「ヒロシマナガサキ」:過去ではなく現在の話
監督:スティーヴン・オカザキ
米国2007年
8月の中旬に見に行った知人によると、とにかく偉ーく混んでいて、一時間以上前に整理券を貰っておいて入場したが、結局補助席が出るほどの満員だったという。
そこで私は約半月後、たまたま平日に休めたので決意を固め鼻息も荒く一時間早く家を出て岩波ホールに行ったのだった。
ところが、もはや整理券は出してなくて、館内はガラガラだった。なんなんだよ……。拍子抜けしてしまった。混んでたのは終戦の日に近い時期だったかららしい。
日系三世の監督が広島・長崎の被爆者14人と米兵・科学者4人にインタヴューで構成したドキュメンタリー。被爆者の側には中沢啓治や肥田舜太郎も入っている。「原爆乙女」のTV番組は全く知らなかったので興味深かった。
そして証人のナマの証言の迫力に圧倒された。戦後に周囲から受けた扱いが後半に出てくるが、これは過去の話ではなく、現在形の出来事なのだと明らかにしている。。
ナレーションは全くついていない形式で、この手のドキュメンタリーでは監督の編集の手腕が大きくモノを言うのだなあとヒシと感じた。
爆撃機に載ってた兵士の一人が「落とす前に最後に原爆に触ったのは私だ」とチョッピリ自慢げに語っていたところでは、『博士の異常な愛情』の例の場面を思い出してしまった。うーむ、キューブリックはやっぱりイヤミなヤツである(^=^;
使われている音楽がなかなかによかった(かなり私の趣味に合致)。監督は若い頃バンドをやっていたらしい。
ダイインやってる若者たちは、どう見てもあまりに暑いんで公園で寝っ転がって一休みしているとしか思えなかった。平和ですのぉ~(@∀@)
ところで、この作品はHBOテレビから米国で放送されたとのこと。HBOったら、あのチョ~過激な監獄ドラマ『オズ』作ったところではにゃあですか。
反響がどんなだったか知りたいが、雑誌「世界」にレポートされてるらしい。後で図書館で借りて読んでみる事にしよう。
作中で使われている市民が当時の状況を描いた絵は巧くは決してないけれど、恐るべきリアリティに満ちている。ロビーにそのスチール写真が掲示してあって、豆腐屋のおぢさん親子を描いた絵の中に書き込まれた説明書きを読んだら泣けてきた。
いつも朝に元気に「とぅふぅ~」というかけ声で豆腐を売って回っていたそのおじさんが、瓦礫の中を服はボロボロで皮膚は焼けただれてはがれて垂れ下がった姿で、息子の手を引いて「戦争だからしょうがないんだ」と言いながら歩いていたというのである。
その絵を描いた人はその言葉を印象深く覚えていたらしい。私はそれを読んで「しょうがなくはないですよう」と言いたくなった。
翌日、BS放送でまたもや太平洋戦争のドキュメンタリーをやっていたのを見てしまった。マニラ市内で日米両軍が激突して市街戦を行ない、なんと死者12万人のうち市民(非戦闘員)が10万人もいたというのである。
見終ってまたウツウツたる気分になってしまったよ( -o-) sigh...
主観点:8点
客観点:8点
【関連リンク】
《ようこそ劇場へ!》
今年の夏のキーワードは「しょうがない」だったようです。
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