「レミーのおいしいレストラン」(字幕版):お子ちゃま無用の大人のファンタジー
監督:ブラッド・バード
出演:レミー他ネズミの皆さん
米国2007年
昨年はクルマに目鼻つけて喋らして驚異だったピクサー。今年は料理するネズミと来たーッ。といっても、アニメっぽくデフォルメされたものではなく、リアルっぽいネズミである。(人間と言葉が通じたりはしない)
毛のフサフサ感は『モンスターズ・インク』で既に証明済みだ。
なぜか料理人に憧れるドブネズミ一匹--レミーは家族とはぐれ、流れ流れて花の都パリに。尊敬するシェフの店を天井裏から覗けば、なんとドシロートの見習いの若者がこっそりと勝手にスープの味つけをしているではないかっ! ありえねーっ(!o!)
ここで示される対比は極めて意味深である。
レミーはドブネズミにもかかわらず、料理の才能と情熱があり、家族にも恵まれている。
若者リングイニは優秀な料理人の血を引く人間にもかかわらず、料理の才能はなく、やる気もなく、家族もいない。
うーむ、今回も含蓄あり過ぎの話です。
かくしてリングイニはレミーのあやつり人形--ならぬあやつり人間と化して料理に励むわけだ。しかし、そんな不自然な状態がいつまでも周囲に隠せるわけもなく……。
時折、モッタリと展開する部分があって、それが今イチ感を与えたが、それでも見終って「ええっ、これで120分もあったの?」と驚くほど短く感じた。
登場人物についてはチュー房の他の料理人たちはユニークな設定の割にあまり活躍しなかったが、代わりにレミーの父親と兄(「人物」じゃないですな)、紅一点コレット、いかにもな悪役の料理長、それに痩せこけた料理評論家イーゴがよかった。
特にイーゴの声はP・オトゥールでなるほどと納得の名演。最後に読み上げられる批評がなかなかに泣かせて、しかも耳に痛いのである。ここまで来ると、もう「子ども向き」アニメの範疇ではない。
他にもブライアン・デネヒーやイアン・ホルムという渋い配役。
映像に関しては、始めの方のネズミの大軍団がドドーッと初登場する場面は迫力あり。パリの風景は夜も昼も極めて美しいし、レミーが逃げ回る川の水面の光の描写も素晴らしい。
しかし、なんといってもすごかったのは料理や食品の数々。グラスに注がれたワインが出てくる度に「ああー、飲みてえ(^O^)/□」と指がピクピクしてしまうし、チーズ食いたい!なんて発作的に思ってしまうし、ホカホカ湯気が上がっている最後のあの料理には思わず目が離せなくなってしまう。お見事の一言である。
あ、レミーたんはヒクヒクするヒゲと愛敬のある目がカワイかったです(^^)
肝心のフランスではどう評価されたんだろう。知りたいところである。日本では……夏休み大作群の猛攻に完全に押されてしまいましたな。残念無念であ~る。
付録の短編アニメはスライムみたいな宇宙人のブヨンとした触感と金属のスイッチの光沢が目を引いた。ただ、全体的なセンスでは前回の音楽合戦の話の方に軍配が上がるかな。
主観点:7点
客観点:8点
【関連リンク】
《ようこそ劇場へ!》
「鶴の恩返し」や「小人の靴屋さん」のような民話の例えにナットクです。
「決して料理中は覗いてはなりませぬ」と言われたが、あまりのいい匂いについ覗いてみるとウギャ~ッ(>O<)という感じですか。
《水曜日のシネマ日記》
いつもながら見事な分析に脱帽しました。
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