「廃帝奇譚」:滅亡の残照
著者:宇月原晴明
中央公論新社2007年
奇想天外な歴史ファンタジーとでもいうべき物語を見事な筆致でまとめた『安徳天皇漂海記』。その後日譚である連作短編集だ。
三編は中国の元と明の皇帝3人について、最後の一編が鎌倉幕府に対し挙兵し隠岐に流された後の後鳥羽院を描く。いずれも『安徳~』に登場する金色の玉に取り憑かれており、その脳裏を支配する金色の光とは、自らの統治する帝国に差しそめる滅亡の残照に他ならない。
まさしくこれは滅びゆく者の物語である。
それにしても、こういう華麗な文章いいですねえ~。読んでいてウットリしちゃう。
北村薫は『メッタ斬り文学賞・2007年版』によると『安徳~』について嬉しそうに歌の講釈をしたというが、今回も後鳥羽院が既に亡くなっている実朝に幻の歌合をしかける件についても大いに語りそうだ。
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