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2008年2月20日 (水)

「ヒトラーの贋札」:収容所の中の中

080219
監督:ステファン・ルツォヴィツキー
出演:カール・マルコヴィクス
ドイツ・オーストリア2007年

ナチス・ドイツがポンドやドルの贋札作って敵国経済の撹乱を図る……なんてことが、ホントにあったんかい(?_?)と、思っちゃうが実際にあったらしい。
ということで、実話に基づく映画なのである。
しかも、作らせるのはユダヤ人のデザイナーやら技術者やら銀行家やらで、人件費はタダというお得さ。彼らも地獄の収容所よりいい待遇で、ガス室送りから逃れられるとなれば一生懸命働かざるを得ないのであった。

主人公は退廃の都ベルリンで実際に贋札作ったり証明書偽造をやっていた享楽的な人物。逮捕されて収容所送りになっていたところを拾われてチーフに抜擢という次第。
しかし、それは敵方に協力することであると仲間の印刷工からキビシク非難されるのである。

いささか奇妙なのは、原作を実体験に基づいて書いたのは主人公の贋札犯ではなくて、対立するその印刷工の方なのである。なるほど道理で印刷工は唯一、二枚目の役者がやっているわけだ(^^;)--というのはどうでもいいことだが、視点が原作と映画では逆転していることになるわけだろうか?
正直言って印刷工の男は独善的過ぎるんである。観ていて、お前は自分ひとりで死ねーと言いたくなっちゃうのは私だけではあるまい。

それはともかく、戦況が決定的になりナチスが収容所から逃げ出して、主人公たちのいる棟の壁が破られた後の展開は非常に皮肉である。あまりに皮肉過ぎて笑い話に転化しかねないほど。(しかし、その笑いもすぐ凍りつくが)

困難な状況下において「最善」の道はなく「より良い」、というか「少しでもマシ」な方を選ぶしかない。それを誰が責められようか。
苦悩と安堵がない交ぜになった終盤の展開と、自傷的ともいえる主人公の行動--は痛ましい。しかし一方でそれが引き起こす感動があまりにも真っ当で、ひねくれ者の私にはちょっと向いていないのもまた事実なのであった。


主観点:7点
客観点:8点

【関連リンク】
《映画のメモ帳+α》
終盤についての疑問的意見(ネタバレあり)

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