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2007年10月 9日 (火)

「J.S.バッハ:ミサ曲ロ短調」:かくも優しきロ短調ミサよ

071009
演奏:バッハ・コレギウム・ジャパン
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
2007年10月6日

つい先日、発売になったばかりのCDが評判いいBCJのミサ曲ロ短調である。BCJで聴くのはこれが三回めのはず。CD録音時の3月の公演は聴いていない。
2005年末に聴いた時の感想はこれ。

会場のミューザ川崎は初めて行った。駅から直につながっているのもスゴイが、中に入って驚いた。キャパシティは二千人弱ぐらいのはずだが、非常にステージに間近い感じがする。オペラシティのようなシューズボックス型とは全然違う。一階席で同じ列番を取ってもオペラシティではこんなに近く見えないだろう。音も文句なし。
う、うらやましいぞ(T_T)川崎! ついキョロキョロ見回してしまったよ。

でも、センター席ははさすがに埋まっていたが、サイドが結構空いていたのはなぜ? 関東一円のBCJファンは例え矢が降っても万障繰り合わせて川崎に集合するはずではなかったのか!(←大げさ)
CDの評判がかなり良いので(私はまだ未聴です)結構ドキドキしながら開始を待っていた。あんまりドキドキしていたんで入口にペーター・コーイ急病にて降板、のお知らせがあったのに気づかなかったほど。

さて、出だしのキリエのコーラスではそんなに気づかなかったんだけど、コーラスがいったん休止して楽器だけの演奏の部分になると微妙に違和感を感じた。
な、なんだかテンポが遅いような……(汗)
最近の古楽器系の演奏によるロ短調はテンポが早めなのが多いし、過去のBCJの公演でもこんなにゆっくりではなかったと思うのだが。時代の流れに逆行して古い演奏スタイルに先祖返りしようとしてるのかしらん、などと焦ってしまった。
しかし再び合唱が始まった時、そうではないことに気づいた。

やはりロ短調ミサというと、どうしても重厚・荘厳・峻烈とか、壮麗・厳粛・高踏的なんて印象になっちゃうわけだ(それも大抵は大人数でドドーンと来る)。で、偉大過ぎてかえって聴いてて押しつぶされそうな息苦しさを感じるのも確かである。
しかし今回の演奏にはそういう人を圧倒するところはなかった。グローリアなどテンポが速い曲もあくまでも軽快であって、怒濤のように突き進む印象ではない。
なんというか、傍らに寄り添って心のヒダヒダにしみ入ってくるような--そう、あくまでも穏やかで優しいのであった。
これは意外だった。意表を突かれた。こんなロ短調は今まで聴いたことがねえ~という感じだ。
いやー、正直やられました。

楽器ではコルノ・ダ・カッチャはやはり大変そう。C・モーリー氏、顔を真っ赤にして吹いているので、もう少しで舞台上でパッタリ倒れちゃうかと心配したほどだ。
それからティンパニは別に文句はないけど、2005年の時が素晴らしかったんで同じ人でお願いしたかったなあ。CDでは外人部隊だけどまた別の人らしいが。

歌手では浦野氏が急遽バスのソロの代役をつとめて健闘していたが、やはりP・コーイの降板は残念無念である。ソプラノの野々下&R・ニコルズは全く不満なし。

おなじみG・テュルクはなんと言っても24曲目のソロが素晴らしかった。ああ、今日はこれが聴けて心から良かった!としみじみ思ったほどだ。もう、傷一つなく完璧にピカピカ光り輝く黄金の壷を眺めているようだった。透明シリコンで固めて永久保存して床の間に飾っておきたいぐらい。トラヴェルソの菅さんもよかったが、鈴木(弟)氏のチェロが光っていた。

アルト担当のロビン君は期待通り26曲目のアニュス・デイでキメてくれた。過去2回聴いた時は女声だったんで、是非カウンターテナーで聴いてみたかったのだが、この曲の持つなにか不思議めいた神秘的な部分がいかんなく発揮されていたと思う。これも聴けて良かったぞ。
ところで、ソプラノ二人はコーラス部隊に入っていたのに男声ソロ陣が入ってなかったのはなぜ?(浦野氏は代役だから別だろうけど)

27曲目の終曲ではソリストも含めて全員で歌っていた。その頃には名残惜しくて、なんだかもう一度最初から聴きたくなってしまったのだった。こんな気分になったのも初めてだ。

途中でこんな聴いてて心地いいのは演奏のせいではなく、なんと言ってもバッハ先生が偉大だからであろうか--などと考えてもみたが、でも同じロ短調でもスカな演奏はあるわけで(誰とは言わぬが)、やはりBCJヤッタネ!というのが今回の結論なのである。
あ、もう一つ残念だったのは最後の拍手開始がもう少し遅かったらなあ(せめて鈴木(兄)氏が手をおろすまで)ということだった。


……ところで、私は今回恐るべき失態をしてしまった。これまで芝居も含めると、公演会場を間違える、公演日を間違える、同じ曜日で違う週に行ってしまう、開演時間を間違える、違うチケットを持って行ってしまう--など数々の失敗をしてきたのだが、またもかつてない大バカなことをしてしまった。
それは、

