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2007年8月16日 (木)

「ルドンの黒」:--と、そこに豊穣なる闇が出現した。

会場:BUNKAMURA ザ・ミュージアム
2007年7月28日~8月26日

ルドンは非常に好きな画家。もしかして一番好きかもしんない。パンフ類を置いてある棚をゴソゴソ漁ってみると、1989年の国立近代美術館と2001年の小田急美術館でのルドン展の図録が出てきた。過去2回は記憶の中ではゴッチャになっている。
この二つとも作品に描かれた題材別の展示であったようだ。

今回は岐阜県美術館のコレクションを中心にした、ほとんどモノクロ作品(版画と木炭画)ばかりの展覧会である。
ルドンは画家人生の後半での色彩豊かなパステルの花の絵なども有名だが、不気味で異形を描いた版画作品も後世の影響大である。
人面蜘蛛やら眼玉気球やらタツノオトシゴみたいな化け物やら幽霊やら悪魔やらが、これでもかと描かれている。

ルドンの「黒」というタイトルだが、私にはそれは「黒」ではなく「闇」に思える。太陽が出現する前の、混沌として暖かく無形のものが生まれつつあり、ゆっくりとたゆとう原初の海のような闇である。それは単なる色ではない。既にそれ自体が一つの異世界なのだ。

そして、そこから生まれるのが白であろうと多彩な色であろうと何の違いがあるだろうか。まさしくこれは豊穣で密やかでぬめぬめとした無意識の闇だ。その闇の中にありとあらゆる生命が蠢いているのを感じる。それを見ると心安らぐ気分になるのだ。

展示の途中の何ヶ所かでルドンの絵を動かして見せるCGが上映されていたが、入り口の所の人面蜘蛛がタイトルの文字の上を這い回る奴がユーモラスで一番面白かった。
この蜘蛛のキャラクターグッズ売ってくれればいいのに~。(初日に先着順で配ったらしい) バネ付きで車の中などにビヨーンとぶら下げたら面白いかもしれない。

もっとも、実際の作品の人面蜘蛛はそんなにユーモラスには見えない……。彼の作品は化け物の形象よりも、やはり闇と光のあわいの描き方が肝心なのであるよ。
「沼の花、悲しげな人間の顔」では人面花よりもその下の水面に映る光の描写に心を動かされた。あるいは「眼は奇妙な気球のように無限に向かう」の目玉気球の上部にボヤボヤと生えている毛のような部分。
そして、『幽霊屋敷』の「大きく蒼ざめた光を私は見た」はタイトルにもかかわらず光の部分は微かにしか描かれていなくて、大部分を占めている階段の奥の闇。
それらこそが何よりも傑出していると思う。

従って、今回のサブタイトルを「目をとじると見えてくる異形の友人たち」と付けたのは全く余計なお世話。まあ、それを「売り」にしたかったのだろうけど。

ポスター買おうと思って行ったが、岐阜美術館の今イチなデザインのしかなくて残念。で、また図録を買ってしまったのだった。
仕方ないので、家へ帰って唯一持っているベアトリーチェのポスターを飾ることにした。でも、モノクロ作品のポスターも欲しいよ……。
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コメント

岐阜県美術館でルドンの全作品を収録したCD買ったことあります。動く人面蜘蛛も収録されてました。展示物として上映するのではなくて、CDも売ればいいと思うのだが、紙の図録しか売ってなかったのですか?

投稿: goldius | 2007年8月24日 (金) 09時35分

CD(DVDだったかな?)も売ってましたが、それはルドンのオリジナル作品ではなくて、CG映像だけを収録したものでした。
人面蜘蛛が這い回るのも、今回の展覧会のタイトルの文字の上を歩いたりしてるので、新たに作ったヤツのようです。(もしかして同じプロダクションが作ったのかも知れませんが)

投稿: さわやか革命 | 2007年8月25日 (土) 11時11分

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