「東京文化会館レクチャーコンサート「二つの顔」第4回 西洋と東洋」:東西笛合戦
演奏:有田正広、一噌幸弘
会場:東京文化会館
2008年1月25日
激突!東の能管、西のフルート。片や能楽師の一噌幸弘、片やおなじみ有田先生、双方一歩も引かず、あまりの激しいぶつかり合いに周囲では倒れる者がバタバタ……なんてことは全くなく、レクチャー部分は極めてマタ~リとした雰囲気であった。
このシリーズでは、色んなものを対比する企画(「天使」と「悪魔」とか)らしいのだが、今回は笛の歴史に見る東洋と西洋ということらしい。
一噌幸弘という人は五百年も続く能楽師の流派の出身とのこと。普段から、オーケストラと競演したり現代曲を作曲するなどの活動をしているそうな。
二人は色んな笛を取っ換え引っ換えしてレクチャーしながら吹いたり、曲を演奏したりした。
私なぞ、能管なんてほとんど聴いたことがないので思わず感心して聞いてしまった。能楽では共演するのが太鼓など大きな音を出す楽器ばかりなので音程を合わせる必要が少なく、音程よりも音色と音量で勝負だとのこと。さらに演奏する状況の変化もなかったので改良もなかったそうである。しかも材料が竹と漆なんで非常に長持ち、百年に一度修理すればいいくらい、というのには驚いた。漆は千年ぐらい保つのだとか。
一方フルートは社会状況の変化に伴って演奏場所も変わり、形状や機能も変化してきた。また、木管なんで乾燥に弱くパカッと割れてしまう。(そのせいか会場は湿度を高く調整していたもよう)
日本の笛は指穴も口穴もデカくて吹くのに非常に息が必要で、音が大きく打楽器的であるのに対し、フルート(特にバロック期)は喋るような細かいニュアンスを奏するというの大きな違いだ。有田氏が試しに能管奏法をやってみたら、酸欠状態で目の前が真っ暗になってしまったというのには笑った。
と、まことに対照的なのだが、実演では類似している部分なども聞かせてくれたり、W・F・バッハの曲を共演もした。
一噌氏はレクチャーではノホホンとした喋り方で、しかも駄じゃれを連発する自称「笛ヲタク」なのだが、演奏ではガラリと人格転換。元々の能楽の曲自体も激しいものなのだろうが、演奏も極めてアグレッシヴ。さらに音量があるので独奏にもかかわらず650人の会場を音が駆け巡り耳がガンガンしたほどだ。(@_@)
これでは繊細なトラヴェルソなんて太刀打ちできないのよ。(泣)
しかし、能なんていうと「幽玄の美」という感じで繊細極まりないイメージだが、音に関しては全く東西逆というのが目ウロコ状態だった。
進行役がいたにも関らずレクチャー部分が暴走したので終演時間が30分も伸びたが、色んな話が聞けて非常にタメになった面白い企画であったよ。
個人的には有田氏が同じフルートで同じ音をバロック期の指使いとそれ以後の指使いで吹き比べてみせたのが興味深かった。ただ一つの音だけでこれほど違うのかという感じ。この音の違いが積み重なって、普段コンサートで聴いている古楽のサウンドが作られているのだなとヒシと実感したのだった。
【関連リンク】
《しばがき@備忘録+手帳+日記》
「東」側の聴衆の方の感想です。
確かに一噌氏がバッハを演奏できても、有田氏は能楽の演奏は出来ないなあと思って見て(聴いて)ました。
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コメント
こんばんは、はじめまして
トラックバック、ありがとうございました
こちらも貼らせていただきました
初めて聴けば(能管もおやじギャグも)なかなかインパクトあったと思います。
年末には国立能楽堂@千駄ヶ谷で、弦4部を従え四季のソロバイオリンパートを能管で吹いておられました(笑)
しばがき
投稿: しばがき | 2008年1月31日 (木) 23時55分
コメントとTBありがとうございます。
演奏はともかく、おやじギャグも毎度あの調子ですか……(^=^;ナハハハ 有田先生も一度ぐらいギャグを飛ばしてましたが、質・量ともに勝てませんでしたねえ。
投稿: さわやか革命 | 2008年2月 2日 (土) 09時54分