「ブラック・スネーク・モーン」:初めにブルースありき
監督:クレイグ・ブリュワー
出演:サミュエル・L・ジャクソン、クリスティーナ・リッチ
米国2006年
宣伝の広告やチラシに使われている画像がスゴイ。何やら黒人のオヤヂが持ってる太い鎖にパツキン白人の娘っ子(露出度高し)がしがみついているではにゃあか!
で、「つながりたい--衝撃的な“愛”のカタチ」とか言っちゃって、こりゃあもしかして「監禁モノ」ってやつですか(@∀@)アヒャヒャ
公式サイトを一見してもそんな感じ濃厚だぞー。
と思ったら大違い。これは共依存しなければ生きていけない老若白黒男女が、なんとか崩壊した人生を再生させようとする極めて切実な物語なのであ~る。
さらに全編に流れるブルース。冒頭と終盤近くに伝説的ブルース・ミュージシャンのサンハウスが「ブルースとは--」と語るドキュメンタリー映像が挿入されているのを見ると、ブルースそのものを主題にした異色な音楽映画とも言えるのだ。
元ブルース・ミュージシャン(エンド・クレジットに献辞が出てくるR・L・バーンサイドがモデルとのこと)にして、今は南部の片田舎で地味に農業を営んで暮らすという設定の主人公は、実の弟に裏切られ、妻を寝取られ、別れを宣告され……とまるでブルース曲に登場する「裏切られ男」像を全て背負い込んでいるような状況である。
と、彼が道端で発見するのが半裸の若い白人のネーチャン。こっぴどく殴られてて気絶して地べたで転がっているぢゃあーりませんか(!o!) あぶねえあぷねえ。
で、彼は娘っ子を介抱してやって、ついでに魂の方も救ってやるのが神の試練と考えるようになる。その結果が自堕落でまさに「アバズレ」状態の娘を鎖で繋ぐという行為に象徴されるわけだ。
サミュエル・L・ジャクソン、今回は完全なじーさんモード。白髪頭で、周囲に当たり散らす頑固オヤヂだ。が、ひとたびギターを握って歌えばシャキーン(☆-☆)となるのである。やっぱりサミュエル兄い、爺役でもカッコエエのである。
笑っちゃったのは、娘のエロ気にアテられそうになった主人公が聖書をひっつかんで表に飛び出し、家と自分の間の地面に聖書を置くところ。「悪霊の家」じゃあるまいし。いや……やっぱり「悪霊」か(^^?
こういう場合、日本人なら何を盾とするんだろうか?と思ってしまった。まさかお経じゃないよなあ。やはりお札だろうか。「悪霊退散」というお札を股間に貼るとか(^○^)ギャハハハ(冗談ですよ、冗談)
一方、娘っ子役のクリスティーナ・リッチはまさに体当たり演技といえる。何せ前半はほとんどろくに服着てない(@_@) 脱げそで脱げないパンティは両面テープかなんかで留めてるのか思っちゃったよ。
『アダムス・ファミリー』のあの女の子がねえ……。こんなにエロく育ってしまってご両親もさぞお嘆き、さぞお喜びでしょう。
しかし、一番驚いたのは最初の方で二人の女友だちと乱痴気パーティに参加する場面。他の二人の女の子より完全にブサイクに見えるんである。普通、女優ったら他よりも少しでもキレイに見せたいはずだが、あきれた役者根性だ~。
主人公が好意を持っている薬屋の店員が歌ったゴスペル(あまり上手くないのだが、それを主人公がウットリ聴いているのが微笑ましい)をどっかで聞いたことがあるなーと首をひねっていたのだが、後になってニーナ・シモンのレコードだったのを思い出した。
テーマは魂の救済と音楽……であるからして、ブルース好きはもちろん(ブルース専門誌でも特集なんかしたらしい)、私のようなロック専門の門外漢でも音楽好きならオススメの作品である。
しかしながら、「女性登場人物の服装」という面から見てみると、また別の感想が出てくる。
娘っ子は最初はジーンズをぶった切ったホットパンツにタンクトップみたいな格好である。主人公の家で鎖につながれている時は下着同然。が、主人公を受け入れ鎖から開放された時は彼が婦人洋装店から買って来た女らしいドレスを着る。
娘の母親は終始、無個性でユニセックスなスーパーの店員の制服姿だ。
薬屋の女店員は常に優しげなフェミニンなファションに対し、離婚を切り出す妻は固いスーツを着て登場。
服装のジェンダー規範と精神の安定性は常に比例しているようである。
--なんてことをつい考えてしまうのである。
でも、サミュエル兄いのカッコ良さに免じてキニシナイ \(^o^)/
主観点:8点(音楽好き限定点数)
客観点:7点
【関連リンク】
《映画通の部屋》
《ポコアポコヤ 映画倉庫》
役者についての感想がうなずける所が多いです。
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コメント
リンク&TBありがとうございます。
この作品は、鑑賞前に自分の中に沸き上がったイメージとは違ったのでビックリしましたが。
ブルースについては余りよく知らないながらに、音楽の力っていいなぁなどど爽やかな感想を持ちました。
>「女性登場人物の服装」
この辺は、興味深いですね。
自分は素通りしてしまった感があるので、面白く読ませて頂きましたよ。
投稿: 隣の評論家 | 2007年9月17日 (月) 20時37分
コメントありがとうございます!
単館公開扱いですが、ホントはもっと見られてもいい映画ですよね。(さすがに検索してもヒットするブログは少ない……)
とはいえ、あれ以外にどう宣伝するかというと、ウムム、思いつきません。
投稿: さわやか革命 | 2007年9月19日 (水) 05時52分