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2007年10月31日 (水)

「パンズ・ラビリンス」:激辛指定!楽しくも優しくも甘くもないファンタジー

071031
監督:ギレルモ・デル・トロ
出演:イバナ・バケロ
メキシコ・スペイン・アメリカ2006年

正直に言おう。

号泣しました(ToT)ドドーッ

だって、だって……あんまりだ~っ(>O<)ウワーン

今でも思い出すと涙目になっちゃう(*_*)ショボショボ

舞台は1944年独裁政権下のスペイン。
物語大好きっ娘12歳のオフェリアたんは身重の母カルメン(←すごい名前の母娘だね)と共に、母親の再婚相手である大尉がいる地方の基地へと向かう。彼は山中に潜むレジスタンスを掃討中であった。

そこでオフェリアはカマキリだかナナフシ?みたいな妖精に導かれ、従者と名乗るパン(牧神、でも一番最初は「木の鬚」っぽい)に「あなたは本当は地底の国のお姫様だ」と告げられる。
子供の頃は、たいてい「もしかして、私はホントはどこかのお姫様(王子様)ではないか」などと夢想するものである。私も母親から「お前は××橋の下から拾ってきた子だよ」などと言われる度に、本当はもっとお金持ちの家のお子様なのかも知れない§^.^§と想像したものである(爆笑)。

果たして妖精たちが閉塞的な状況に追い込まれた少女の空想の産物なのか、実際に存在するのか--つまり箪笥の向うにナルニアは実在するのかしないのか、という件についてこの映画は明確にしていない。どちらにでも取れるように描かれている。
もう一つの世界は現実の世界と微妙に重なっている。「血液を二滴やる」というのは母親の薬が二滴というのとかぶっているし、義父が威圧的な態度をあらわにするにつれて、従者のはずのパンもなぜか父権的な態度で少女を脅かすようになる。また鍵の事件(オフェリアはこの件は知らないはずだが)も同期するように起こる。

現実の世界では大尉は残酷で村人やレジスタンスを拷問し殺しまくる。ここら辺は極めて暴力丸だしな表現でとてもお子ちゃまには見せられない。
また、少女が試練を受けるもう一つの世界もグロテスクでコワくてキモい。これまたお子ちゃまには見せられたもんじゃない。
どちらの世界も恐怖と暴力に満ち満ちている。これは彼女の幻想なのか真実なのか。
ネット上でも解釈が分かれているようだ。それは結末をどうとらえるかにも関係してくる。果たしてハッピーエンドか、バッドエンドか。

私としては「少女は自分なりの戦いをしたのだ」という意見にくみしたい。レジスタンスのように銃を持って山にこもるのではなく、それとは全く違う彼女が出来る戦い方をしたのだ。あの医師が最後に自分なりに将軍と対峙したように……。
だとしたら、それが現実であろうと幻想であろうと何の違いがあるだろうか。
彼女は恐怖に立ち向かい戦った--それこそが不変の事実である。

さて、少女は宮崎アニメのヒロインに影響を受けている、という説を見かけたが、確かにカエルに息を吹きかけられるトコなんか似ている。(あの髪型もか?)
個人的には、カエルが食ってたダンゴムシのでっかいヤツみたいなのがイヤ~(><) ああいうの苦手。あれが成長すると王蟲になったりして……(汗)
そういやラストの追跡劇は『シャイニング』ですかね。

しかし私が思い浮かべたのは
エンデの『サーカス物語』(エンデの作品の中で一番好き)
リンドグレーンの『ミオよ わたしのミオ』(再読だったにもかかわらず、結末を電車の中で読んでて泣いてしまった)
--であった。
『サーカス物語』は現実と虚構の関わりについて、『ミオ……』は主人公の境遇と結末が似ている。
一体、ファンタジーが優しくて楽しいなどと誰が言ったのであろうか? 上記の名作二つともラストは残酷な話である。
この映画は、これらに匹敵するぐらいの真性ファンタジーであると断言しちゃおう。もちろん、映像的にも文句なしである。怖くて不気味でキレイ。


それにしても、上映館数が少ないのにネット上の感想の数が多いのに驚いた。そして、みんながそれぞれ色んな事を言っている(賛否両論というのではなくて)のには笑ってしまった。どれ一つとして同じ意見というのがないというのは面白い。
それだけ人の心から多様な意見を引き出す多様な面を持った作品と言えるだろう。そういえば、シネコンで見たにもかかわらずエンドクレジットが終わるまで誰一人として席を立たなかったのも、珍しい現象だった。(多分、観客の半分は涙目だったと推測)


主観点:9点
客観点:9点

【関連リンク】
いずれもネタバレが多いので注意!

