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2007年9月 2日 (日)

「シッコ」:5か国病人治療合戦

Sicko2
監督:マイケル・ムーア
米国2007年

以前『ER』を見ていたら、救急病棟に運びこまれた患者に応急処置をした後で「この患者が入っている保険では別の病院に回したほうがいい」「でもここの病院じゃないと適切な処置を受けられない」という医者同士の会話の場面があった。ドラマでは結局、その患者は他の病院へ回送されてしまったわけだが、どうして保険によって病院を変えなきゃならないのか見ていて全く分からなかった。

だが、このM・ムーアの新作ドキュメンタリーを見てようやく理解できた。米国の医療保険は公のものはなく民間の保険企業にそれぞれ加入するのであった。
医者は治療をしなければ保険会社からご褒美を貰い、市民は加入する前や支払い時には色々と会社からイチャモンをつけられる。
しまいには、病院側が患者をタクシーに乗せて捨ててしまう。恐ろしや~{{(>_<)}}

--というコワい現状が前半に語られた後、今度は後半で他国比較編へと突入。
カナダ・英国・フランスさらには敵国キューバまで乗り込んでその地の医療制度を紹介する。
まあ、ここは「その代わりに税金たくさん取られるんじゃないの」とか「そんなにフランスが暮らしよければ暴動は起こらんだろ」とか「キューバは医者のサラリーがタクシー運転手より低いんだって?」などとツッコミどころ満載だが、それをはね飛ばすぐらいに米国のシステムはひどいようである。
病院で既往症を書くのが治療費をより高く取るためだなんて信じられんよ。

M・ムーアの昔のTVシリーズで米・加・英、国別「行き倒れ救出競争」というのがあったが(実際に同時に行き倒れのニセ者を倒れさせて、どこの市民が最初に助けるかタイムをはかったもの)、この後半部はそれをマジメに展開したものと解釈した方がいいだろう。だから、あの国の税金は!などとケチをつけるのは野暮な事と思える。
もっとも、どうせだったら「5か国医療比べ」をセーノっ!で始めて見せるというのでやって欲しかったなあ。

「デモクラシーNOW!」という番組にM・ムーアが出てこの映画のことを語っていたが、その話を聞いている限り次の大統領選挙をある程度意識して製作したらしいのが感じられた。
民主党の候補でも、医療保険の政策を満足なものを出しているのはいないという。そういう候補者たちに「この問題をおろそかにしてくれんなよ」という圧力、とまでは行かなくてもメッセージを送るのを射程に入れているのは確かだろう。
その点で政治家にあるべき形を提示して政策の変更を求めて訴える姿に、さすが米国製民主主義やなあと感心したのであった。


平日に見に行ったのだが、公開してすぐだしまだ夏休み中だからムーアの新作ということで若いモンがいっぱい来ているかと思ったら全然そんな事なかったのが意外。白髪頭の高齢者も目について他の映画より平均年齢が高いぐらい。(=_=;)
歳取ると心配になってくるけど、やはり若いモンには医療問題は身近ではないのかのう。でも、ムーアは「借金まみれの大学生が出現したら要注意」と言っているのだが……。


主観点:7点
客観点:8点

【関連リンク】
《(´-`).。oO(蚊取り線香は蚊を取らないよ)》
辛口ですが、なかなかに真実をついていると思いました。

《ようこそ劇場へ!》
私も『スターウォーズ』のパロディには爆笑しました。

《映画のメモ帳+α》
長文・ネタバレありですが、読みごたえあり。

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コメント

初めまして☆わたしも映画みました。あれが日本の未来ですよ。みんな民営化でどうなるかわかってないです。いよいよ郵政民営化がはじまります。郵政民営化はアメリカが日本の国の資産を奪う為の要求で売国です。げんにニュージーランド、フランスなど世界各地で失敗して国営に戻り、英のブレア首相は世界で日本だけが逆行してると指摘。サービスはよくなるどころがどんどん値上がり。郵貯破綻です。森田実「アメリカに使い捨てられる日本」等多くの本でマスコミの書けない年次改革要望書について書かれています。安倍さんも小泉さんも東京都知事の石原さんも市場原理主義の政策ではなから弱者や地方きりすて、都市や富裕層だけが儲かるシステムです。最近言われるワーキングプアや地域格差はそういう考えによる規制緩和や民間にたくす政策が原因。これから格差はどんどんひろがり、1割の金持ちと9割の貧乏で、たくさんの人が働いても働いても報われない日が来ようとしています。政治や経済に興味がないためにマスコミに操られ、全く気づいてない日本国民が多すぎます。「国富消尽」「民営化で誰が特をするか」「官僚とメディア」経済やメディア操作やグローバル化やアメリカの現状などの本を読んでみて下さい。失礼しました☆

投稿: 愛 | 2007年9月 3日 (月) 22時46分

愛さん、コメントありがとうございます。

|1割の金持ちと9割の貧乏で、たくさんの人が働いても働いても報われない日が来ようとしています。

でも、働いても働いても報われない人がコイズミやイシハラみたいのが好きなんですよ。しょうがないですねえ……。

投稿: さわやか革命 | 2007年9月 4日 (火) 05時34分

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