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2008年1月13日 (日)

「ユゴ 大統領有故」:笑う大統領暗殺

監督:イム・サンス
出演:ハン・ソッキュ、ペク・ユンシク
韓国2005年

韓国の朴大統領暗殺事件は当時大騒ぎになった……とは思うがなにぶんにも30年も前の話なんで、実はよく覚えていない(^^ゞ
それを扱った映画で、しかも本国では上映の際に裁判沙汰にまでなったというではないか! おお、これは久しぶりにバリバリの硬派社会派だぞーと鼻息も荒くハアハアと意気込んで見に行ったのであった。
大体にして、映画見ること自体一か月ぶりぐらいか? こんなに映画館に行かなかったことは久しくないというぐらいだ。

が……上映が始まってすぐに予想は完全に裏切られた。
冒頭は、白亜の豪邸(←死語?)のプールにたくさんの若いねーちゃんが遊んでいて、その内の何人かがト○プレス(スパムTB予防のために一部伏せ字とさせていただきます)になって水に飛び込む場面から始まる。
その傍らの邸宅の一室では、やり手風の母親が若い娘とともに「あの方に一晩尽くして、大変ご満足してもらえたんですから--」と切々と訴え、何とか金をせびろうとしているではないか。
あの方とは大統領のこと、せびられているのは韓国中央情報部の課長である。別宅の警護とは名ばかり、実は若い娘っ子のお世話が彼の仕事なのであった。

てな感じで、最初からかな~りシニカル&トホホな印象でずっこける。だーって、あなた、当時のKCIAったらモサドの次ぐらいにコワイ機関ですよ。少なくとも当時のアクション小説ではそれが常識。もう名前を聞いただけでベッドの下に潜り込みたくなるほどだ。それなのにこのトホホ感はなによ(^^?

一方、KCIAトップの部長も他の大統領側近にいびられたり、健康状態が悪いのに色々お付き合いしなくちゃならないのでストレスはたまる一方。ここら辺は、なんだか企業のワンマン社長の下の管理職の悲哀みたいである。
かくして不満はたまり、綿密な計画の元に暗殺が--てなことはなくて、「もうガマンできん、今夜決行だー」なんてかなりいい加減に始まってしまうのであった。
かわいそうなのは下っ端の情報部員。計画はなんにも知らされてなくて、いきなり「あいつらを撃て」とか言われて、命令に従ったらタイ~ホ&死刑ではやってらんない。まさしく下っ端はツライよであろう。

もっとも銃撃戦や暗殺の場面は、監督が『ゴッドファーザー』を念頭に入れてたとか言ってただけあって相当な迫力である。ここら辺の落差がまた面白い。

しかし、その後の展開にもお笑いなトホホ事態は続くのであった。中には「ええっ、こりゃウソだろう。ジョークぢゃねえの」みたいなおマヌケな事件が幾つも出てくるが、これがまた実際に起こったことだという。

最終的には陰謀発覚で、登場人物の後日譚が語られるのだが、それもやはり淡々とかつシニカルなもんである。
ラストは葬儀を撮った実際の記録映画を使っているが、裁判沙汰になったのはその部分と冒頭のプールの場面で、削除判決が出されたとのことだが(まだ係争中)、制作側はわざとそこを音声だけの「黒塗り画面」にして上映したという。やるねっ(^o^)b

思うに、この映画がマズイとされたのは本質的に権力者をおちょくっているからだろう。削除事件はその一端に過ぎないのでは、と推測する。
大統領と側近の宴会の会話で「非民主的だと非難されているが、世界に民主主義の国などほとんどない。我が国には野党がいるだけマシだ」なんてのが次々出て来て、言いたい放題で笑ってしまう。いくら昔っても、たかだか30年前の政治家をよくもこうおちょくれるものだと感心だ。

それからもう一つ印象深かったのは、大統領や側近が肝心な部分の会話になると日本語を使い、さらにはマル秘宴会で若い女性歌手をはべらせて日本の演歌(「悲しい酒」とか「北の宿から」)を歌わせてウットリ聴いていることだ。
世代的には日本占領下で教育を受け、大統領に至っては日本陸軍の将校にまでなったというから不思議ではないのだが、ここで注目したいのは暗殺する側、される側、いずれにしても共通一貫して男同士のホモソーシャルな繋がりに終始しており(女の主要登場人物は宴席にいた二人の娘ぐらい)、しかもその繋がりを強固にする共通言語、共通文化が「日本」に他ならないということだ。ここにおいて「日本」の存在とはなんなのかと考えてしまったよ。
当時、日本文化は完全流入禁止で一般庶民は日本の歌謡曲など聴けるはずもなかったのだが、その一方で権力者の共通言語になっていた、という描写に表面上のトホホ感に関らず監督のイヤミにして強烈な反骨精神を感じた。

さて、インタヴューで「公式発表では、暗殺の時の宴席で女性歌手が歌ったのは韓国歌謡だとなっていますが」と質問された監督は「拷問もあった警察の取り調べで、日本の歌を歌ったなんて正直に言うわけがない! 私のシナリオの方が事実に近い」と断言したという。いやー、こういうヤツ大好きだ~ \(^o^)/


ところで上映館となったシネマート六本木、初めて行ったのだが、六本木の中心地に近いのに前の道が行き止まりになってたりしてなんとなく場末感ただよう場所。さらに変な形をしたロビーを見るに、どうも潰れたゲーセンを改造して映画館にしたんじゃないか、なんて疑ったりして……(^o^;ナハハ
いや、シャレこいた六本木ヒルズなんかよりずっと好感度高いですよ、ハイ。


主観点:8点
客観点:8点

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