《JoJo気分で映画三昧!+α》
「しばらく誰とも口をききたくない」というのに激しく同感です。

《水曜日のシネマ日記》
試練の解釈が興味深い。

《映画のメモ帳+α》
それぞれの「物語」対比がキモですね。

《PiPiPiX.tXt》
「子供のように純粋な心をまだ持っている」かどうかについては異論がありそうです。

《元・副会長のCinema Days》
現実とファンタジーの関係について正反対の意見。

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コメント

 ここんとこ忙しさで沈没していたのですが、これを読んですご〜〜〜く行きたくなりました。
思わず、映画館をチェック! うわ〜ん(>_<) 京都では11月2日までと11月9日まで、日に1〜2回上映。う〜ん……
大阪まで行くともう少し長くやってるかなあ。

投稿: しの | 2007年11月 1日 (木) 00時15分

さわやか革命さん、はじめまして。激しく同感していただき、光栄です!

>彼女は恐怖に立ち向かい戦った--それこそが不変の事実である。
おっしゃる通りだと思いました。そして彼女は勝ちましたよね。あ~思い出すだけで涙が・・・素晴らしい作品でした!

psネタバレ多く思われました!?ひゃ~気をつけてるつもりですが、より気をつけなくちゃ!

投稿: JoJo | 2007年11月 1日 (木) 00時46分

>JoJoさん
コメントありがとうです。
ネタバレについては自戒をこめて注意書きを付けてしまいました。つい、語りたくなってしまうんで。
そのたびに、涙目に……(T_T)

>しのさん
ファンタジー・ファンなら必見ですよ~(と、余計に焦らせる)。
巷では「ミツバチのささやき」などの影響が指摘されていますが、私は「ダーク・クリスタル」あたりも結構入っているなあと思いました。あれも、造形は決して美しくなくてちとグロイですよね。
色彩も独特なんで、映画館のスクリーンでの鑑賞をオススメです。それに、それに……ご家庭のTVモニターの前では号泣できないぢゃないですかっ(爆)

投稿: さわやか革命 | 2007年11月 1日 (木) 07時28分

 昨日、仕事のあと観てきましたよ〜
今週になったら上映が夜だけになってました。
ひさびさの立ち見(といっても横の通路で座り観)で、今日になって足に疲れが……
はい、モロ私好みの映画です。グロくても好き、こういう優しくも甘くもないファンタジー。私は、『ローズ・イン・タイドランド』と『トンマッコルへようこそ』を連想しました。『ダーク・クリスタル』もたしかに。また詳しくはあとで。

投稿: しの | 2007年11月 8日 (木) 22時55分

なんか先週?ぐらいにTVで紹介されたんで客が急増したというウワサです。座り見ご苦労様でした。。
早めにシネコンで見てよかったー、という感じですね。
感想書いたらTB下さいませ(^^)

投稿: さわやか革命 | 2007年11月10日 (土) 14時15分

はじめまして。

先日自分もこの映画を観ました。思うことがいろいろあり、他の人はどんなことを考えたのかと興味がありネットで探索していたらこちらのブログにたどり着きました。

この映画、すごい映画だと思います!

>それが現実であろうと幻想であろうと何の違いがあるだろうか。
彼女は恐怖に立ち向かい戦った--それこそが不変の事実である。


この部分大いに共感しました!

投稿: ゆう | 2007年11月19日 (月) 21時42分

ゆうさん、コメント&共感ありがとうございます。

この映画のいいところは、観た後にまた色んな人の色々な感想を読んで、ああでもないこうでもないとまた自分でも考えたりできることですね。
一粒で何回も味わえる、という感じです。

投稿: さわやか革命 | 2007年11月20日 (火) 11時13分

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