅せられた。その音自体が既に根本的に「快」なのである。
例えれば、夏の暑い夕方に家へ帰ってきて、冷蔵庫の冷えたワインをクイッとひっかけた時のように
あー、こんころもちええ~ ~(^^)~
という心地よさなのだ。
そして、クープランの曲はあたかも甘美で精緻な砂糖菓子のようであった。(いや、それよりも私が思い浮かべたのはベッコウ飴の細工だった)
ドトーのような感動や、涙や、力強さ、といったものとは無縁だが、もはやこれ以上どこにも行きようがないほどの「粋」の極み、堅固に構築された美意識の城と言ってもよい。演奏の間中、ひたすらその音の世界に酔っていたのだった。
アンコールは、最近大塚氏の親友の幼いお子さんが亡くなったということで、ルイ・クープランの「トンボー」が演奏された。
こちらはそれまでと打って変わって内省的、というかやや晦渋な曲調。まるで演奏者が瞑想し自己と対話しているような印象だった。ただ、聴いてる方は置いてけぼりか?
やっぱりクーブランはええのう、という思いをますます強めたコンサートであった。
それにしてもこの日の客席も奥様系な女性客でいっぱい。も、もしかして大塚氏は「直さま~」なんて人気沸騰してきたんじゃろか(?_?;--なんてことを思ってしまったよ。
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