« 「裏切りの闇で眠れ」:電動ドリルと前歯がコワイ | トップページ | 演奏家もつらいよ »

2008年3月23日 (日)

「マタイ受難曲」:文化果つる地でも奇跡はあり

080323
演奏:バッハ・コレギウム・ジャパン
会場:彩の国さいたま芸術劇場
2008年3月20日

少し前に海外のグループの『ヨハネ』公演を二つ続けて聞いた(感想はここここね)わけだが、今度はBCJ『マタイ』である。
彼らの『マタイ』というと私にとって前回は2年前で、初期稿なんで今回と違う部分もあるけどえらく感動したのであった。

今回のエヴァンゲリストはヤン・コボウ--俳優のヒュー・グラントをオキシフルで消毒したような超二枚目ではある。が、なぜかまたも「劇的」であった。
マーク・パドモアの場合とはまた違った感じで、なんか前につんのめるような印象。実際、かなりエヴァンゲリストのパートはテンポが早かったのではないかな(特に後半)。確か彼は以前BCJとは『ヨハネ』をやったと記憶しているが、こんな感じだったかねえ?(よく覚えていない)
最近のトレンドは「エヴァンゲリストが劇的」なのか。

ソプラノ・ソリストのハナ・ブラシコヴァは外見はちょっとコワそうな美女。しかし、声は申し分なく美しい……のだが、あまりに美し過ぎてツルツルして引っかかる所なく耳を通り過ぎてしまいそうなのが難点。
カウンターテナーのダミアン・ギヨンは、声質はロビン君と同傾向だがあれほど「汁っぽさ」はなくてより硬質な感じだ。
で、二人の二重唱となる第27曲は結果、ストレートな混ぜもの無しの純度の高い美しさとなった。

第二グループのテノール・ソロのパク・スンヒは以前目白バ・ロック音楽祭の公演で聴いたことがあるが、やっぱりその時と同じく少し線が弱い印象だった。

イエス役のバス、マルクス・フライスはドヨーンとした重さでなくて、明晰なタイプの声がよかった。ソロのアリア第57曲の「甘き十字架」は福沢宏のガンバがいかにも「十字架」で峻烈ではあるけど同時に「甘い」イメージで、ウットリと聞いてしまった。

同じくバスでフライスより拍手喝采を受けていたのが、ドミニク・ヴェルナーだった。他の歌手より声量があって押し出しが強い。てっきり、オランダ・バッハ協会の来日公演でのヴォルフ・マティアス・フリードリヒみたいになるかと心配しちゃったが、終盤の第65曲のバス・アリアが非常に素晴らしかった。悲しみと喜びが微妙に混ざり合ったこの曲をうまく表現していた。楽器の方もノリのよいリズムを強調した演奏だったせいもあるだろう。
今まで、何回か聴いた『マタイ』で今回ほどこの曲に感動したことはない、と断言しちゃおう。

座ってた席はちょうどセンターだったんで、二組の合唱がちょうどステレオ効果満点で聞こえてきてヨカッタ。やはり大迫力があって均整の取れた美しさをヒシと感じたぞ。満足であ~る。

それからフライング拍手が全くなかったのは奇跡的(「速報」で「ブラボー」と書いちゃったのは間違い)であった。鈴木(兄)氏が手を下ろしてさらに小さく頷くまで拍手ナシ! さらに演奏中もちょうどいい所でデカい咳したり(オランダ・バッハ協会の放映ではM・ホワイトが歌って盛り上がった最中の咳が見事に収録されていた)、チラシの束落としたりという奴もいなかった。
文化果つる地のダ埼玉としては信じがたい奇跡としか言いようがない

ただ、どうも聞き手の方の私が、大抵休日の昼間のコンサートだとテンションが下がっちゃって、集中力が切れてしまうことが多いのだが、この日もそんな感じだった。アドレナリンとかの関係かしらん? かと言って、平日のオペラシティ公演で初台駅のホームや階段をダッシュするのも、キビシイしなあ……。
三時間半、座ってただけなのに終わった後はグッタリ疲れて、帰りは寄り道もせず良い子になって直ぐに帰宅した。

一つ疑問だったのは、ヤン・コボウが立って歌い出しを待っている時に、極端に左向いたり右向いたりしてたこと。なぜだ(?_?;
推測できる唯一の理由は--ちょうど目の前の鈴木(兄)氏の指揮中の顔をモロに直視したくなかったからか そんなにコワい顔なのか? もっと舞台が広いオペラシティではどうだったんざんしょ。


ところで、今回の座席はイープラスのプレオーダーで買って、申し分のない位置だったのだが、次の同じ会場での「ブランデンブルク」公演は全く同じにプレオーダーだったのにも関らず、後ろから3列めというあんまりな席なのが判明した!
余計に料金取られてこんなスカな位置じゃ、全然ワリに合わん。
あんまりだ~ω(T_T)ωワナワナ

【関連リンク】
なぜか今回はヤフーのブログ検索でほとんどヒットしなくて、色んなサーチエンジンを使って検索しなければならなかった。
《ぶらあび》
「劇的」という印象。

《あわてず急がず》
オペラシティの公演の感想。ソリストの画像付き詳しい紹介あり。

《オペラの夜》
大阪公演の感想。

《アマデウス☆小一時間BLOG::SYMPHONY No.42》
常連「小一時間」さんの感想。「山本氏のくしゃみ」とは? 花粉病でしょうか。演奏家はマスクしてステージ上がるわけにも行かず、ご苦労さんです。

《Abebe》
「あまりにもうさんくさい風貌をしているので」に爆笑した。確かに、外見だけ見れば怪しい教祖ファミリーに思えなくもない(^-^;(失礼!)

| |

« 「裏切りの闇で眠れ」:電動ドリルと前歯がコワイ | トップページ | 演奏家もつらいよ »

コメント

初めまして。
「あわてず急がず」のトミーと申します。

この度はTB頂きまして有難うございました。
BCJの今回の「マタイ受難曲」私は大変気に入りました。(笑)

偏ったことを多々書いているかと思いますが、今後ともどうぞ
宜しくお願い致します。

投稿: トミー | 2008年3月24日 (月) 00時05分

トミーさん、コメントありがとうです。
ソリストを色々変えて聞いてみると、また新鮮ですね。

こちらこそよろしくお願いします。

投稿: さわやか革命 | 2008年3月24日 (月) 22時37分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「マタイ受難曲」:文化果つる地でも奇跡はあり:

» 鈴木雅明/バッハ・コレギウム・ジャパン「マタイ受難曲」 [エンターテイメント日誌 ]
鈴木雅明/バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)が演奏する「マタイ受難曲」を聴き [続きを読む]

受信: 2008年3月26日 (水) 12時25分

« 「裏切りの闇で眠れ」:電動ドリルと前歯がコワイ | トップページ | 演奏家もつらいよ »