出発30分前にチケットがないことに気づいた

ということであった!(>O<)ギャア~~~
失くしてしまったのか、それともそもそも行く気になってただけで買い忘れていたのか、どうなんだか分からないが、とにかくいくら探しても出て来ないのであった。時間はどんどん過ぎ、冷汗がドトーのように流れてくる。
そこで私は当日券がまだ残っているという話を思い出して、ミューザ川崎に電話して当日券を予約したのであった。幸運にも一階のセンターを取れたが、その時、既に開演前2時間を切っていた……(=_=;) 焦りのあまり心臓がバコバコいってたよ。

でもまあ、終わりよければ全て善し、ですねえ \(^o^)/


【関連リンク】
色々な感想を集めてみた。

「ひろ」さん
激しく同意する部分、多々ありました。

「小一時間」さん
会場について同感です。それから「二の腕」についても……(^^; 私も「なんか野々下さんの二倍ぐらいありそうだなあ」と思って見てました。

「AH」さん
楽譜も読めぬトーシロには色々とためになります。

「Verdi」さん
前回のカンタータ公演に続き、超辛口の感想です。

「kimata」さん
同じ公演(と言っても、日が違うんだが)を聴きながら印象が正反対というのはなかなかに興味深いことであります。

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コメント

初めまして。^^トラバどうもです。チケットの件、ヒヤヒヤしながら読みました。(笑)
<なんだかもう一度最初から聴きたくなってしまったのだった・・・激しく同意しますね~。それでCD買ったんですけど、ホールでの感動とCDとは違うので、心落ち着くまで眺めているだけにします。♪

投稿: ひろ | 2007年10月 9日 (火) 22時50分

たしかに今回のはこの曲によくある峻厳さとは違うと思います。
グロリアの軽さもそれはそれで、私も楽しんで聴いてました。たぶん、厳しいと感じたのは事前に録音を聴いたせいで細部を比較しすぎたからかもしれません。

ところで、ミューザ川崎の評判はよく聞くので一回行ってみたかったんですよね。この機会に行っておけばよかったなぁ~。

投稿: kimata | 2007年10月 9日 (火) 23時12分

ひろさん、 kimataさん、コメントありがとうございます。

|心落ち着くまで眺めているだけにします。♪

私も公演の後でCDを聴こうと思っていましたが、まだ封を切れないでいます。しばらく床の間に飾っておくか。

|事前に録音を聴いたせいで細部を比較しすぎたからかもしれませんねえ。

確かに聞き込んでしまうと、実演に行った時に「ああ、そこはそうじゃなくて!」などと思ってしまう事があるかもしれません。

|ミューザ川崎の評判はよく聞くので

休憩時の周囲の会話を盗み聞き(^^;したところでは、どの場所でもよく聞こえるそうです。しかも一階席は踊り子さんの衣装にさわれそうな間近さ。(ホントか)

いずれにしても、今回の公演の一番の教訓は「チケットは前日に確認しておくこと」でありますねえ。(大汗)

投稿: さわやか革命 | 2007年10月10日 (水) 06時57分

ごぶさたしております。
kimataさんと同じ名古屋公演を聴きましたが、さわやか革命さんのレヴューを拝読して、穏やかな部分での穏やかさ、柔らかな部分での柔らかさ、そうしたところへのこだわり意識が段違いに高い演奏だったなあと思い出されました。。
ミューザに行ったのはたった一度きりです。よく響くと言われることが多いあのホールで、今回のキリエはどう聴こえたんでしょう(風呂場?)。体験してみたかったっ!

投稿: Sonnenfleck | 2007年10月10日 (水) 19時53分

コメント、TBどうもです。
色んな方々の感想を読んで、まだまだ自分は一面的なとらえ方しか出来ていなかったと反省の日々であります。

ミューザ川崎は、さすがに「風呂場」ということはありませんでしたよ(^^; 東京カテドラル聖マリア大聖堂みたいな所なら言えますが(反響して斜め後ろから音が聞こえてくる)。
音が豊か、かつクリアなんで驚きました。オペラシティだと埋もれてしまうようなチェンバロの音も明確に聞こえました。川崎市民はうらやましいですなあ。
演奏する場も印象が激変する重要な要素だと思いました。

投稿: さわやか革命 | 2007年10月11日 (木) 07時19分

はじめまして!
今度ミューザ川崎にコンサート行く予定です
1階席何列目にお座りになったんですか?
1階席は傾斜がゆるいとのことで、奥まで見渡せないか、とか不安な点がいくつかあり、それなら見やすい2階席か?!とも思いつつ、やはり迫力を感じたいので1階席がいいなと思っています。1階席なら何列目くらいがオススメですか?

投稿: soyoka | 2008年1月14日 (月) 18時37分

soyokaさん、はじめまして。
座席番号は記録してなかったので何列目とかは分かりませんが、フロアの真ん中の部分の中心部からやや右寄りぐらいでした。7列めあたりかな?
ステージの高さが低いので、ステージ上もかなり見通せると思います。
音的には、4階の人でもよく聞こえていたと話していました。

http://www.kawasaki-sym-hall.jp/ticket_guide/
ここ↑にある座席表の緑色の番号をクリックすると、実際の見え方が写真で分かります。

投稿: さわやか革命 | 2008年1月15日 (火) 22時13分

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