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2008年1月24日 (木)

「オルフェオ」:あるイケメンホストの死

080124
演出:伊藤隆浩
指揮:濱田芳通
会場:神奈川県立音楽堂
2008年1月19日・20日

〈第一幕〉
歌舞伎町ナンバーワン・イケメンホストとして大人気のオルフェオは、意中の超美人ホステスのエウリディーチェの愛を見事ゲット! ウハウハと喜んでカラオケボックスで友人たちと歌いまくるのであった。

〈第二幕〉
遂に同棲を始めたオルフェオ。今日も今日とて、友人の独身男やホステスたちと後祝いと称して歌舞伎町のキャバクラで騒いでいると、馴染みの二丁目のバー「シルヴィア」のママが紫のドレスの裾を翻して転がりこんで来た。
「大変よーッ!エウリディーチェが昔の借金のカタにピンサロ「毒蛇」に拉致されたの。きっとあそこで身も心もボロボロになるまでコキ使われるんだわ。いやいやーっ」と倒れんばかりに泣くのであった。
呆然とするオルフェオ。彼は断固としてエウリディーチェ奪還を誓う。

[休憩25分]

〈第三幕〉
しかし、「毒蛇」を経営しているのはあの、世にも恐ろしい広域暴力団「冥府組」であった。案内を頼んだ二丁目住人の友人は「あたし、もうダメーっ。ここから先は地獄の一丁目。もうコワくてコワくて行けないわ。ごめんなさ~い」と逃げ出してしまった。
「そんな、待ってくれー(>O<)」と叫ぶも取り残されたオルフェオ、意を決して冥府組の事務所の入り口に向かうが、そこには強面の用心棒と「猛犬ケルベロスに注意。食い殺されます」という看板が。
得意の話術とスマイルを駆使して用心棒を説得しようとするが、「うるせえ、すっこんでろい」とすごまれる始末。だが、窓から彼のイケメンぶりをウットリと眺めていた組長の妻が用事を言いつけて用心棒を追い払うと、中に引き入れて組長にとりなしてくれた。
「おまいさん、今時珍しい心意気じゃないか。なんとかしておやりよ」
すると「分かった。あの女は返してやろう。だがな、若い衆、この渡世の仁義と掟は決して破っちゃならねえよ」
と、組長は振り向いて恐ろしいご面相で彼をねめつけたのであった。

……てな話だったんですね、『オルフェオ』って(^O^)

などと妄想してしまったのも、第一幕と第二幕の演出を見たから。常々なんかこの部分は長い割にはあまり意味がないなあと思っていたのだが、牧人たちとニンファがイチャイチャしていやらし~い暗喩に満ちているとなれば、多いに納得。
なにせ舞台の「野原」ったら、ルネサンス時代の歌曲にも歌われているように若い男女のムフフな場所なのである。
というわけで、ニンファはみんな派手でエロいねーちゃん。キャバレーみたい。もう、ニヤニヤしながら見てしまったよ。

全体のデザインが上演時の時代のものを再現ということで、1600年あたりの衣装を採用していた。
なんと言っても「使者」の弥勒氏は紫のドレスが似合い過ぎですっ \(^o^)/
休憩挟んで現れた「希望」の上杉氏、水色のドレスがっ!ヽ(^^)/\(^^)、
もう、完全ノックアウト(@∀@)
花井尚美のプロセルピナはメイクや衣装がゴスの女王様みたいだった。さすが冥王の妃である。
それからなんと言っても、ラストに出現したアポロの櫻田氏。もう黄金色にピカピカ光り輝いちゃってス・テ・キ(*^-^*)  歌も力強くって今まで見たアポロの中で一番でしたわよ。

演奏の方もいずれも達者であった。オルガンのドーンという引き伸ばした低音がかなりキターッという感じ。
私が見たのは土曜日の方だったが、日曜日の方では熱狂的なスタンディング・オベイションが10分も続いたという。日曜の方が出来がもっとよかったのかな?

ただ一つ文句を言わせてもらえば、曲中であれだけのパーカッションの使い方をするのだったら、オペラにはなくて追加した、オルフェオがバッカスの巫女たちに殺される場面にもドカドカ使って欲しかった。なんだかあの場面だけ音楽がなくてすき間風が吹いているような感じだったんだよねえ。あれは残念ながら空白を埋めるだけのパフォーマンスではなかったと思う。

それにつけても、この一年間に『オルフェオ』を三種類も見ることができたという幸せ。もうこんな大盤振る舞いの年は二度とあるまい。
プロセルピナにしても波多野さんの恐妻野々下さんの愛妻、花井さんのゴスの女王--と色々見られてよかった。

【関連リンク】
《SEEDS ON HATENA》より「県立音楽堂の「オルフェオ」リンク」
向かうところ敵なし、どの感想も絶賛状態です。

《伊太利亜古楽三昧》
櫻田氏のブログ。当日登場の楽器が色々と見られます。

《ふいご屋の日常》
こちらでは前の関連記事をたどっていくと、歌手の衣装など色々な画像や、舞台裏が分かります。


えー、しかし、このような絶賛状態の中で私のようなトーシロが意見を述べるのはナンでありますが、私は音楽については極めて形式主義者なのでありますよ。(^.^;
従って、アントネッロのような演奏はちょっと……というか、かな~り苦手。
なので、通常のライヴでは行くことはないだろう。またバロックオペラをやってくれたらその時は聴かせてもらうことにしよう。

【追加】
「妄想オルフェオ」の続き、折角考えていたんで書いてみました。
まさしく「蛇足」ではあります(^^ゞ

〈第4幕〉
冥府組の事務所からようやっとエウリディーチェを連れ出したオルフェオだったが、言葉少なな彼女の様子が気になる。そして、彼の内側で疑念と不審がどんどんとふくれあがり、言うか言うまいか迷っていた言葉を遂に口にしてしまう。
「お前……もしかして他の男と」
バッチ~ン! エウリディーチェの鋭い平手打ちが彼の頬に飛んだ。
「あんたってサイテーの男!見損なったわ。人でなしっ!車を止めてちょうだい」
車のドアを開けると外に飛び出し、ネオン街の闇に消えていったのであった。
合唱「恐怖を組み伏せ極道の世界にも打ち勝った男、ナンバーワンホストとして星の数ほどの女を陥落した男も、愛する女のこころを理解できなかった。まこと、人の世の難しさよ。諸行無常の響きあり~」

〈第5幕〉
虎の子の貯金を借金の肩代わりで使い果たし、さらには二人の愛の巣のマンションの権利も抵当に入れてしまったオルフェオは、エウリディーチェに逃げられたショックで、もうホストの仕事もできない。彼女以外の女は全てドブスに見えてしまうからである。
たちまち、馴染みの客から「プレゼントした時計返してちょうだい」「高いブランドもんの服買ってやったのにー」などとクレームが相次ぎ、全てをむしり取られてしまう。
無一文&無気力となって倒れ伏す彼の前に現れたのは、現在駅前に積極展開中の風俗チェーン「太陽」のオーナーであった。彼の才能と経験を見込んで店長を任せようというのである。
「でも、エウリディーチェたんがいないんじゃ、ボクの人生は真っ暗だー」
と涙ぐむ彼にオーナーは
「なーに、この業界にいればいつかきっと再び巡り合うことができる。それに、女なんて金と権力ができれば自然に寄ってくるものよ、ワハワハワハハ(^○^)」
「ほ、ホントですか」
涙目ながらも思わずつられて微笑みながらオルフェオはオーナーにすがるのであった。二人の背後に「太陽」チェーンのネオンサインがピカピカと光り輝く。(幕)

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